児童生徒の心の理解とケア
担当者田村 順一, 蒲地 啓子教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [教職研究科]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 授業は、複数の教員によるティーム・ティーチングの形態で行う。
 教育の基礎理論を踏まえた上で、児童生徒理解及び教育相談の基礎的な内容や方法、援助資源アセスメントの実際、関係諸機関との連携・協働等について理解し、日常の教育活動に教育相談の姿勢・態度を活かし、個に応じて適切に指導する実践力の育成を目指す。
 教職、教育の意義、役割を基本として、不登校やいじめの防止、様々な学校不適応対策を軸に、児童生徒を理解する意味や方法についての理解を深め、子どもの心に寄り添ったケアを実践できる能力をケースカンファレンスの模擬実習や相談場面のロールプレイング等実習を通して受講者自ら体験的に理解する。また、児童生徒が抱える課題や困難の背景要因を把握・理解するための心理教育的アセスメント、教育相談・カウンセリングの方法・技法について習得する。
 さらに、学校内における教育相談体制、教職員・保護者・地域との連携・協働の在り方を体験的に学び、特別支援教育やキャリア教育の視点も含め、医療との連携や相談機関等との連携を元に校内においてどのようにマネージメントしていけば良いかについて具体的な指導計画を考察する。

授業の到達目標

 <A類学生>
  ・児童生徒理解及び学校教育相談の基礎的な内容や方法、いじめ等への対応、援助資源アセスメントの実際、関係諸機関との連携・協働等について教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて理解し、日常の教育活動に教育相談の姿勢・態度を活かし実践できる。
 <B1類学生>
  ・児童生徒理解及び教育相談の進め方や、いじめ等への対応、心理教育的アセスメントの技能を教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて高めるとともに、関係諸機関や地域と連携した教育相談体制を組織し、校内のコーディネーターとして、他の教員に指導助言できる。
 <B2類学生>
  ・保護者・地域・関係諸機関との連携・協働を視野に入れた教育相談のあり方について理解を深め、児童生徒理解と教育相談の高度な技能を教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて習得し、学校や教育相談担当教員に対して適切に指導助言することができる。

成績評価の方法および基準

 児童生徒理解、心理教育的アセスメント、教育相談、特別支援教育に関する理解度(報告、レポートなど)(60%)と、ケースカンファレンス演習に取り組む姿勢と意欲(40%)を基に評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特定のテキストは使用しない。
参考文献学校心理学石隈利紀1999 誠信書房

準備学修の内容

 特に参考図書としてあげた「学校心理学」を熟読し、子どもの心を理解するとは?適切な支援を行うのは?教職大学院では、この授業以外にも多くの実践の機会があるので、そこで本講座の内容を反映できるよう努めてほしい。

その他履修上の注意事項

 子どもを理解すると言うことは、教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて、とりもなおさず自分の内面を見つめることでもある。単に知識だけで終わらないよう、日頃から自分の感性を高める努力をしてもらいたい。そのためには、毎回の実技を必ずポートフォリオにまとめ、振り返りをすること。

授業内容

授業内容
第1回 オリエンテーションと、児童生徒の心も問題、様々な学校不適応の現状と課題について。講義及びディスカッションから課題意識を整理する。
第2回 感受性訓練とは
 構成的グループエンカウンターの演習を通して、感受性を研ぎ澄ますことの意義を学ぶとともに、心の動きを実感する演習を行う。
第3回 感受性訓練2
 前回に続き、構成的グループエンカウンターの体験から、その技法と意義を体験的に学ぶ。
第4回 事例研究:最近起こった事例から、その背景にある心の問題を検討する。
第5回 ケースカンファレンスとは
 学校において、児童生徒の理解とケアのためには、教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて組織的な対応が不可欠であることを学び、その基本となるケースカンファレンスを模擬的に体験することで、多様な視点で子どもを理解すること、それを仮説立てて可能性を検討すること、関係諸機関と連携して、どのように改善策を導き出すかを体験的に身につける。
 ・A類学生は臨床心理士等の教育相談に関する外部の専門家によるスクールカウンセリングの実際と、学校におけるスクールカウンセラー等の役割や課題と教師との連携・協働のあり方について理解する。
 ・B1/B2類学生は、教師とカウンセラーの異同、スクールカウンセラーとの連携・協働状況を調べ、スクールカウンセラー活用のあり方と課題を理解する。
第6回 ロールプレイング演習1
 近隣住民からの苦情対応など実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第7回 講義:児童生徒の心の発達と不適応のメカニズム。神経症のメカニズム等について学ぶ。
第8回 ロールプレイング演習2
 発達障害児への対応等実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第9回 ロールプレイング演習3
 非行事例等実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第10回 講義:カウンセリングの技法と心理療法
第11回 ロールプレイング演習4
 性的虐待等実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第12回 ロールプレイング演習5
 いじめ事例や自殺未遂等実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第13回 来談者中心療法について・カウンセリングマインドとは
 ロジャーズの提唱した来談者中心療法を軸に、カウンセリングの理論体系や、教育相談基礎知識について学ぶ。
 あわせて教育相談の意義や方法等の理論的根拠を学び、カウンセリングマインドの本質について理解する。子ども自身が有する自助資源の意義を学ぶとともに、学校内外の人的・物的援助資源をアセスメントする方法と活用する技法を習得する。
 ・A類学生は、学習面、心理・社会面、健康面の心理教育的アセスメントの方法・技法を調べる。
 ・B1/B2類学生は、心理教育的アセスメントに基づいて、指導方針と目標・仮説が立てられ、個々への援助計画およびインクルーシブ教育を踏まえた指導計画を立案していく過程を研究する。
第14回 ロールプレイング演習6
 保護者との連携やクレーム対応等実際の相談場面、初期対応などの場面設定をし、相談の模擬体験を行う。
第15回 まとめ 再び理解するとは
 この授業で学んできたことを振り返り、教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて児童生徒の理解とはどういうことかを再度確認し、実際に学校現場でどう組織的にケアを進めていくかについて具体的な展望を持つ。