Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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スポーツ方法実習(野外活動) 倉品 康夫
選択  1単位
【人間文化】 17-1-1501-1734-03A

1. 授業の概要(ねらい)

 本キャンパスの地の利(locational advantage)は「自然が残る都市近郊」にあり、豊かな多摩の自然のフィールドが身近なことである。この学習資源を最大限に活用する野外活動である。教育方法は学生が指導者となり、教員がそれをスーパーバイズするという重層的な指導システムによる。「生涯スポーツとしてのキャンプ」を実施するフィールドは大学最寄りの多摩センター駅からバスで10分の近さで足繁く通える。基礎授業、講義・試験以外に、実習本行4日とスタッフ養成等の準備を4日を確保し行う。
 実施プログラム
 ①キャンプ【野外生活技術】、②ハイク(周辺谷戸山及び高尾山)【登山技術】、③ロゲイニング(周辺)【読図】、④冒険プログラム【ロープワーク】、⑤里山体験(田植え・間伐)【野外体験】及び⑥野外食育プログラム【野外生活技術】等を複合して行う。
 実施プログラム概要
 ①野外生活技術:基本が教えられるスタッフを養成しつつ行う。
 ②ハイク:里山の谷戸山でも登山技術は習得するが、それ以外にも良質な大自然にふれることも課題となる。そこで、大学から程近い、保全された裏高尾の自然を探勝する。
 ③周辺ロゲイニング:広い谷戸のポイントを携帯のカメラで撮影し、地図を作りポイントを周る。
 ④冒険プログラム:いざという時や将来の災害時に困らないよう、危機を想定した「楽しく身につける冒険体験」として、PA的ハイエレメントのロープコースの設置及び指導を実施する。
 ⑤里山体験(田植え・間伐):地主の好意で田植えを二枚行う。また、里山の手入れとして竹等を切る。
 ⑥野外食育プログラム:耐火煉瓦によるピザ釜を組み立てて、調理方法を検討する予定。
 ⑦検討プログラム:多摩川を使った水辺活動のリスクマネジメント(安全管理)方法。
 ※以下「谷戸(やと)」とは、丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形を指す。
 以上

2.
授業の到達目標

 2.1【当事者として主体的に活動することができる】
 移動距離も短く、全日程日帰り、費用も安く抑えた、「安近短」のキャンプであるが、里山百選に選ばれた小野路に位置する谷戸で、東京とは思えない山奥に足しげく通いつつ、「学生が主体的に活動すること」が最大の特徴と考えられる。
 2.2【裏山に登れことができる・常に「こんなとこ、どうやってやるの…」に挑戦することができる】
 合言葉は「裏山に登れ」。これは石巻市の大川小学校からの教訓である。2011年3月11日の東日本震災以降、戦後最大の歴史の断絶と転換点から、さまざまな観点における、みんなが生き残れる国民的サバイバルについて考えることがキャンプの目的である。キャンプ場は里山の谷戸の田んぼにあり、周囲を谷戸山に囲まれている。谷戸までの往復には、斜面を上り下りする。
 その他、常に「こんなこと、どうやってやるの…」に挑戦する。
 2.3【ふりかえりにおいて様々な考えを述べることができる】
 2.4【参考文献を読み問題提起・質問等ができる】
 以上
 本キャンプは、参加学生自身がキャンプ場の施設作成に関わり、当事者意識や多様な役割行動能力、キャンプの創造・運営能力を養う。
 誰かがやるのを期待するではなく、自分達でやって楽しむ・体験することが、今後の生涯スポーツとしてのキャンプでも重要なテーマである。将来、教育現場で学年キャンプ、クラスキャンプを実践する際・地域でキャンプをする(災害による「キャンプ活動」をふくむ)時に使える力は主体的に「為す事によって学ぶ」ことによってのみ育まれるからである。
 その際、指導者が使ってはいけない言葉は「団体行動だから」。使う概念は「和、責任、自立、共生」となる。
 そもそも、キャンプとは「団体行動」とは何かを根本的に身体活動を通じて理解させることである。
 学校現場等で「手垢ついた」の常套句をイニシエーション(「つかみ」)の段階で教条的に使わない。迂遠(遠まわり)であるが「ふりかえり」の段階で体験から「手垢のついた言葉」である「団体行動」から解放された明確化や概念化の段階が聞けるような仕組み作りが目標と考える。

3.
成績評価の方法および基準

 上述の主体性・当事者性を参与的に観察して評価する。
 レポートについて
 実習二日目にレポートテーマ設定及びグループ作りを行う。キャンパスからの近さを活かし、学生諸兄姉はキャンプ場に足しげく通いながら、仲間とともにテーマについて考えて欲しい。その成果を、設定したテーマ毎に最終日の講義及び試験の日に発表する。レポートの全体テーマを事前に発表する。それに沿って設定したグループ毎のテーマに取り組む。その進捗作業を中間的にも相談しつつ進める。
 また、参考文献を読みキャンプ中に問題提起・質問等ができることも評価の対象である。また、毎活動後の「ふりかえり」も重視する。
 評価の配分割合:目標到達度60%・レポート20%・ふりかえり及び質問等20%
 以上

