Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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日本の税法 II 古市 将人
選択  2単位
【経営】 17-1-1110-1939-32A

1. 授業の概要(ねらい)

 なぜ、税金は割り勘ではないのだろうか。国の歳出に必要な税額を一人当たりに換算すれば税金は一つで十分になり、租税法という講義はずいぶん簡単になる。しかし、現実はそうなっていない。現実の租税制度は複数の税金で構成されている。この問題をどう説明すべきだろか。
 その上で、「なぜ、私たちは政府に税金を支払うのだろうか」という質問を考えてみてほしい。この疑問に対して、憲法に書かれている「納税の義務」を持ち出すのが簡単な答え方であろう。つまり、「なぜ、このルールに従わないといけないのか」という質問に対して、「それが義務だから」と答えることになる。さて、どう考えるべきか。
 以上の問題に対して、政府による公共サービスの財源調達のために税金が存在すると説明する人もいるかもしれない。実際、私たちが日々利用する道路・公園・保育園・小中学校・介護施設は、国や地方自治体が建設・整備しており、その財源は租税によって調達される。
 しかし、考えてみると私たちは税金を支払った見返りとして特定の政府のサービスを受け取ってはいない。個別の公共サービスを利用するたびに、税金を支払うことはない。つまり、お店では商品とお金が一対一の対応関係をもつが、納税額と納税者の受け取る公共サービス量は一対一の対応関係をもっていないのである。
 この税と公共サービスの関係を出発点として、税制を理解するために必要な基本的な制度・理論・歴史を本講義では扱っていく。特に本講義では、日本の税制を租税の理論(租税論)の観点から理解することを一つの目標とする。実定税法の諸規定や税制改革の動向は租税論の成果を基礎としている場合が多く、日本の税法を理解するのに租税論の学習は必要不可欠である。もちろん「理論」と「現実」との間には大きな乖離があり、理論のみならず税制史の流れについても触れていく。

2.
授業の到達目標

 国や地方自治体が供給する公共サービスは私たちの生活に大きな影響を与え続けている。税金はその公共サービスの財源である。租税の理論・制度・歴史について受講生に一定の知識をもってもらうことで、税制をめぐる議論を複眼的な視点で理解できるようになることが、本講義の目標である。具体的には以下の点が本講義の到達目標である。
 (1)地方税を評価するための考えを理解し、それを説明できる。
 (2)付加価値税の仕組みを理解し、税額を計算できる。
 (3)地方消費税の意義を理解し、それを説明できる。
 (4)住民税の意義を理解し、税額を計算できる。

3.
成績評価の方法および基準

講義中に提出してもらうリアクションペーパー(20%)、授業内で行う小テストの点数(40%)、試験の点数(40%)によって基本的に評価する。ただし、以下の加点措置を実施する。
 (1)加点レポートを提出することができる。提出者にはレポート分の点数が上記の点数に加点される。
 *このレポートの提出は任意である。未提出であっても減点はされない。
 (2)講義中の教員の質問に答えることで、加点される場合がある。

4.
教科書・参考書

 特に指定はしない。毎回の講義において、講義ノートを配布する。講義に関係する基本的な参考文献として、以下の文献を挙げておく。予習復習の際には、配布する講義ノートのみならず、以下の文献を用いること。該当箇所は講義にて指示する。また、講義内で、適宜参考文献は紹介する。
 参考文献
 ・金子 宏・清永敬次・宮谷・俊胤・畠山武道『税法入門 第7版』有斐閣。
 ・酒井克彦『スタートアップ租税法 租税法学習の道しるべ 第3版』財経詳報社。
 ・田原芳幸編『図説 日本の税制 平成28年度版』財経詳報社
 ・中里実・弘中聡浩・渕圭吾・伊藤剛志・吉村政穂編『租税法概説 第2版』有斐閣。
 また、以下の文献は多面的に租税について勉強することができるため、一読を勧める。
 ・神野直彦『税金 常識のウソ』文藝春秋。
 ・諸富徹『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』新潮社。

5.
準備学修の内容

 講義ノートには練習問題を用意してある。予習・復習の際には、これらの練習問題を活用して欲しい。
 講義の最後にて、なるべく次回扱う内容に言及するので、次回までに講義ノートの該当箇所を読むこと。また、講義中に解いた例題を参考に、練習問題を解くことで講義内容を復習して欲しい。
 細かい知識も重要だが、ある制度が必要とされる理由とその歴史的な背景を把握して欲しい。

6.
その他履修上の注意事項

 予備知識ゼロの学生にも理解できるように講義する。ただし、租税法Ⅰを履修済みの学生はより効率よく学習することができるだろう。そのため、租税法Ⅰと併せて履修することが望ましい。
 授業に出席して私語をせずに勉強する学生の履修を希望する。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション:授業のガイダンスと基本用語について
【第2回】
 租税の意義と基本用語
【第3回】
 租税原則論と地方税原則論
【第4回】
 日本の地方税体系について
【第5回】
 消費税の理論と制度(1):なぜ、一般消費税が台頭してきたのか
【第6回】
 消費税の理論と制度(2):付加価値税とは何か
【第7回】
 消費税の理論と制度(3):日本の国税消費税の仕組み
【第8回】
 消費税の理論と制度(4):消費税と複数税率
【第9回】
 地方消費税の理論と制度(1):消費地と税収帰属先の一致について
【第10回】
 地方消費税の理論と制度(2):日本の地方消費税について
【第11回】
 これまでの講義の復習と補足
【第12回】
 地方所得税としての住民税
【第13回】
 地方環境税:地方公共団体の独自課税と地方環境税
【第14回】
 国際租税法(1):概論
【第15回】
 国際租税法(2):国際課税とグローバル・タックス
 ※ 進度などの関係で、一部変更する場合がある。