日本経済論Ⅱ
担当者小林 成弘教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [経済学科]
科目ナンバリングECP-204

授業の概要(ねらい)

 本講座では、経済運営や経済政策を考える上で常に論争を巻き起こしてきた「”大きな政府”か”小さな政府”か」ないし「規制・監督を行うべきか自由放任にすべきか」という視点に立ち、戦後の日本経済およびそれに大きな影響を与えてきたアメリカなど世界経済の動きについて振り返ります。
 世界の経済政策の潮流は昭和初期までは自由放任、即ち「小さな政府」であることが望ましいという考え方が主流でしたが、行き過ぎた自由放任政策が1920年代のアメリカ株式バブルを生み世界大恐慌を巻き起こしたとして、以降、世界の主要国では政府が経済を規制し監督を強化する時代に変わっていきました。 この「大きな政府」の時代は戦後も続くのですが、1970年代後半にニクソン・ショックやオイル・ショックが起こったことで政府の経済コントロール機能は大きく低下し、各国で「小さな政府」の時代に逆戻りして規制緩和や民営化が急速に進んでいきました。 こうした世界規模で進み始めた規制緩和はグローバル経済化を促しましたが、特に金融分野での規制緩和は金融機関の暴走(モラルを失った儲け主義)とバブルを招き、その結果アジア通貨危機やサブプライム危機など世界規模の金融危機を頻繁に引き起こすようになりました。 日本もそのたびに激しく揺れ動く世界経済に翻弄され、その傷跡は現在もなお格差問題や日の丸製造業の国際競争力低下など様々な形で日本経済に遺されているのです。 それだけに経済の自由化問題やバブル問題を考えることは現在の日本経済を理解する上で欠かせないといえるでしょう。 前期は、昭和初期の「世界大恐慌」から1970年代までの「大きな政府」の時代を取り上げます。 後期は、1970年代後半以降今日に至るまでの「小さな政府」の時代に国内外でどのような経済問題が生じてきたのかを振り返りながら、日本が直面してきた様々な経済問題を考えていきます。

授業の到達目標

 受講者は、「大きな政府」と「小さな政府」という歴史を超えて続けられてきた政策論争に対して自身の見識を養い、現在の日本経済が歴史的にどのような位置づけにあるのかを大づかみにでも把握できるようになってもらいたいと思います。

成績評価の方法および基準

 期末に行うペーパーテストの結果を成績評価の基礎点とし、これに普段の授業への取り組み姿勢(出席状況、義務的課題の実施状況、任意レポート提出など)をボーナス点として加算して総合評価を行います。ただし、以下の事項に該当する場合は大幅減点となります。
 ①授業中の私語など他の学生に影響を与えるあらゆる「迷惑行為」
 ②授業中およびテスト時におけるあらゆる「不正行為」

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 【テキスト】特に指定しません。 その他の参考文献は、講義に都度紹介します。
 
教科書  
参考文献『高度成長期の日本経済』       武田晴人編(有斐閣)
参考文献『バブルの歴史』エドワード・チャンセラー(日経BP)
参考文献『マネー革命(1)~(3)』NHK取材班(日本放送協会)

準備学修の内容

 講義は基本的にパワーポイントを使って進めます。 パワーポイントの資料はその都度縮刷版をプリント配布しますが、その内容は多岐にわたり分量も多くなりますので授業に出席せずに後で資料だけに頼って勉強しようとしても重要なポイントを絞れず講義の全体像を掴むことは到底不可能です。 必ず毎回授業に出席して講義をしっかり聴き、メモをとり、何が重要なのか、どのように話が展開されるのかを自分の頭で整理しながら理解していくように努めて下さい。 なお、講義内容について各自の理解を深め知識の定着を図るため、授業の際に練習問題プリントを配布することがあります。 特に提出は求めませんが、聴講生はそれら課題を自宅で自主的に取り組んでみることを強く勧めます。

その他履修上の注意事項

 単に授業を聞くという受け身の姿勢ではなく、講義を通して自分の関心や疑問を掘り起こし、原典や関連文献または統計データに直接あたって調べたり確認してみるといった積極的な姿勢で取り組むことを期待します。

授業内容

授業内容
第1回 ガイダンス/金融自由化の潮流
第2回 デリバティブ時代の到来
第3回 暴走するアメリカ金融機関
第4回 自由化と東京一極集中
第5回 プラザ合意と円高不況
第6回 平成バブル
第7回 バブル崩壊と失われた20年
第8回 アジア通貨危機と21世紀型金融危機
第9回 証券化とサブプライム危機
第10回 リーマンショックの米国発世界金融危機
第11回 中国の台頭とバブル
第12回 金融機関の国際再編
第13回 アベノミクスと「日銀景気」
第14回 米中貿易戦争と日本経済
第15回 まとめ/テスト