Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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日本のエネルギー II 並河 良一
選択必修  2単位
【経済】 17-1-1110-3746-32A

1. 授業の概要(ねらい)

 エネルギーは、他の財と異なる経済的な特徴を有している。本授業では、このような特徴に着目して、エネルギーの基礎的な経済学を学習する。具体的には、第1に、政府のエネルギー政策、エネルギー企業の戦略の考え方、第2に、資源エネルギーの需給・価格・コスト、第3に、エネルギーと環境との関係について理解する。本授業は、個別のエネルギーに焦点を当てた「エネルギー経済I」の続編であるが、同科目を履修しなくても問題はない。
 エネルギーは、食料と並び、日々の生活や産業活動に必須のものである。しかし日本のエネルギー自給率はわずか4%であるため、エネルギーを安定的、安価に確保することは極めて重要である。そのためには、エネルギー政策、企業戦略の基礎を学ぶだけでなく、エネルギー需給・エネルギー価格・コストの形成要因について理解する必要がある。また、エネルギー政策の制約要因である地球温暖化等の環境との関係についても知る必要がある。
 エネルギー需給・エネルギー価格・コストは、それ単独で存在するものではなく、需要国の経済動向、生産国の政治・経済動向、地球温暖化・原子力発電所の核廃棄物などの環境問題、新・化石エネルギーの開発動向などと密接な関係がある。つまり経済合理性と経済社会の実態のバランスの上に立って形成される。

2.
授業の到達目標

 (1)エネルギー経済の基礎知識を習得し、エネルギーの特徴を把握する。
 (2)エネルギー需給と価格形成を、経済合理性の視点から理解する。
 (3)エネルギー需給と価格形成を、その経済社会的背景、国際情勢との関係で理解する。
 (4)エネルギー政策・企業戦略を企画立案・実施・評価する能力を修得する。

3.
成績評価の方法および基準

 定期試験による、平常点を加点する。(100%)

4.
教科書・参考書

 テキストは使わず、パワーポイントを中心に説明する。必要に応じて、プリントを配布する。参考文献は、授業の中で適宜紹介する。参考図書:並河良一著『資源エネルギー政策をめぐる日豪関係』(日本経済評論社)。

5.
準備学修の内容

 授業の中で、産業・資源エネルギー経済に関するニュースを採りあげて説明するので、各種メディアの日々の経済・ビジネスニュースをチェックする習慣をつけること。とくに、日本経済新聞は購読し、常時チェックすることが望ましい。

6.
その他履修上の注意事項

 私語、スマートフォンの使用、熟眠は認められない。
 授業は、知識を得るだけの場ではない。講義を聞き、自ら考え、経済・社会の事象についての見方、考え方を確立してほしい。
 パワーポイントを見て、話を聞いて、その要点をノートするという能力を涵養すること。実社会に出れば、必須の能力である。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 イントロダクション:エネルギーとは、エネルギーとは何か、エネルギーの単位・種類、1次エネルギーと2次エネルギーの区別、エネルギー・フローについて理解する。
 (注:【第2回】以降は、学習の進捗状況、学生の理解の程度などにより、採りあげる内容・説明の順番を適宜変更する。)
【第2回】
 日本のエネルギー需給:エネルギー供給構造、需要構造、需給バランス、自給率について理解する。
【第3回】
 日本のエネルギー政策の基本的な考え方と政策体系について理解する。
【第4回】
 日本のエネルギー政策(エネルギー源の多様化、供給国の分散、開発輸入、備蓄、長期契約、ODAの活用、消費国の連帯、市場形成)の概要を理解する。
【第5回】
 日本のエネルギー企業の戦略(プロジェクトへの直接投資と開発輸入)について理解する。
【第6回】
 日本のエネルギー企業の戦略(長期契約、Take-or-Pay契約、市場の活用)を理解する。
【第7回】
 資源エネルギーの市場形成の条件と効果について理解する。また、供給国から見た資源輸出政策について理解する。
【第8回】
 エネルギー価格の形成(価格の上昇、価格の乱高下、価格形成要因、エネルギー需要の価格弾力性)について理解する。
【第9回】
 経済成長とエネルギーの関係を、エネルギー需要のGDP弾力性、供給のGDP弾力性をとおして理解する。
【第10回】
 エネルギー生産のコストの計算の基礎となる経済学の概念・知識を理解する。
【第11回】
 エネルギー生産のコストの計算方法を、具体的な事例をとおして理解する。
【第12回】
 エネルギー生産のコストの計算方法を、太陽エネルギーに応用して、理解を深める。
【第13回】
 環境とエネルギーの関係を、地球温暖化対策の事例から理解する。
【第14回】
 環境、エネルギーと経済成長の関係を、地球温暖化対策の事例から理解する。
【第15回】
 総括:エネルギー需給・価格を律する要素の多様性・複雑さを理解する。