民法Ⅰ
担当者内田  暁教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経済学科]
科目ナンバリングCIL-201

授業の概要(ねらい)

 本講義では、われわれの日常生活に密接に関わる法律である「民法」について、とくに民法典第一編「民法総則」に則して概説します。
 我々の日常生活は、様々な法律に取り囲まれています。そして、そのような法律の中でも、特に我々の市民生活を支えているのが、民法という法律です。民法は、普段は空気のようなもので、特に意識されることもありません。しかし、一たび問題が生じれば、我々は嫌でもその存在を意識することになります。例えば皆さんが、マイホームを購入するとしましょう。もし、売主の詐欺によって、欠陥住宅を売りつけられてしまったら、我々はどのような措置を講じることができるでしょうか?あるいは(あまり良い例えではありませんが)皆さんが道を歩いている際に自動車に撥ねられてしまったとしましょう。このとき、皆さんは、治療に掛かった費用等を、誰に、どのようにして請求することができるでしょうか?民法は、このような問題を取り扱う法律なのです(ただし、本講義において説明するように、上で述べたことは民法の規律対象のごく一部にすぎません)。
 このような民法は、実は我々の経済生活にとっても欠かすことのできない法律です。というのも、民法は、私的所有権を保護し、また契約に拘束力を付与しているのですが、これらは経済活動の法的インフラとしての意味を持つからです。例えば、私的所有権が保護されず(つまり、自分の物を盗まれても取り返すことができず)、また契約に法的拘束力がない(つまり、契約を破ってもペナルティがない)としたら、誰が取引などするでしょうか(他人の物を欲しければ、契約などせずに盗んでしまえばよいではないですか)。このような世界では、経済活動はままならないでしょう。この意味で、民法は、経済活動の法的な前提を提供しているといえるのです。
 このように、民法は、我々の日常生活に密接に関わり、また経済活動にとっても欠かすべからざる法律ですから、その概要を心得ておくことには意義があるといえるでしょう。授業を通じて、受講者の皆さんに民法の概要を修得していただくことが、本講義の目標です。 

授業の到達目標

①民法総則の基礎的な内容を修得する。
②①を前提として、実際に生じうる問題を分析することができるようになる。

成績評価の方法および基準

・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(70~100%)
・学期中に小課題を実施した場合、それによる評価(0~30%)
・出席点は、原則考慮しません。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『民法総則』(補訂版、2018年)原田昌和・寺川永・吉永一行日本評論社
参考文献『リーガルベイシス民法入門』(第3版、2019年)道垣内弘人日本経済新聞出版社
参考文献『民法判例百選Ⅰ 総則・物権』(第8版、2018年)潮見佳男・道垣内弘人有斐閣

準備学修の内容

【予習課題について】
 各回の授業時に、次回の授業で取り上げる内容に関する予習課題を提示します。各回の授業は、事前に提示した予習課題を確認することから始めますので、受講者は、指定テキストや参考文献を手掛かりにして、課題に取り組んできてください。

【復習課題について】
 各回の授業時に、その回で学習した内容を確認するための復習課題を提示します。

【学習の進め方】
 学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。また、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

その他履修上の注意事項

・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
・出席点を付けないということは、授業に出席しなくてよいということではありません。受講者は、可能な限り授業に参加するように心がけてください。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション:民法とは何か?民法入門
第2回 意思表示・法律行為1:意思表示・法律行為に関する基礎理論と、心裡留保、通謀虚偽表示、錯誤について
第3回 意思表示・法律行為2:詐欺、強迫、および第三者の保護について
第4回 法律行為の効力1:法律行為の内容の確定と有効要件について
第5回 法律行為の効力2:条件と期限、無効と取消しについて
第6回 権利の主体としての人1:民法における人とは?権利能力の始期や終期について
第7回 権利の主体としての人2:意思能力と行為能力、とくに行為能力の制限について
第8回 代理1:代理とは何か?代理法の基礎理論について
第9回 代理2:無権代理、とくに表見代理について
第10回 時効1:取得時効、消滅時効の基礎理論について
第11回 時効2:時効の完成猶予および更新、時効の援用について
第12回 法人について、基礎的な事項を中心に
第13回 私権の行使に対する制限について
第14回 民法の基本原則と現代的課題について
第15回 民法Ⅰの総まとめと授業内試験