財務管理論Ⅰ
担当者永井 希依彦
単位・開講先選択  2単位 [経営学科]
科目ナンバリングMAN-315

授業の概要(ねらい)

 これだけ「企業価値創造」が叫ばれるようになった現在であっても、企業活動に従事する大半の人々は、未だに、売上高やマーケットシェアの拡大を図ることにのみ関心が向かいがちです。利益の「総額」に焦点をあてているといってもいいかもしれません。
 他方、会社経営をしているうえで、金融機関からの資金調達など、外部から有形・無形の支援を受ける局面が多々あります。その場合、助力を与える外部のステークホルダ(関係者)にとっては、自らの支援をテコにその企業がどれ程の成長を図ることができたのか、という「効率性」に最も関心が向かいます。その意味で、利益の「総額」だけでなく利益を生み出す「効率性」も企業の成長には同じくらい重要なトピックです。
 本講座ではヒト・モノ・カネといった経営資源のうち特に企業の「血液」といってもいい「カネ」に焦点を当て、「カネ」の流れを管理し考察します。そうすることで、最小限の血液で最大限の働きができているか、すなわち「効率性」を議論することができるからです。
 従来は財務管理論というと主に企業の資金の調達と運用、そして成果の分配についての管理に限定しがちでした。しかし、現在では資金調達方法・企業の形態・投資意思決定方法も多様化していることから、単に調達スキームと資本コストの議論だけにとどまらず、企業の包括的な数値、数量的な管理・分析・評価、意思決定をも含むようになっています。株価の形成、企業評価・株式の評価、資金調達、投資決定、配当政策、財務分析、M&A、企業倒産、ストック・オプション、ポートフォリオ理論、株式の相互持ち合い、メインバンク・システム、コーポレート・ガバナンスなどは財務管理に密接に関連する問題領域になっています。本講義では、変革の時代にあっても企業に財務面から不断の改革を実行するために必要な分析枠組みと財務的意思決定の方法の基礎を体系的に学びます。言い換えれば、財務責任者(CFO)の役割を論じるといってもいいでしょう
 【前期】は、現代の財務論を構成する重要な概念やモデルを包括的に解説します。そのうえで、企業の現在の現状と可能性を正しく評価するためのキャッシュ・フロー分析と資金繰りの重要性を実践的に学びます。そうすることで後期からはじまる企業の企業価値増大のための投資の意思決定や具体的財務関連施策の学習のための土台を築きます。また、閑話休題と題し、通常の体系的学習の合間を縫って近年世間の関心が高かったり、受講生に関心を持ってもらえそうだったりするトピックについてアドホックに解説をする時間を設定します。前期の閑話休題テーマは「ベンチャー企業の財務管理」を予定しています。(※なお、講義内容は受講生の理解の進捗により適宜調整)

授業の到達目標

 第一の目標:自分自身の普段の勉強や、サークル活動等その他活動においても、成果の「大きさ」だけでなく、成果と成果を得るために払ったコストのバランス(=効率性)について注意を払えるようになる。
 第二の目標:企業の財務的な問題点が指摘された場合、財務管理論体系の中のどの話をしているのか理解できるようになる。
 第三の目標:企業の財務的な問題点について、財務関連資料から現状を正しく把握し、問題点を抽象化し、いくつかの合理的に正しい解決策を導出できるようになる。

成績評価の方法および基準

 授業への貢献度を20%程度、定期試験を80%程度にして評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『現代の財務管理』榊原茂樹・菊池誠一・新井富雄・太田浩二(有斐閣アルマ)
参考文献『道具としてのファイナンス』石野雄一(日本実業出版社)
参考文献『財務マネジメントの基本と原則』デイビット・メッキン 著/国貞克則 訳(東洋経済新報社)

準備学修の内容

 上記のテキストを事前に読んで、予習をして下さい。また講義の後、講義では扱わなかったテキストで紹介されているケーススタディを再読したり、参考教科書として指定している2冊のうち該当部分を読んだりしてよく復習してください。

その他履修上の注意事項

 無断の欠席や遅刻、私語については厳正に対処します。

授業内容

授業内容
第1回 講義の進め方・財務管理論の概観と意義
第2回 CFOに求められる機能とは:フィナンシャル・マネジメント
第3回 CFO機能1:財務諸表を解釈する力
第4回 CFO機能2:財務諸表を評価・分析する力
第5回 CFO機能3:キャッシュをコントロールする力
第6回 CFO機能4:資金を調達する力
第7回 企業破綻
第8回 資金調達1:デッドファイナンス
第9回 資金調達2:メザニン・ファイナンス
第10回 資金調達3:エクイティ・ファイナンス
第11回 社債と株式の流通
第12回 内部留保と資本コスト
第13回 資金調達4:ストラクチャード・ファイナンス(証券化)
第14回 組織論としての財務戦略
第15回 前期のまとめ