Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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倫理学 宇多 浩
選択  2単位
【スポーツ医療】 17-1-1501-0738-16A

1. 授業の概要(ねらい)

 行動規範論Ⅰでは、倫理や道徳に関する哲学者たちのさまざまな学説を紹介し、それを通じて「倫理とはなにか」、「倫理的な善悪の根底にあるものは何か」という問題を考えていきたいと思います。
 講義の前半は、プラトンやアリストテレスの思想、社会契約説などについて紹介し、倫理が「自己の幸福や利益」とどのように関係しているのか、について考察していきます。
 講義の後半は、おもに近代以降の倫理学説、とりわけカントの倫理学と功利主義について考察していきます。人間の行為に焦点をあて、人間の行為が道徳的とされるのはいかなる根拠によってか、という問題を考察していきます。

2.
授業の到達目標

 ・さまざまな倫理学説の基本的な概念や理論を、自分の言葉で説明することができる。
 ・行為の道徳性の根拠について、とりわけ功利主義とカントの倫理学の違いについて説明することができる。

3.
成績評価の方法および基準

 ・平常点(約20%)、中間試験(約40%)、期末試験(約40%)によって総合的に評価する予定。
 ・平常点は数回に1回の割合で課す小課題によって評価する。
 ・定期試験は論述形式とし、資料等の持ち込みは認められない。
 ・定期試験は中間と期末の2回を受験する必要がある。どちらか1つでも受験しなかった場合は、原則として失格扱いとなる。
 ・評価は厳正に行うため、普段から授業に出席して授業内容を理解していることが前提となる。

4.
教科書・参考書

 テキスト:特になし
 参考文献:品川哲彦 『倫理学の話』 (ナカニシヤ出版 2015年)
      ジェームズ・レイチェルズ 『現実をみつめる道徳哲学』 (晃洋書房 2003年)

5.
準備学修の内容

 ・授業で課した課題は、必ず自宅で行ってくること。
 ・授業を受ける前に、参考文献の該当箇所をあらかじめ読んでくることが望ましい。

6.
その他履修上の注意事項

 私たちは物事の善悪や正不正といった言葉を普段何気なく使用していますが、それらの意味について自覚的に考えることはありません。しかしこれらの言葉も、その歴史をたどれば多くの背景をもっており、多くの哲学者や思想家によって探求されてきました。
 講義では、私たちがごく日常使用している倫理的な基本概念を、その背景にある思想や理論にまで遡って考察していきます。このような内容に関心のある方の受講を希望します。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 授業の概要 ― 「倫理学的に物事を考えるとはどのようなことか」について考察する。
【第2回】
 道徳とその理由 ― 「私たちが道徳的に振る舞わなければならない理由や根拠はどこにあるのか」という問いを、いくつかの立場を踏まえながら考察する。
【第3回】
 プラトンにおける「正義」(1) プラトンの対話篇『国家』におけるソクラテス達の対話を見ながら、正義と幸福との関係について考察する。
【第4回】
 プラトンにおける「正義」(2) 引き続き、プラトンの対話篇『国家』におけるソクラテス達の対話を見ながら、正義と幸福との関係について考察する。
【第5回】
 アリストテレスの徳 ― 『ニコマコス倫理学』におけるアリストテレスの徳論を見ながら、徳と幸福との関係について考える。
【第6回】
 社会契約説(1) ホッブズの社会契約説を考察し、社会契約説のもつ道徳的な意味について検討する。
【第7回】
 社会契約説(2) 社会契約説のもつ道徳的な意味をさらに考え、その問題点を見ていく。
【第8回】
 ヒュームの道徳理論 ― ヒュームの共感・道徳感情についての理論を見ながら、道徳と感情との関わりについて考察する。
【第9回】
 授業のまとめと中間試験
【第10回】
 道徳的相対主義 ― 行為の善悪の基準は、それぞれの文化や時代によって異なるのか、という問題を考察する。
【第11回】
 功利主義(1) 「行為の道徳性は行為がもたらしうる幸福の全体量によって決められる」とする功利主義の立場について見ていく。
【第12回】
 功利主義(2) 引き続き、功利主義について、その問題点を具体例を通して検討していく。
【第13回】
 カントの倫理学(1) 「行為の道徳性は行為者の意志のあり方によって決められる」とするカントの倫理学について考察する。
【第14回】
 カントの倫理学(2) カント倫理学の基本原理である定言命法について考察する。
【第15回】
 カントの倫理学(3) カントの人格性に関する定言命法を理解し、〈人格の尊厳〉の意味について考える。