担当者 | 高田 孝二 | |
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単位・開講先 | 選択 4単位 [文学研究科 臨床心理学専攻] | |
科目ナンバリング |
精神(こころ)と呼ばれるものは、言語を含む行動や、表情を含む一般状態・行動を介してのみ観察しうる。ここでは、精神薬理学(行動薬理学)分野の研究を介して、精神科領域の各種病態の動物モデルや治療薬の作用機序などから、その病態の成因や、発現メカニズムについて考察する。またわれわれは、酒、たばこ、茶などの嗜好品を介して日常的に向精神物質を摂取しており、これら自体が乱用など社会的問題を生じるほか、治療薬との相互作用も大きな問題となる。ここではまず、この分野の歴史と薬理学の基礎を概説した後、不安やうつについての動物モデルや最新の文献を抄読し、薬物効果を通してみたこころのはたらきについて考える。
また現在、米国ではヒドロコドンなど、オピオイド鎮痛薬の過剰処方や乱用が大きな問題となっているが、ここでは、薬物依存症の研究を介して、いわゆる「行動のアディクション」や「強迫」など、類似の行動特性を有する障害について概観し、なんらかの報酬により形成維持された行動が「やめられない」状態になるメカニズムを、動物モデルを含め、考察する。
精神科領域の各種病態治療薬の作用メカニズムや動物モデルを用いた知見を介して「こころとは何か」についての考察を深めるとともに、「evidence-based」の考え方、方法論を学び、身につける。
発表・レポート・質疑内容(合計70%)、最終レポート(30%)で評価する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | テキストは文献(英文を含む)などより適宜配布。 | ||
参考文献 | 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(2013) | 米国精神医学会 | |
参考文献 | 『ICD-10 精神および行動の障害』(1993) | WHO | |
参考文献 | ICD-11, 2018 version (https://icd.who.int/) 06 Mental, behavioural or neurodevelopmental disorders | WHO |
発表やレポートは、テキスト内容の紹介のみならず、独自の観点からの考察が必要です。このため、テキストだけではなく、関連文献・情報を精査してください。報道や著作物の内容を鵜呑みにせず、キイとなる事象については「ウラ」をとる習慣をぜひ身につけてください。
積極的な参加を期待します。
回 | 授業内容 |
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第1回 | ガイダンス、抄読資料配布・割り当て |
第2回 | 講義:薬理学の基礎 (1)薬物の生体内運命(薬物動態学) |
第3回 | 講義:薬理学の基礎 (2)薬物の作用点 |
第4回 | 講義:薬理学の基礎 (3)薬物反復投与による効果の変容 |
第5回 | 講義:不安について |
第6回 | 文献抄読・討議:不安(1) |
第7回 | 文献抄読・討議:不安(2) |
第8回 | 文献抄読・討議:不安(3) |
第9回 | 講義:うつとは |
第10回 | 文献抄読・討議:うつ(1) |
第11回 | 文献抄読・討議:うつ(2) |
第12回 | 文献抄読・討議:うつ(3) |
第13回 | 文献抄読・討議:アルコールとうつ・自殺(1) |
第14回 | 文献抄読・討議:アルコールとうつ・自殺(2) |
第15回 | 総合討論、まとめ |
第16回 | 抄読資料配布・割り当て |
第17回 | 講義:薬物依存研究の歴史 |
第18回 | 講義:身体依存、精神依存、行動薬理学的検索法 |
第19回 | 文献抄読・討議:覚せい剤(1) |
第20回 | 文献抄読・討議:覚せい剤(2) |
第21回 | 文献抄読・討議:アルコール(2) |
第22回 | 文献抄読・討議:アルコール(2) |
第23回 | 文献抄読・討議:アルコール(3) |
第24回 | 文献抄読・討議:たばこ(1) |
第25回 | 文献抄読・討議:たばこ(2) |
第26回 | 文献抄読・討議:行動のアディクション 賭博(1) |
第27回 | 文献抄読・討議:行動のアディクション 賭博(2) |
第28回 | 文献抄読・討議:行動のアディクション ゲーム |
第29回 | 文献抄読・討議:行動のアディクション その他 |
第30回 | 総合討論、まとめ |