担当者 | 佐藤 光宣教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [経営学科] | |
科目ナンバリング | ECH-202 |
この授業は、中世から近世そして近代への日本経済の歴史的発展を、制度の累積的変化の過程として概観する。あらゆる時代と社会は、それらの内部に矛盾した諸制度を同時に持ち合いながら変化の原動力を懐胎するが、日本経済が辿った歴史に対する自由な見方に自ら立脚しようとするからには、かかる変化の過程に多面的な文化的諸要素が作用してきた経緯を示さねばならない。このため私は、機械論的あるいは目的論的な決定論をダーウィン主義による無目的な変化の概念によって妥当なものに改修し、これをもって授業を進める際の認識論的立場とする。このような意味において自由な立場から私は、戦国期から江戸時代、幕末から明治維新までの経済生活を中心に取り上げるとともに、その後の戦間期および戦後期さらに現今の日本経済へと流れ来る歴史を説明する。さらに日本の経済社会の将来への展望に多少なりとも触れることをもって後期授業の概要とする。
この授業において私は、資本主義という金銭文化段階(pecuniary stages of culture)において極めて不安定な様相を呈する昨今の経済社会の性質と機能について、先入観を排除しながら歴史的思索を重ねることを通じ、一定の批判能力を養うことを授業の基本的な到達目標とする。授業の到達目標の細目は、これを次のように定める。
(1)戦国時代から現今までの日本の経済生活の歴史を概括的に説明できること。
(2)日本の経済社会の変遷を世界史の流れのなかで捉えることができること。
(3)中世以降の日本経済史を中心とした教養を深めることができること。
(4)日本型資本主義の建設に寄与した渋沢栄一の事績を修得できること。
(5)住みやすい国の二つの条件とは何かについて自ら熟考できるようになること。
前期期末試験(60%)、学習到達度調査小テスト(20%)、およびこれらの試験結果に平常点(20%)を加えて評価を決する。また、正当な理由なく追試験等を実施することは制度的にできない。レポートによる救済措置は予定していない。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | テキストは使用しない。プリントを配付する。参考書は下記の通りである。 | ||
参考文献 | 大航海時代の日本人奴隷 | ルシオ・デ・ソウザ 著 岡 美穂子 著 | 中央公論新社、平成29年刊 |
参考文献 | 鉄砲を捨てた日本人 | ノエル ペリン 著 川勝 平太 訳 | 中央公論社、平成3年刊 |
参考文献 | 「鎖国」と資本主義 | 川勝平太 著 | 藤原書店、平成24年刊 |
参考文献 | 勘定奉行 荻原重秀の生涯 | 村井 淳志 著 | 集英社、平成19年刊 |
参考文献 | 江戸-明治 連続する歴史 | 浪川健治・古家信平 編 | 藤原書店、平成29年刊 |
参考文献 | 現代語訳 論語と算盤 | 渋沢栄一 著・守屋淳 訳 | 筑摩書房、平成22年刊 |
参考文献 | 円の誕生 近代貨幣制度の成立 | 三上 隆三 著 | 講談社、平成23年刊 |
参考文献 | 昭和経済史 | 中村隆英 著 | 岩波書店、平成19年刊 |
参考文献 | 高度成長の時代―現代日本経済史ノート | 香西泰 著 | 日本評論社、昭和55年刊 |
参考文献 | 高度成長 | 吉川洋 著 | 中央公論新社、平成24年刊 |
まず、「日本経済圏の成立の観点から江戸時代の経済生活」についてレポートにまとめること。
次いで、総合基礎教育科目の「経済史Ⅰ・Ⅱ」と「経済学Ⅰ・Ⅱ」とを履修し、それらの内容を的確に理解していることが望ましい。そのことが、「日本経済史Ⅱ」の授業理解を容易にするであろう。また、歴史について深く真摯な関心を持つことは、授業の準備として何より幸いである。併せて、哲学や心理学にも学問的関心を持って、それらの関係書物を渉猟してもらいたい。
また、新聞各紙の経済面を重点的に欠かさず読み通し、この要約作業を反復すること。同時に、日々の経済生活に関心を持つよう心掛けること。これらのことは、経済事象にかかわる正確な知識を自ら広く求め、現行の金銭文化とその構成要素間の相互作用を深く理解する必要を、得心させるであろう。
なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学習時間が必要である。本授業も、その例外ではない。
日本経済の歴史を理解することは、先人が歩み築いてきた経験と知識および文化に対して尊敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。授業時間内とそれ以外の時間を充てて行うべき日々の勉学は、「日本経済史」の授業が学生に対して一貫して欲するところである。それゆえ、授業の履修に際しては、「日本経済史Ⅰ」を必ず受講していなければならない。
なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が進展するよう、併せて要望する。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 自己紹介。授業の課題と前期授業の概括 ―シラバスの解説を中心として― |
第2回 | 戦国時代の組織改革 ―軍事力の経済的要因と「創造的破壊」― |
第3回 | 織田信長と豊臣秀吉の経済感覚 ―中世的性格の残滓とその超克― |
第4回 | 上杉謙信の軍事力とその経済戦略 ―流通ルートの掌握と特産品― |
第5回 | 江戸時代と日本経済圏の出現 ―中国経済圏からの独立を中心として― |
第6回 | 上杉鷹山による米沢藩の財政改革 ―二度の構造改革と「有効需要」の創出― |
第7回 | 我が国の人口推移と経済成長 ―歴史人口学の成果と向後の日本― |
第8回 | 近世都市江戸とその経済生活 ―その巨大化の経済的背景― |
第9回 | 江戸時代における農業とその生産性の向上 ―いわゆる「勤勉革命」(“Industrious Revolution”)について― |
第10回 | 財政悪化と貨幣改鋳 ―荻原重秀と新井白石― |
第11回 | 江戸時代の諸改革 ―「先祖返り」の限界と経世思想の展開― |
第12回 | 日本型資本主義の確立 ―渋沢栄一とその諸業績― |
第13回 | 第一次世界大戦と日本経済 ―経済的諸力の再編成― |
第14回 | 戦時経済とその解体、および世界システムのなかの日本経済 ―戦後復興と高度経済成長― |
第15回 | 日本経済と技術革新 ―日本経済の展望を中心として― |