Web Syllabus(講義概要)

平成29年度

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EU法 II 則武 輝幸
選択  2単位
【法律】 17-1-1210-0420-23

1. 授業の概要(ねらい)

 欧州連合(EU)は、平和という政治目標の達成手段としての地域的経済統合のために、加盟国がその主権の一部を共通の機関に委ね、法の支配の下に人権と民主主義を尊重しつつ共同行使する超国家的統治体である。本授業では、春期の東史彦講師担当のEU法Iを受けて、EU統合の経験を学ぶことにより、東アジアにおける日本の役割について考えるための知識を提供する。

2.
授業の到達目標

 ①EU法の世界では、競争法分野において日本企業がEU競争法の域外適用の対象となることが多々ある。つまり、EU域内に直接投資や輸出を行う日本企業でなくても、EU法の影響を受けることがある。そこで、本授業では、受講者が将来の実務において、EU法が関係する事例に携わる際に、情報の収集・分析、ないし判断を行うための基礎的な知識を習得できるようにする。

3.
成績評価の方法および基準

 原則として、期末試験100%で評価する。中間試験やレポートは実施しない(詳しくは第1回で指示する)。

4.
教科書・参考書

  教科書:庄司克宏『新EU法・基礎編』岩波書店、2013年
      庄司克宏『はじめてのEU法』有斐閣、2015年
  参考書:庄司克宏『欧州連合』岩波書店、2007年
      中村・須網編著『EU法基本判例集』(第2版)日本評論社、2010年

5.
準備学修の内容

 必ず教科書・プリントで予習・復習をして、自学自習の習慣を身に付けて頂きたい。
 教室に座っていさえすれば単位がもらえると思っているならば、大間違いである。

6.
その他履修上の注意事項

 ①春期に東史彦講師担当のEU法Iを履修していることが、極力望ましい。
 ②毎日、新聞の国際欄を読んだり、テレビのニュースを見たりして、自発的に国際問題に対する関心を深めるよう、努力して頂きたい。
 ③おおむねテキストの順序に従って講義するが、随時、補足のためにプリントも配布する。講義の初日と最終日のみ出席するようないい加減な受講態度では、単位の取得は望めない。「先生の話はだまって聞きましょうね」、「勝手にお外に出てはいけません」とは幼稚園児が習うことである。幼稚園児「未満」の振舞いは、厳に謹んで頂きたい。途中で出て行くつもりなら、初めから来なくてよろしい。

7.
各回の授業内容
【第1回】
 EUの制度上の沿革について説明する。
【第2回】
 EUにおける権限配分
 EUの排他的権限、加盟国との共有権限、EUの補充的権限などの権限関係を確認し、EUの役割を理解する。
【第3回】
  諸機関、立法・政策決定、執行
 EUの諸機関(理事会、欧州議会、コミッション)の構成および役割について確認し、それらによる立法手続を解説し、また、EU立法がどのように実施されるのかについて説明を行う。
【第4回】
 EU法の法源
 EU法の法源(設立条約、派生法、EUが締結した国際協定、法の一般原則、判例法)について、またそれらの関係について解説する。
【第5回】
 EUの司法制度①(欧州司法裁判所、先決裁定手続)
 欧州司法裁判所の構成および役割について説明を行った後、先決裁定手続の解説(欧州司法裁判所と国内裁判所とがどのような関係にあるかについての解説)を行う。
【第6回】
 EUの司法制度②(直接訴訟:取消訴訟)
 欧州司法裁判所における直接訴訟(取消訴訟)を解説する。
【第7回】
 EUの司法制度③(直接訴訟:義務不履行訴訟、損害賠償請求訴訟等)
 欧州司法裁判所における直接訴訟(義務不履行訴訟、損害賠償請求訴訟等)について、解説を行う。
【第8回】
 EU法の特徴(優越性)
 EU法の特徴であるEU法の国内法に対する優越性について解説する。
【第9回】
 EU法の直接効果(EU基本条約、規則)
 EU法の直接効果を、設立条約、規則について説明する。
【第10回】
 EU法の直接効果(指令)
 EU指令の直接効果を詳しく解説する。
【第11回】
 EU法の直接効果(決定、国際条約)
 EU法の直接効果を、決定、国際協定のそれぞれについて説明する。
【第12回】
 EU法のその他の効果(適合解釈義務)
 EU法が直接効果を有しない場合の適合解釈義務について解説する。
【第13回】
 EU法のその他の効果(EU法にもとづく国家賠償請求)
 EU法が直接効果を有しない場合のEU法にもとづく国家賠償請求について解説する。
【第14回】
 EU法の権利の国内的救済
 直接効果を有するEU法規定に基づく私人の権利の侵害に対する救済が、国内裁判所においてどのように行われるかについて解説する。
【第15回】
 EUにおける基本権保障
 EUにおける重層的な基本権保障について解説する。