産業・企業研究Ⅱ
担当者岡本  勉教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経営学科]
科目ナンバリングMAN-314

授業の概要(ねらい)

 本講義のテーマは、日本の金融産業、とくに日本の銀行です。
 いま、みなさんが知っている大手の銀行の名前を挙げてみてください。みずほ、三井住友、三菱UFJの3つは、すぐに出てくるでしょう。りそなの名前も挙がるでしょう。それで、4つです。
 しかし、1990年代には、日本の大手銀行はもっと数があり、都市銀行と呼ばれる大手銀行だけで13行もありました。都市銀行だけではなく、長期信用銀行、信託銀行と分類される銀行もあり、とくに1980年代には、日本の大手銀行は、世界最強の金融機関でした。実際に、1980年代後半ごろは、世界の大手銀行のトップ10のうち、6、7行を日本の銀行が占めていました。
 それがいまはすっかり様変わりし、大手銀行は冒頭に挙げた4行に減ってしまいました。長期信用銀行はなくなり、信託銀行も数が減りました。
 たかだが、20年、30年のうちに、何が起きたのでしょうか。
 この20年、30年は、日本の金融機関にとって、激動の時代でした。もう少し具体的にいえば、最強を誇った金融機関が、一気に弱小化し、多くの金融機関が倒産する。どん底に落ちたあと、この10年で、回復に向かい、なんとか、世界の金融機関と戦えるだけの力を取り戻した。
 そういう時代です。
 その間に、日本の銀行各行は、何をしてきたのか。いま、何をしようとしているのか。そういう中で、日本銀行はマイナス金利を打ち出した。マイナス金利とは何か?
 日本銀行や財務省の動きをまじえ、激動の金融機関の過去を振り返り、現在の姿を確認し、未来を展望します。

授業の到達目標

日本の金融界は、この20年ほど、まことに激しく動きました。いまも、その激しさは、収まったわけではありません。
 就職において、日本の銀行の採用学生数が減ったことが話題になりますが、それは、金融界の激しい動きの延長線上にあります。
 日本の金融界は、いったい、どうしてそんな激しい動きに陥ったのか。それをしっかり理解し、日本の金融の現在を把握するのが、講義の目標です。

成績評価の方法および基準

講義形式ではありますが、できるだけ、質疑をたくさん取り入れたいと思います。質疑だけではなく、小テストも何回か考えています。講義の最終回には講義内試験をします。
 そうしたものの総合評価で、成績を決めます。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書とくに定めませんが、新聞、テレビ、あるいはネットでもかまいませんが、日々のニュースを、しっかりウオッチしてください。

参考文献

準備学修の内容

電機でも述べましたが、金融の動向も、経済だけではなく、政治、国際、社会の動きからも、大きな影響を受けます。
 君たちは、その中で、生きています。 
 金融のニュースは、とっつきにくいかもしれませんが、日々のニュースを関心を持ってウオッチしてください。

その他履修上の注意事項

この講義のためのノートを一冊、用意してください。
 出来れば、A4サイズのノート、いわゆる大学ノートを用意してください。
小さなノートではなく、大きなノートを使いましょう。
講義の内容を、しっかりと、ノートに取ってください。
 小テストをすることがありますから、その場合に備えて、講義では必ず、鉛筆(シャープペンシルでもかまいません)と消しゴムを持って来てください。

授業内容

授業内容
第1回この回はガイダンスです。日本の金融の現状をざっくりと説明し、日本の金融を勉強する意味を話します。
第2回日本の銀行は、1980年代には、世界最強と見られていた。それが、バブル崩壊後、一時、多くの銀行が倒産の危機に陥る。いま、ようやく回復して落ち着いてきた。この20年を簡単に振り返る。
第3回金融産業とは何か。
 日本の金融は、次のように分類される。
 ・ 3大銀行 プラス1
 ・ 信託銀行
 ・ 旧長期信用銀行
 ・ 地方銀行
 ・ 信用金庫、信用組合
 ・ 政府系金融機関 
 ・ 郵便局
 ・ 農協
 その違いを理解する。

