授業は、複数の教員によるチーム・ティーチングで行う。
「学力」は、ある客観的事実を示す事実コトバではなく、学校の授業で、一人ひとりの子どもが身につけるべき能力の知的側面の総体(「学ぶ力」や「学んだ結果得られた力」)を指し示す価値コトバである。「学力」が、多様な定義を許容する価値コトバであることを、具体例で示す。論者によって「学力」の定義や見方が異なるのは、学校における授業の果たすべき役割をどのように限定するのかという問題(学校観、授業観)と密接に絡んでいることを、資料をもとにディスカッションする。2000年代に入って注目されるに至ったPISA、TIMSSや全国学力調査等での、いわゆる「学力低下」「論理性や創造性」、あるいは「関心・意欲」の低下問題等も取り上げ、議論を深める。「子どもが身につけるべき学力とは何か」の問いを中核にすえながら、子どもの生活場面で有機的に働く「生きた学力」を育てる指導方法とその評価方法について多面的に考察し、実践的に活用できる力を養う。
学校で「子どもが身につけるべき学力とは何か」の問いを中核にしながら、時代背景によって、学校の果たすべき役割期待が異なり、そこに学力観の違いが生じる理由があることを理解し、戦後初期から現代に至る学力論争や実践記録等の資料を通して、社会の構造的な変化と学力観の変遷を理解し、自分のコトバで説明する力を身につける。その上で、「現代社会を生きる上で必要な学力とは何か」を構想し、21世紀の学校をリードする学力観をデザインし、指導と実践のできる発信力を修得する。
○A類学生―社会の変化と学力観の変遷が密接に絡み合っていることを理解し、現代において求められる学力観を説明し、それを授業において自ら実践する力を身につける。
○B類学生―戦後の学力観の変遷を概括した上で、現代において求められる学力観を提示し、教育委員会及び学校等において、カリキュラム編成や授業づくりの場面で、指導的役割を果たす力と発信力を身につける。
授業への参加度(30%)、発言や発表内容(30%)、レポート(40%)、等の結果によって、総合的に評価する。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
---|---|---|---|
教科書 | 教室で指示する。 | ||
参考文献 | 揺れる世界の学力マップ | 佐藤学編 | 明石書店、2010年 |
参考文献 | 〈学び〉を問い続けて―― 授業改革の原点 | 佐伯胖 | 小学館、2004年 |
参考文献 | PISAの問題とけるかな | 国立教育政策研究所編 | 明石書店 |
参考文献 | 学力を育てる | 志水宏吉 | 岩波新書、2005年 |
参考文献 | 学力の社会学 | 苅谷剛彦・志水宏吉 | 岩波書店、2004年 |
教養、知識・技能、基礎学力、学力の基礎、基礎・基本、PISA型学力、リテラシー、キー・コンピテンシーといった「学力」問題に深く関わる教育用語の一つ一つを自分のコトバで正確に説明できるように、教育雑誌や新聞の教育欄には日頃から目を通すようにして下さい。
事前に配布する資料、文献等を読んで授業に出席すること。
回 | 授業内容 |
---|---|
第1回 | 子どもが獲得すべき学力とは何か 資料をもとに、知識・技能、教養、情報、学力の概念の違いがどのように議論されているかをグループで話し合い、学力に関わっての論点を整理する。 |
第2回 | PISA型学力とは何か PISAの具体的な問題を考察する中で、そのねらいと特徴を情報化とグローバル化の時代に求められる「リテラシー」としての学力との関係で理解する。 |
第3回 | TIMSS型学力とは何か TIMSSの具体的な問題を考察する中で、そのねらいと特徴を情報化とグローバル化の時代に求められる基礎的「学力」の捉え方について理解する。 |
第4回 | 全国学力調査にみる「学力」とは何か 全国学力調査の具体的な問題を考察する中で、そのねらいと調査結果を検討する。その際、都道府県による結果の特質に留意して検討を進める。 |
第5回 | PISA・TIMSS・全国学力調査にみる「学力」に込められた概念整理 前回までにとり上げてきた、PISA・TIMSS・全国学力調査にみる「学力」に込められた概念の相違点、その調査結果の意味と課題等についての議論を行う。その中で、現代の学校教育において留意すべき、児童・生徒の理解と評価の在り方について考える。 |
第6回 | 学力は子どもが生きていく上で、どのような支えとなるのかを考える。中教審答申での「生きる力」の説明を丁寧に読み解き、その社会的背景について考察する。 ○A類学生は、第15期中教審答申における「生きる力」の記述を調べ、それは、教科指導、特別活動、道徳の時間、総合的な学習の時間の内容をどう組みかえることになるのかを発表する。 ○B類学生は、教科指導、特別活動、道徳の時間、総合的な学習の時間の各々において、「生きる力」を育てる指導上のポイントを発表する。 |
第7回 | 中教審答申(第197号)での「学力」規定について丁寧に読み解き、その社会的背景について考察する。 ○A類学生は、第197号中教審答申における「学力」の記述を調べ、それは、教科指導、特別活動、道徳の時間、総合的な学習の時間の内容をどう組みかえることになるのかを発表する。 ○B類学生は、教科指導、特別活動、道徳の時間、総合的な学習の時間の各々において、「生きる力」を育てる指導上のポイントを発表する。 |
第8回 | 近年の学力規定の変遷を探る。 1990年前後からの「学力」の捉え方の変化を整理し、何が、どう変わってきたのかを明らかにする。その作業とともに、そこで問われ、変更されてきている「学力」の捉え方について、議論する。 |
第9回 | 学習評価の基本的な考え方について 中央教育審議会答申、学習指導要領における学習評価についての基本的な考え方についてグループで検討し、発表する。 |
第10回 | 学習評価の変遷と社会的背景 学習評価の変遷を児童指導要録・生徒指導意要録を基に探り、学習評価の考え方とその社会的背景についてグループで検討し、発表する。 |
第11回 | 学習評価の実際 〇A学生は教育実習における児童生徒への指導事例の分析を通して「評価」を考える。 〇B学生は自身の教育指導における児童生徒への指導事例の分析を通して「評価」を考える。 |
第12回 | 学習評価に関わる課題とその対応 これからの学習評価の在り方と課題について具体的な事例に基づいてグループで検討し、発表する。 |
第13回 | 育成すべき資質能力と学習評価 知識・理解、思考力・判断力・表眼力、学びに向かう力人間性についての指導と評価の在り方とその課題について議論する。 |
第14回 | 確かな学力の定着とその評価について 指導と評価の一体化の意義を具体的な実践事例に基づいて協議し、これからの指導と評価に関わる配慮事項をまとめる。 |
第15回 | これからの時代に求められる学力観と評価観 これまでの授業内容を踏まえて、受講生自身が「これからの時代に求められる学力観と評価」をレポートにまとめ、発表する。 ○A学生は、自己の実践を高度化する視点からレポートをまとめ、発表する。 ○B学生は、学力の向上を総合的にデザインする指導者の視点から、レポートをまとめ、発表する。 |