知的障害教育研究
担当者神田 基史教員紹介, 中村  晋教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [教職研究科]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 授業は、複数の教員によるティーム・ティーチングの形態で行う。
 知的障害の児童生徒に対する教育の考え方や教育制度の変化を理解するとともに、学習指導要領の改訂と教育課程編成の関連を歴史的に押さえながら、教育内容を検討する。また、昭和40年代に始まった自閉症の教育の考え方や指導内容の変化などの変遷についても理解を深める。主として、学校見学、レポートや発表を通して協議し、研究を深める。
 A類学生は、資料文献や聴き取りなどから現状や課題について分析・検討し、ディスカッションを通じて学習を深める。
 B類学生は、資料文献や聴き取りなどのほか、所属校における教育課程を分析・検討し、具体的な課題解決の方策を考える。

授業の到達目標

 特別支援教育における知的障害教育のあり方が理解できる、知的障害幼児・児童・生徒に適切な指導を進めるために必要な知識技能を習得できる。
 <A類学生>
  ・学校沿革史や研究発表資料から教育内容の変化や教育課程の編成を把握し、更に現在の特別支援学校の教育課程を分析・検討し、新学習指導要領のもとで基本的な方向が理解できる。
 <B類学生>
  ・学校沿革史や研究発表資料から教育内容の変化や教育課程の編成を把握し、更に現在の特別支援学校の教育課程を分析・検討し、新学習指導要領のもとで基本的な方向を理解し、指導助言できる力量を身につける。

成績評価の方法および基準

 個人・グループワークの内容や協議・発表(50%)、レポート(50%)により評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献日本の精神薄弱教育-戦後30年-第2巻 教育の方法全特連編集日本文化化学社 1979年
参考文献新しい教育課程と学習活動Q&A 特別支援教育[知的障害教育]全特長編著東洋館出版 2010年
参考文献教育実践でつづる知的障害教育方法史 教育方法の展開と探究全特連編川島書店 2002年

準備学修の内容

 1 授業の復習を行い、疑問点や新たな課題などについて調べ、追究して欲しい。
 2 文部科学省のHPから新学習指導要領の特別支援教育に関する部分の資料収集をしておくこと。

その他履修上の注意事項

 1 教育問題(知的障害等)に関するテレビ番組、新聞記事に関心をもってほしい。
 2 ボランティア活動、学習指導補助、学校行事の支援などを通して、できる限り障害児と関わる機会を設けて欲しい。
 3 実習校や所属校の教育課程・指導法に関して分析できる視点をもてるように努める。

