地域統合論Ⅰ
担当者
単位・開講先選択  2単位 [国際経済学科]
科目ナンバリングINR-203

授業の概要(ねらい)

世界の潮流であった地域統合の動きが、近年になって少し様相が変わってきた。2016年2月に12カ国によって署名された「環太平洋経済連携協定(TPP)」については、2017年初めに米国が自国利益優先を理由に不参加を表明した。また、英国も移民政策などの相違から2017年にEU離脱を正式に伝えた。現段階では英国がEUとの「合意なき離脱」を2019年3月に迎えてしまう可能性が高い。
こうした保護主義的な動きが欧米を中心に活発化する中、TPPに関しては合意内容の一部凍結などを図りながら残る11カ国で2018年12月に発効にこぎつけた。また、日EU EPAも同時期に大筋合意に達し、2019年2月1日に発効した。経済統合による大きな経済効果を考慮しての結果である。
欧米における地域統合の「軋み」に反し、東アジアにおいてはアセアン(東南アジア諸国連合)や日本が中心となって統合の動きが活発化している。それはメガFTA(自由貿易協定)時代の到来と言ってもよい。アセアンは2015年末に「アセアン経済共同体(AEC)」を結成した。また、アセアン周辺国(日本、中国、韓国、インド、オーストラリア、ニュージーランド)は、アセアンとFTAをそれぞれ結び、今やアセアンはアジア貿易のハブとして機能している。さらにアセアン10カ国に上記6カ国を加えた16カ国による「東アジア地域包括的経済連携(RCEP)」への進展も図られ、2019年には大筋合意に至ろうとしている。日本も、先にあげたTPP11や日EU EPAおよびRCEPと急速にメガFTA形成へ向けた外交努力をしている。東アジアにおいてはこうした経済的相互依存の深化とともに、人の往来も活発化し、異文化交流が進んでいることは重要な事実である。
本講義では、こうした統合の内容・意義を考える前提として、春期にまずアジアの実態を政治、社会、文化等の側面から幅広く理解し、統合の長い歴史を持つEUの経験をも学ぶ。秋期には、アジアにおける各国経済の現状と特徴を理解したうえで、統合の動きを、アジア主要諸国(中国、韓国、アセアン諸国、インド、日本等)ならびに欧米はどのように見ているのか、またその実現可能性を議論する。なお、授業は各分野の内外の専門家が分担し、オムニバス形式で行う。

授業の到達目標

① アジア諸国の、政治、社会、文化等のおおまかな特徴が説明できる。(春期)
② アジア諸国の経済の現状と特徴が説明できる。(秋期)
③ AEC、日EUEPA、RCEP、TPP11等のメガFTAの仕組みを理解し、アジア地域統合の将来あり方と日本の役割について、主体的に考えることができる。(秋期)

成績評価の方法および基準

授業中の積極性10%、授業内中間テスト(必須)40%、授業内期末テスト(必須)50%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書各講師が配布する資料がテキストとなる。
参考文献『東アジアにおける経済統合と共同体』2014年廣田功・加賀美充洋(編)日本経済評論社
参考文献その他の参考文献は授業中に指示する。

準備学修の内容

 ①参考文献等で講義の対象国に関する事情を調べてから授業に出ること。
 ②新聞を毎日読み、東アジア諸国の動き、統合問題に関連する記事等に注意すること。

その他履修上の注意事項

 ①授業に参加し積極的な質問・意見表明を歓迎する。
 ②通年での履修を薦める。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション:アジア諸国の多様性と共通性(玉村千治)
第2回大学生活から見えるアジア諸国の社会と文化(留学生の報告と意見交換)
第3回アジアの航空市場と経済(梅﨑創、アジア経済研究所)
第4回ベトナムの政治・社会・文化(菊池正)
第5回中国の政治・社会・文化(山本裕美、京都大)
第6回フィリピンの政治・社会・文化(二村泰弘、元アジア経済研究所)
第7回韓国の政治・社会・文化(奥田聡、亜細亜大)
第8回インドネシアの政治・社会・文化、(長田博)、中間テスト
第9回カンボジアの政治・社会・文化(初鹿野直美、アジア経済研究所)
第10回タイの政治・社会・文化(助川成也、国士舘大学)
第11回インドの政治・社会・文化(清水学、元帝京大)
第12回アジアにおけるマイクロファイナンスと貧困削減(濱田美紀、アジア経済研究所)
第13回統合の経済的側面(若山昇)
第14回 ヨーロッパの歴史的経験(古内博行)
第15回シンガポールの政治・社会・文化, 春期のまとめ、期末テスト(玉村)