Web Syllabus(講義概要)

　日本の書物の発生から江戸時代に至るまでを，材料，装訂の変遷，書写・印刷様式，出版と流通，来歴など書誌学的観点から学ぶ。
　特に，江戸時代のベストセラー小説『道中膝栗毛』『偐紫田舎源氏』『浮世風呂』，寺子屋の教科書『小野篁歌字盡』（漢字），『女大学』（女性の教養），『塵劫記』（数学），実用書の『都風俗化粧伝』（美容），『豆腐百珍』（料理），『切絵図』（住宅地図）といった書物を実際に手に取り，江戸が出版文化繚乱の時代であったことを知ると共に，くずし字にも慣れ，さらに，和綴じと木版刷りの実習を交えて古い時代の書物に親しみがもてるようにする。

　１）各種の装訂様式と変遷を社会状況，時代背景との関係で理解する。
　２）印刷本の初刷と後刷を見極める力を修得する。
　２）書物と読書について文化史的な関係を理解する。
　３）文化遺産としての古典籍の取扱いと保存管理の在り方を理解する。
　４）装訂については，中世と近世における代表的な裝訂を実習し，その技術を身に着ける。

　毎授業におけるショートコメント（30％），小レポート及び授業中の課題発表（20％），最終試験（50％）により総合的に評価する。
　特段の理由なく授業回数（15回）のうち5回以上の欠席，指定期日までにレポートまたは課題を提出しない場合は最終評価の対象から除外する。

　参考書：廣庭基介，長友千代治著『日本書誌学を学ぶ人のために』世界思想社，1998
　　　　　井上宗雄ほか編著『日本古典籍書誌学辞典』岩波書店，1999
　　　　　櫛笥節男著『宮内庁資陵部書庫渉猟』おうふう，2006
　　　　　中野三敏著『書誌学談義江戸の板本』　岩波書店，1995
　　　　　中野三敏著『和本のすすめ―江戸を読み解くために』岩波書店，2011　（岩波新書）
　　　　　市川寛明・石山秀和著『図説江戸の学び』　河出書房新社，2006　（ふくろうの本）
　　　　　渡辺勝二郎著『紙の博物誌』出版ニュース社，1992

　１）第3-5回「江戸時代のベストセラーを読む」は，江戸時代の書物（くずし字）を数行づつ読んでもらう。しっかり予習してくること。
　２）毎授業でMELICに所蔵する関連図書を紹介するので，目をとおしておくこと。
　３）国文学研究資料館（立川市，多摩都市モノレール高松駅・徒歩10分http://www.nijl.ac.jp/），紙の博物館（北区，R京浜東北線・王子駅南口徒歩5分， http://www.papermuseum.jp/）のホームページ閲覧，訪問，常設展示観覧，図書室を利用するなどして優れた古典籍や書写材料としての和紙を目にする機会を作るよう心がけて欲しい。

　１）少人数で演習形式で行う。
　２）第1回目の授業では授業の進め方，成績評価方法について説明するので必ず出席すること。
　３）参加型授業とするために，毎回，講義とディスカッション・発表，実習を交えて行う。ディスカッションには積極的に参加すること。
　４）インターネットの活用ができること，WORD・EXCELで文書等の作成ができること，Web File Serverを使用（授業資料のダウンロード，レポート等のアップロード）することができること，を最低条件とする。
　５）授業に関する連絡手段としてメーリングリストを作成する。履修確定後速やかに登録すること。