心理学特殊実験演習Ⅰ
担当者木原 久美子教員紹介
単位・開講先必修  0単位 [心理学科 2017年度以前]
科目ナンバリングSEM-301

授業の概要(ねらい)

本演習では、幼稚園児の遊びの様子を観察し、仲間関係・情動交流・現実と想像・コミュニケーション・学習と遊びなどをキーワードに研究する。研究方法として「観察法」の一種である「実験的観察法=研究目的に沿った状況を意図的に設定して観察を行うこと」を用いた演習となる。年6回の行動観察を予定しているが、本演習では、最初に観察の時期、対象児の属性(年齢クラス・性別)、場面設定についての年間計画を決めるところから始める。観察は役割分担しながら共同して行うことになる。研究テーマに関しては、各自が自由に設定し、学年末にレポートにして提出する。観察は授業のみで終了するが、観察データの分析等は、各自が学内施設を利用して、授業時間外に行うことになる。分析にあたり、何についてどう見るか、視点を持つことが問われる。また、観察室での幼児の行動の特徴を、保育場面と比べて検討する機会として、幼稚園の活動に参加する機会が設けられている。過去の研究テーマ例は、「ごっこ遊びにおけるリーダーシップ」「子どものユーモア」「いざこざのきっかけと解決方略」「一人遊びの意味」「過去20年に亘る子どもの遊びの変容」等である。遊びは人を育てるが、学ぶために遊んでも人は育たない。謎多き遊びを好奇心を持ちながら探究してほしい。

授業の到達目標

観察の研究計画は演習参加者で共同して立案するが、テーマは各自が設定する。研究に際して、幼児への安全を確保しつつ幼稚園と連携しながら観察することを基本姿勢として身に着ける。その上で、以下の手順でレポートを執筆する。先行研究をもとに問題意識をまとめ、観察の視点を整理し、観察方法(観察対象者、観察日時、観察場面の設定、観察方法・記録方法、観察資料の転記方法など)を明記し、観察データの質的(エピソードの詳細な記述:エピソードはどのような基準で選んだのか、全体の流れの中のどこに位置づくのか、などの情報も必要)、量的(分析対象とする行動の数を数える:行動の単位をどう決めるのか。カテゴリの定義や該当例はどのようなものかも明記)分析を行い、考察し(エピソード分析の場合、数で説得できない分、どのように読み手を納得させるのかを考える必要がある)、全体的まとめ・今後の課題を導き出す。

成績評価の方法および基準

文献講読のレポート、観察における役割分担の遂行、他の参加者との共同姿勢、観察のふりかえりと観察したいテーマについてのレポート、出席状況に基づき成績を評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献幼児間の親密性:関係性と相互作用の共発達に関する質的考察高櫻綾子風間書房
参考文献幼児教育のデザイン:保育の生態学無藤 隆東京大学出版会
参考文献あそびのひみつ河崎道夫ひとなる書房
参考文献ごっこあそび:自然・自我・保育実践河崎道夫ひとなる書房

準備学修の内容

本演習では、観察の計画の立案のための文献講読のほかに、観察の準備作業・観察4回を予定している。そのため、参考書をすべて読み込む時間は十分取れないことから、空き時間に読んで知識を得ておく必要がある。これ以外の文献についても検索の仕方は紹介するが、学生自身で検索し、入手しておくことが求められる。

その他履修上の注意事項

観察は共同して行うので、担当者の欠席や遅刻は原則認められない。園や保護者の協力のもとでの実施であることをふまえて、倫理規定を遵守することが求められる。

授業内容

授業内容
第1回本演習の目標と年間計画についてのオリエンテーションを行う。合わせて、幼稚園の保護者に配布する観察参加の承諾書を準備する。「観察法」や倫理規定について学習する。
第2回プレイルームで遊ぶ体験をする。玩具の設定や、カメラの操作方法等について学ぶ。
第3回過去のDVDを視聴して、年齢クラスや性別に応じた遊びの違いについて学ぶ。遊びについての文献を紹介するので、輪番制で講読する。
第4回計6回の観察の役割分担を決める。学生は、研究対象としたい年齢クラスと性別の観察回を選び、その回では担当者として参加する。
第5回「遊びの仲間関係」についての文献講読を行い、観察のポイントを学ぶ。
第6回「遊びの機能」についての文献講読を行い、観察のポイントを学ぶ。
第7回「遊びの発達」についての文献講読を行い、観察のポイントを学ぶ。
第8回研究計画案を立てる。
第9回観察の実施に向けて、部屋のセッティングや備品の補充等準備する。
第10回観察の実施に向けて、役割に応じた行動ができるかチェックする。機器の操作(カメラの操作・映像の保存の仕方・映像の分析の仕方)と観察の流れを把握する。
第11回観察の実施 1
第12回観察の実施 2
第13回観察の実施 3
第14回観察の実施 4
第15回観察のふりかえりと、研究したいテーマについて、発表する(レポート提出)。