出版文化論Ⅱ
担当者横手 拓治
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSOC-230

授業の概要(ねらい)

 わが国のマンガ文化は21世紀のいま、世界的な評価を得ています。それはどのようにはじまり、進展・成熟していったのか。本講では近現代を中心にマンガ文化・マンガ出版の様相を解説し、その独自の歴史を捉えていきます。日本ではすでに近世において、葛飾北斎『北斎漫画』など戯画が庶民層に広く読まれており、そうした前史をふまえ、マンガ出版の近現代史がはじまります。明治期の風刺画、大正期の4コマ漫画を経て、昭和になると、雑誌連載と単行本化によるヒット作があらわれました。
 戦後、マンガ出版はさらに進展します。1959年の『少年マガジン』『少年サンデー』の創刊は重要なトピックとなり、少女マンガ、劇画・青年マンガも独自の展開を見せるなか、80年代から90年代の『少年ジャンプ』興隆で、日本のマンガ文化はひとつの頂点を築きます。メディアミックスが盛んになり、やがてマンガは日本発の文化コンテンツとして世界的な地位を獲得していきます。
 その歴史的過程を辿ることで、すでに日本文化の重要なジャンルとなったマンガに眼を向けていくのが本講の目的となります。本講は作家・作品を多く採りあげ、またアニメ作品、ドキュメンタリー映像の上映鑑賞も随時おこないます。それに加え、出版側の動きも解説していきます。制作者であるマンガ編集者・出版人は、どのような戦略や意図をもってマンガを世に送り出していったのか。その試行錯誤の姿を捉えることで、日本のマンガ文化を多面的に把握していきたいと思います。
 講師は現役の書籍編集者ですが、『少年マガジン』『少女フレンド』『なかよし』創刊編集長に編集の基本を学んでおり、マンガ出版・編集への一定の知見を背景に講義を行っていきます。

授業の到達目標

 いまや世界に発信する日本文化の主柱となったマンガ。その歴史について知見を養うとともに、作家や作品に対する幅広い知識を修得する。
 日本のマンガの全体像を捉え、その魅力について説明できる能力を養う。
 マンガを生み出した重要な背景として、出版側の事情を知ることで、マンガ文化へ多面的な理解を得る。
 生成期から成熟期へと展開していく様相をふまえ、メディアミックスなどの現象も把握することで、21世紀のマンガ文化を見通していく視点を養う。

成績評価の方法および基準

 出席率(50%)、筆記試験(30%)、受講態度(20%)を総合して行う。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『ひらく』vol.1掲載、「年表で『読む』日本マンガ史」澤村修治エイアンドエフ

準備学修の内容

 対象の時代について、年表などをもとに知識を得ておくこと。
 授業を理解するために必要なレジュメを、事前にLMSにて示すので、読んでおくこと。
 

その他履修上の注意事項

 特になし。
 要点をまとめた授業用データを、パワーポイントで講師が毎回示す。

授業内容

授業内容
第1回 ガイダンスおよびプロローグ(近世末、すでに世界のマンガ大国だった日本の状況。北斎漫画など)
第2回 明治・大正期――ポンチ絵と四コマ漫画(ワーグマン『ジャパン・パンチ』、ビゴー『トバエ』、北沢楽天「丁野抜作」、麻生豊「のんきな父さん」他)
第3回 昭和戦前期――『少年俱楽部』と「のらくろ」シリーズ(横山隆一「フクちゃん」なども扱う)
第4回 戦後復興期――手塚治虫の登場(『黄金バット』ほか街頭紙芝居、長谷川町子、赤塚不二夫、藤子不二雄なども扱う)
第5回 高度成長前期──『少年マガジン』『少年サンデー』の時代①(『少年サンデー』の快進撃を中心に。「伊賀の影丸」「おそ松くん」「オバケのQ太郎」他)
第6回 高度成長後期──『少年マガジン』『少年サンデー』の時代②(『少年マガジン』の反撃を中心に。「巨人の星」「あしたのジョー」「ゲゲゲの鬼太郎」他)
第7回 劇画と青年コミック――『ガロ』ほか(貸本→劇画→青年コミックの流れについて。白土三平、つげ義春、モンキー・パンチ、大友克洋などを扱う)
第8回 少女マンガ史①(「リボンの騎士」「魔法使いサリー」を経て、「ベルサイユのばら」の登場、そして「ガラスの仮面」「あさきゆめみし」他、1970年代までを扱う)
第9回 少女マンガ史②(1980年代以降を扱う。「BANANAFISH」「動物のお医者さん」「笑う大天使」「フルーツバスケット」「NANA」「のだめカンタービレ」「エマ」他)
第10回 安定成長期とバブル期――『少年ジャンプ』の時代①(「こちら葛飾区亀有公園前派出所」「北斗の拳」「ドラゴン・ボール」「ジョジョの奇妙な冒険」他)
第11回 1990年代以降――『少年ジャンプ』の時代②+00年代のマンガ(「スラム・ダンク」「ONE PIECE」「DEATH NOTE」「PLUTO」「機動戦士ガンダム~THE ORIGIN」他)
第12回 『アニメージュ』と宮崎駿(幸内純一「なまくら刀」〔1917〕から新海誠『君の名は。』〔2016〕まで、日本アニメ小史も併せて講じる)
第13回 メディアミックス(新世紀エヴァンゲリオン、涼宮ハルヒ、初音ミク、カゲロウプロジェクト、他)
第14回 海外へ進出する日本マンガ(反発と受容の過程を捉えていく。欧州、北米、アジアの各地域事情についても言及)
第15回 まとめの講義と筆記試験