授業内容

授業内容
第1回 オリエンテーション(講義・協議)
 授業計画  資料・文献等の検索や活用や研究方法を把握する。
第2回 知的障害児の教育課程①(講義)
 わが国の学校制度と知的障害児の教育の歴史を概観し、知的障害教育の教育内容研究の始まりを学ぶ。
第3回 知的障害児の教育課程②(講義・協議)
 ・学習指導要領以前の教育課程について、戦後の小中学校特殊学級の教育課程研究や、議論を学ぶ。
 ・特に、戦後の特殊学級の教育課程をグループ別に調査し、発表・協議を通して、考え方や特徴を理解する。
第4回 知的障害児の教育課程③(講義・協議)
 ・学習指導要領(昭和37年度版)ではじめて示された知的障害の児童生徒のための教育内容や示し方など当時の議論について理解する。
 ・B類学生は、特に、学習指導要領の示し方と教育課程の考え方の議論についてグループ別に調査し、発表・検討し、学校教育法施行規則への示し方などを理解する。
第5回 知的障害児の教育課程④(講義・協議)
 ・学習指導要領(昭和45年度版)において示された生活科の誕生の背景、養護・訓練の示し方について学ぶ。また、初めて示された高等部学習指導要領について学ぶ。
 ・B類学生は、生活科の誕生した背景と指導要領の内容を調査し検討する。また、他の障害における養護・訓練と知的障害教育における養護・訓練の考え方の違いなどを明らかにし、理解を深める。
第6回 知的障害児の教育課程⑤(講義・協議)
 ・学習指導要領(昭和54年度版)では、養護学校義務制が実施された背景を受け、重度重複障害への対応について理解する。
 ・A類学生は、養護学校義務制の実施による背景を理解し、学習指導要領の示し方を把握する。
 ・B類学生は、養護学校義務制の実施による背景を理解し、当時の重複障害の実態等を考えながら学習指導要領の示し方や教育課程を把握する。
第7回 知的障害児の教育課程⑥(講義・協議)
 ・学習指導要領(平成元年度版)で示された高等部の職業教育の科目等の内容を把握し、現在の職業教育の実情を理解する。
 ・A類学生は、高等部への進学率の背景や卒業後の進路などをふまえ、職業教育の科目等が設けられてきたことを理解し、教育課程の変化を把握する。
 ・B類学生は、高等部への進学率の背景や卒業後の進路などをふまえ、職業教育の科目等が設けられてきたことを理解し、教育課程の変化を把握するとともに、所属校等の高等部教育課程を分析する。
第8回 知的障害児の教育課程⑦
 学習指導要領(平成10年度版)では、高等部の教育内容の示し方が改められたこと、養護・訓練が自立活動に変わったことなどを理解するとともに、現在の各校における教育課程を分析し、課題を把握する。
第9回 知的障害児の教育課程⑧ *特別支援学校見学
 ・特殊教育から特別支援教育に変わったこと、新学習指導要領が示されたことを受け、各学校において改善する必要がある事項等への対応を整理し、今後の方向を検討する。
 ・A類学生 特別支援学校の教育課程編成について、要覧などの資料から現状と課題を理解する。
 ・B類学生 特別支援学校の教育課程編成について、要覧などの資料から現状と課題を理解する。特に、在籍校の教育課程を分析し、課題をまとめるとともに改善の方向を検討する。
第10回 複数の教育課程編成の実際と課題(演習)*特別支援学校(または特別支援学級学級・通級指導教室)見学
 ・特別支援学校では複数の障害種別を設置することができることから、児童生徒の実態に即した多様な教育課程編成ができる現状がある。そこでの課題を明らかにし、解決の方向を学ぶ。
 ・A類学生 複数の教育課程を編成する背景となる児童生徒の実態や、編成のための基本的な考え方、指導内容などを理解する。
 ・B類学生 複数の教育課程の実施上の課題を明らかにし、課題解決に向けての検討をする。
第11回 自閉症の教育の流れ(講義)
 自閉症の児童生徒への教育対応の歴史や指導内容の変化について理解する。
第12回 自閉症の教育の実際
 ・特別支援学校(知的障害)や小中学校特別支援学級(自閉症)・通級による指導における自閉症の教育内容の特色を知るとともに、課題を把握し、望ましい教育の方向を学ぶ。
 ・A類学生 自閉症の教育の指導内容や指導方法の特徴や指導上の課題などを、資料などから理解する。
 ・B類学生 自閉症の教育の実際から指導内容や指導方法を整理し、望ましい方向を検討する。
第13回 知的障害児の進路指導(演習)
 ・特別支援学校(知的障害)における進路指導の内容や特色を理解し、今後の望ましい進路指導のあり方を検討する。
 ・A類学生 特別支援学校の進路指導の内容や、卒業後の進路についての実態や課題を把握する。
 ・B類学生 特別支援学校の進路指導の内容や、卒業後の進路についての課題から、今後の望ましい方向について検討する。
第14回 知的障害児の卒業後の支援(講義・演習)
 ・特別支援学校(知的障害)高等部卒業後の進路状況を把握し、卒業後の支援について、生活・労働・福祉・生涯学習・医療などの観点から検討する。
 ・A類学生 学校教育終了後の進路状況を把握し、卒業後の学習支援や生活支援などについての課題を理解する。
 ・B類学生 特別支援学校卒業後の進路状況から、所属校等における卒業後の学習支援体制などの現状と問題点を明らかにする。
第15回 まとめ
 ・特別支援学校の学習指導要領と特別支援学校(知的障害)の教育課程の変遷についてまとめるとともに、新学習指導要領の内容を検討し、課題解決の方向を探る。
 ・特に、B類学生は、所属校等の実際的な課題解決の方向をさぐる。