4.
教科書・参考書

 黒田次郎・倉品康夫ら、2012、『スポーツビジネス概論』、叢文社
 ※以下、2.4で述べた生涯スポーツについて言及した資料を倉品康夫 cinii で検索して読んでおくこと。
 『野外活動における冒険プログラムの役割』1997、日本体育学会
 『ポール・ウォークを考える:ストックを使って上半身を活用し積極的に登山・野外活動を行なう』1993、日本体育学会
 『スポーツを育て支えるスポーツ推進委員の在り方とは:「新たなスポーツ文化」ネットワークを創る試み』2012、日本体育学会
 『欝・デフレ・思い込み社会の処方として義務教育における余暇学習の単元を構想する文化を通貨にする試み』2013、日本体育学会
 『《小乗》スポーツを大乗化する試み:スポーツの負の部分が顕在化する昨今、改めてスポーツが人々の幸せに貢献するあり方を考える』2014、日本体育学会『スポーツと仏教と倫理 : スポーツだけがすごく高貴なもの、高等なものという発想を止める』2015、日本体育学会

5.
準備学修の内容

 【予習】前述、生涯スポーツについて言及した資料を 倉品康夫 cinii で検索して読んで、キャンプ中の評価の対象である問題提起・質問等ができるように準備すること。
【復習】各実習及び準備学習・調査で全体の「ふりかえり」をするが、さらに学習者自身が自らの知識や体験、感情などを見つめ、その学び(意味を構築するプロセス)を、前述、実習二日目に設定するレポートに反映できるようにすること。

6.
その他履修上の注意事項

【授業時間外の準備学習・調査】
 学生が指導者となり、教員がその指導をスーパーバイズする(見守り、問題を発見し、必要なら介入し、協議し助言する)という重層的な指導システムとするため、以下の4日間、9:30~16:00の時間に準備学習・調査を師弟同行(どうぎょう:教員と学生が教育的実践を通してともに学びあう、励ましあう) 的に実施します。
 ①5月中旬(日)内容:キャンプ場整備、トイレ作り、機材チェック、周辺探索、ピザ釜設計
 ②5月下旬(日)内容:キャンプ場整備、薪作り、周辺探索、リスクマネジメント、ピザ釜資材調達
 ③6月初旬(土)内容:高尾山事前調査、コース確認、リスクマネジメント
 ④6月初旬(日)内容:キャンプ場整備、薪作り、ピザ釜試験、木登り・ハイエレメント作成
 以上

 大学の健康診断を受診することが受講の条件。
 キャンプ活動にはホームセンターのゴム長靴が便利。
 雨具はゴム引きのズボンと上着がベスト。安価な雨具は無力である。
 着替えを用意しておくこと。

7.
各回の授業内容
【第1回】
《基礎授業》:5月初旬(土)9:00~17:00
 場所:帝京大学八王子校舎
 内容:授業概要説明。基礎的講義及びグループワーク。
 説明等終了後、計画打合せ。献立作成。準備日程参加名簿作成。キャンプサイト移動、調査実施。
【第2回】
         〃
【第3回】
《実技初日:キャンプ準備》5月初旬(日)基礎授業翌日
 9:00~17:00 場所:谷戸
 活動概要:地域の自然インタープリテーション、キャンプサイト準備実施
【第4回】
         〃
【第5回】
         〃
【第6回】
《2日目:野外料理等》6月中旬(土)
 9:30~17:00 場所:谷戸
 活動概要:里山体験、野外生活技術及び野外料理実習、レポートテーマ設定
【第7回】
         〃
【第8回】
         〃
【第9回】
《3日目:里山チャレンジ等》6月中旬(日)2日目翌日
 9:30~18:00 場所:谷戸
 活動概要:里山チャレンジ、野外生活技術、野外料理実習とキャンプクラフト
【第10回】
         〃
【第11回】
         〃
【第12回】
《4日目:後片付け》6月下旬(土)3日目翌週
 9:30~16:00 場所:谷戸
 活動概要:実習補遺とサイト整備
【第13回】
         〃
【第14回】
《5日目:講義及び試験》7月下旬(土)
 9:00~12:30 場所:帝京大学八王子校舎
 活動概要:講義補遺、筆記試験及び実技試験(ロープワーク)
【第15回】
         〃

【サービスプログラム】6月下旬(日)4日目翌日
 内容:高尾山ハイク(日本キャンプ協会後援予定)

【補講】7月下旬(日)予定
 内容:未定

 計画は目標実現の為にある。ゆえに目標実現の為に臨機応変に変更されるものとする。

以上