基本文献研究Ⅰ
担当者木村 康平教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングJLT-219

授業の概要(ねらい)

 古事記を読みます。
 古事記は和銅5年(712)に成立したと、その序文にしるされる、わが国に現存する最古の書物です。上・中・下の3巻からなり、上巻は世界の始まりからカムヤマトイハレビコノミコト(神武天皇)の誕生までの神代、中巻は神武天皇から応神天皇までの、神と人の中つ代、下巻は仁徳天皇から推古天皇までの人代を語り、推古天皇までを古代とする歴史認識のもとに編まれています。
 天皇王権の由来と正統性を、神話に規範を仰ぎつつ説くものです。また、中巻には神武東征やヤマトタケルの全国征旅など、王権の確立を語る物語が置かれています。一方で、サホビコ・サホビメきょうだいの叛乱伝承など、王権に抗して倒れた人々の物語をもしるし、その悲劇性が古事記の豊かな文学性のみなもとともなっています。また、下巻には儒教的君子仁徳天皇を先立てて、人の代の、国の統治のあり方が、多くの恋物語に絡めて語られています。
 春学期は上巻を読みます。古文の知識がなくても分かるように説明します。難しく考えないで、まず、古事記の物語性を楽しみたいと思います。

授業の到達目標

 古事記の神話や説話を読むことを通じて、古代の文学に親しみをもつことができる、古代の人々のものの考え方や生き方を知ることができる、古代文学に関する基礎的な知識を修得することができる、を目標とします。

成績評価の方法および基準

 期末試験(50%)と平常点(出席状況・コメントシート・小レポートなど併せて。50%)によって評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書テキスト:毎回プリントを用意します。
 
教科書
参考文献『古事記の世界』西郷信綱岩波新書

準備学修の内容

・授業で取り上げた箇所について、復習すること。
・配付するプリントには毎回「質問」がしるされています。これについて各自考えること。
・授業時に紹介した参考書などにふれる機会をもつこと。
・自ら疑問をたて、さらに発展的に学習すること。

その他履修上の注意事項

 出席することが大切です。遅刻をしないこと。また、授業マナーは守りましょう。

授業内容

授業内容
第1回世界のはじまりをどう語るかー古事記の冒頭
第2回古事記とは何か(古事記の成立・編者・文体など)①
第3回古事記とは何か(古事記編纂の背景―天武天皇と新王朝)②
第4回イザナキとイザナミ―兄妹婚と世界の立てなおし
第5回黄泉の国訪問(死者の世界はどのように考えられていたか)
第6回死のけがれを経てうまれ出た、世界を統べる者―アマテラス
第7回理知的な姉アマテラスと乱暴者の弟スサノヲの相剋(秩序・破壊・再創造)
第8回身を隠すアマテラス―天の岩戸神話(太陽の死と再生)
第9回スサノヲの女神殺害(穀物の起源と大地母神)
第10回ヤマタノヲロチ退治(自然神から新しい文化神への交代)
第11回大国主神と因幡のシロウサギ(呪医としての王―王の資格とは何か)
第12回大国主神の受難と根の国訪問(王は異界の力を身に帯びて統治する)
第13回八千矛神をめぐる愛と嫉妬の歌
第14回出雲神話と大和の関係
第15回全体のふりかえり(・試験)