日本文化Ⅰ-Ⅰ
担当者木村 康平教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングJLT-101

授業の概要(ねらい)

 風土記(ふどき)を読みます。
 風土記は、713年に出された中央政府の命令によって編纂された、日本の各国についてしるされた書物の総称です。当時、日本は60余国に分かれていましたが、現存するものは、出雲(いずも、島根県東部)・播磨(はりま、兵庫県南部)・常陸(ひたち、茨城県)・肥前(ひぜん、佐賀県と長崎県の一部)・豊後(ぶんご、大分県)の五カ国のみです。ただし、ほぼ完全に残っているのは出雲国風土記だけです。また、ほかに逸文(いつぶん、一部のみ残るもの)として数多くの伝承を伝えています。
 「風土記」という名称が当初からあったわけではなく、本来は、地方の各国府から政府に対して提出した役所の報告書です。土地の産物・地味・山川原野の地名の由来・古老相伝の旧聞遺事(昔語り)などを記述していますが、文学・民俗・歴史などの諸分野にわたる研究の対象となるべき貴重な文献でもあります。この風土記の中から、いくつかの説話を読みつつ、古代社会や、古代の人びとのものの見方、考え方についてふれてみたいと思います。
 風土記の原文を訓読したものを読みますが、特に古文の知識は必要ありません。
 春学期は出雲・常陸の両国の風土記を中心に読みます。
 なお、古事記などの史書についても随時説明したいと思います。

授業の到達目標

 古風土記の説話を読むことを通じて、古代の人びとの暮らしや思想について理解することができる。
 古代文学に関する基礎的な知識を理解することができる。
 以上を目標とします。

成績評価の方法および基準

 期末試験(50%)と、平常点(授業への参加度・毎回のコメントシート・小レポートなど。50 %)をあわせて評価します。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書テキスト:プリントを用意します。
 
教科書
参考文献『出雲国風土記』荻原千鶴講談社学術文庫
参考文献『常陸国風土記』秋本吉徳講談社学術文庫

準備学修の内容

・復習として配付プリントをよく読むこと。また、プリントは試験に必要なので保存すること。
・毎回配付するプリントに「質問」がしるされているので、これについて、さらに自分で調べること。
・自分なりに疑問をもつこと。
・さらに発展的に学習することを心がけること。

その他履修上の注意事項

 出席することが大切です。遅刻をしないこと。授業のマナーを守ること(特に、おしゃべりをしない)。授業時のスマホの使用は厳禁。

授業内容

授業内容
第1回風土記とはどのようなものか(風土記の成立と内容)
第2回出雲国風土記―巨人神の国引きと国造り
(国引き・綱引き・ぶらんこ、に共通する関係。綱引きは聖なるものを引くところに始まる)
第3回出雲の語りの臣(おみ)、猪麻呂(いまろ)の復讐(娘を殺したワニへの怒り―海の霊獣とのたたかい)
第4回意宇(おう)郡、忌部(いんべ)の神戸(かんべ、温泉と再生)・嶋根郡加賀の潜戸(くけど)―洞窟と他界(母胎としての洞窟―死と再生の場)・加賀の神埼(日光感精説話とのかかわり)
第5回宇賀(うか)の郷―黄泉(よみ)の坂・黄泉の穴(死者の世界の入り口とは)
第6回仁多(にた)郡、三沢の郷(祟りと鎮魂)・神門(かんど)郡、高岸(たかきし)の郷(鎮魂の呪法とは何か―泣くこと・船遊び・鳥を見ること)
第7回大原郡阿用(あよ)の郷(人を食らう鬼の話・鬼とは何か)
第8回出雲国風土記の神話と古事記の出雲神話の関係について
第9回常陸国風土記―ヒタチの国名の由来(伝承の方法について)
第10回新治郡(にいばりのこおり)の伝承―ニヒバリの地名由来と、女山賊「油置女命」(あぶらおきめのみこと)の正体・聖所としての古墳
第11回筑波郡の伝承―祖神の巡行(富士山と筑波山)と歌垣行事(古代の求婚儀礼・豊穣儀礼)
第12回茨城郡の伝承―ツチクモ(朝廷にまつろわぬものたち、山の佐伯・野の佐伯)
第13回行方(なめかた)郡の伝承―地名の由来など
第14回常陸国風土記のまとめ
第15回全体のふりかえり(・試験)