第4回日本の3大銀行プラス1 の変遷 その1
 日本の大手銀行は、1990年前半まで、都市銀行と呼ばれる13行が活発に営業していた。
 それは、
 第一勧銀、富士、住友、三菱、三和、東海、三井、太陽神戸、協和、北海道拓殖、大和、さいたま、東京
  ーーの13行だ。
 それがいま、3プラス1の4行になった。その変遷を学ぶ。
第5回日本の3大銀行プラズ1 の変遷 その2
 (4)の続き
第6回財閥系銀行
 上記の13行のうち、富士、住友、三菱、三井は、旧財閥系銀行と呼ばれる。財閥とは何かを勉強する。

第7回長期信用銀行の破綻
 日本には、かつて、長期信用銀行と呼ばれる銀行があった。それは、 日本興業銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の3行だ。
 長期信用銀行は、戦後の日本企業を金融面から支えた銀行だ。いまはみな、姿を消し、あるいは、姿を変えた。
 長期信用銀行の役割を理解する。
第8回日本銀行とは何か?
 日本銀行とは、何をする銀行か。どこにあるか知ってますか。
 日本銀行は、いま、日本の金利をマイナス金利にしている。
 日本銀行の役割を理解する。

第9回円ドル相場とは何か?
 金融は、日本国内だけで仕事が出来るわけではなく、毎日、アメリカや欧州、中国といった世界各国、地域と、取り引きをしなくてはならない。
 円を使っているのは日本だけだから、アメリカと取り引きするには、ドルと交換する必要が出てくる。それを外国為替と呼ぶ。
 外国為替市場は、どこにあるのだろう。何をしているのだろう。
 外国為替を理解する。
第10回証券会社の変遷
 銀行ではないが、証券会社も、金融機関と呼ばれることがある。
 かつては、野村、大和、日興、山一が4大証券だった。
 いまは山一が消え、野村、大和、日興の3社態勢になった。
 証券業界の変遷を見る。
  
第11回銀行が倒産した日
 1997年11月、日本のサッカーが初めてワールドカップへの出場を決めた日、北海道拓殖銀行が倒産した。
 たまたま同じ日になったものだが、おかげで、当時の新聞のトップニュースは銀行の倒産で、サッカーの扱いは極めて小さい。
 北海道拓殖銀行に続いて、同じ11月に山一証券が倒産した。
 この11月、日本人は、戦後初めて、銀行も証券会社も倒産するということを知った。
 そのときのことを振り返る。
第12回銀行はなぜ倒産するのか。前回からの続きです。
 かつて、銀行は倒産するはずがないと思われていたが、、1997年11月の北海道拓殖銀行の倒産に象徴されるように、90年代後半には、銀行の倒産が相次いだ。
 直接の原因は、バブル崩壊だ。 
 銀行は、なぜ、倒産するのか。そのメカニズムを考える。
第13回低金利時代からマイナス金利へ
 銀行に預金すると、利子が付きます。1980年代までは、預金の利子は、5%-6%ぐらいありました。
 いまの利子を知ってますか? 0・005%ぐらいしかありません。
 これを低金利と呼びますが、最近、日銀がマイナス金利を打ち出しました。どうしてそんなことになったのかを勉強します。

第14回銀行の仕事の変遷
 金利が5%も6%もあったころと比べ、いまの低金利時代には、銀行の仕事の内容も大きく変わりました。利子が高いころは、ほうっておいても、お客さんがお金を預けに来てくれました。いまでは、銀行に足を運ぶお客さんが減りました。銀行の仕事も変わります。
 銀行は、低金利時代になり、お客さんが減ってしまいました。また、インターネットで取り引きをするインターネットバンキングも普及してきました。
 そうすると、銀行は、支店がだんだん不要になってきました。実際、最近、駅の回りでも、銀行の支店がどんどん減っています。
 そうなると、銀行の新規採用が減り、これは、就職戦線にも大きな影響を与えます。
 その現状を理解します。
第15回半年の内容を踏まえ、最後に、講義内試験を実施します。