個の学びを支援する授業方法と授業研究
担当者小山 惠美子教員紹介, 清水 静海教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [教職研究科]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 授業は、複数の教員によるティーム・ティーチングの形態で行う。
 個々の児童生徒を理解し、集団の中で一人ひとりを生かして学びを高めていく授業の方法と評価のあり方について究明し、創意ある授業実践力を育成する。授業を通して個を見取るために、ワークショップなどのグループ活動の他に、A類学生(B類学生も含む)を中心に模擬授業や、実践提案を行い、授業記録や学習の成果物などを基にして実践における問題点や改善点、個への対応を、教職の意義、役割を踏まえて具体的に検討できるようにする。特に評価に関しては、評価に関する基礎理論を踏まえ、個に応じた評価基準を設定し、児童生徒役、指導者役共に模擬授業にいかすようにする。
 また、新たな指導方法、指導形態、評価方法等について教育の基礎理論を踏まえて理論的に整理し、それを指導資料等にまとめる協働的な学びを通じて、学びを深め、かつ授業実践のリーダーとしての素養を高めていく。

授業の到達目標

 個の学びを支援するためのさまざまな指導方法、授業づくりの方法を教科、領域、教材に応じて獲得する。
 <A類学生>
 「授業力」を構成する要素や学校における授業力向上の取り組みについて教職の意義、教育の基礎理論を踏まえて理解し、自己の実践を適切に評価し、改善することができる。授業記録を作成し、B類学生とともに分析する。
 <B1類学生>
 授業記録等の分析から、授業力向上に関する課題を明らかにし、若手教員の育成を追体験することができる。これまでの所属校における実践を振り返り、A類学生のための示範授業を行う。また、指導・助言することができる。
 <B2類学生>
 授業力向上のための地区の先進的事例や学校における課題を教育の基礎理論を踏まえて整理し、組織を活かした新たな取り組みを主幹教諭等に対して指導・助言することができる。

成績評価の方法および基準

 授業への取り組みや参加の仕方 50%/演習により作成した資料への貢献度 30%/自己評価、個人内評価 20% など

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書※特定のテキストは使用しない。
参考文献よくわかる教育評価田中耕治編ミネルヴァ書房 2010年
参考文献よくわかる授業論田中耕治編ミネルヴァ書房 2007年 など

準備学修の内容

 (予習)
  ・模擬授業の計画及び演習の準備を行うとともに、チームでの活動に積極的に参加する。
  ・所属チームの授業記録を作成する。
 (復習)
  ・実習校での授業実践などをもとに成果を検証する。
  ・資料をまとめ、ポートフォリオを作成する。 など

その他履修上の注意事項

 ・A類学生(B類学生を含む)は、実習校での授業計画を立て、授業を行う。その取り組みを本授業において活用する。
 ・B類学生は、演習のチームのまとめ役をし、A類学生に対する支援を行う。
 ・実習で授業を欠席する場合は、「実習日誌」などを代替えとして提出する。
 ※受講生の数や要望に応じて、授業の順番やテーマは若干の変更をすることがある。

授業内容

授業内容
第1回「個の学び」と「授業方法」に関するオリエンテーション(授業研究と授業力の向上)
 「個の学び」に視点をあて、実習校や所属校、地区の実態における研究授業等への参加をもとに、児童生徒の成長と教師の手立てを視点にした授業研究の意義と方法、教師の授業力向上の重要性について教育の基礎理論を踏まえて理解を深める。
第2回「個の学び」への支援と評価
 現職教員学生、学部卒学生それぞれの「個の学び」への支援を具体的に検討し、児童生徒の学習活動における支援と評価の重要性について理解する。
A類学生:「個の学び」への支援を具体的に検討し、児童生徒の学習活動における支援と評価の重要性について理解する。
B1類学生:「個の学び」への支援を具体的に検討し、所属校等における自身の経験知に基づく支援のあり方を含め、若手教員に向けて解説したり、理解を深めたりすることができる。
B2類学生:「個の学び」への支援を具体的に検討し、地区の実態を踏まえた学習支援における評価の重要性を実践、理論の両局面から理解し、解説することができる。 
第3回 「指導と評価」の意義と役割①(評価の理論と歴史)
 学習指導における指導と評価の意味について教職の意義を踏まえて理解し、他者に説明できるように指導資料等にまとめる。「評価規準」「評価基準」「ルーブリック」などの概念や「活動としての評価」について、具体的な評価方法や評価の問題点について教育の基礎理論を踏まえて理解を深める。さらに、演習のためのグループ編成をする。
第4回指導と評価の意義と役割②(問題解決評価観)
 3回目までの学びをもとに、これからの評価についての見通しをもつ。
※以後の内容は、学生のプレゼンテーションと模擬授業が中心となる。各回の内容は、順不同であり、模擬授業を行う際の個の学びを支援するテーマとなりうる内容であり、個の学びを支援する方策として、B類学生が適宜取り上げてプレゼンテーションする内容として位置付ける。
第5回個の学びを支援する授業力を高めるための方策①(模擬授業の検討)
 個の学びを支援する模擬授業の検討をチームで行う。
第6回個の学びを支援する授業力を高めるための方策②(模擬授業における個の位置づけ)
 模擬授業を実施する際に、実習校や所属校、地区の実態としてどのような支援が必要な児童生徒がいるのか、具体的にどのような手立てを計画的に指導計画に組み込むのか、などについて各チームで検討する。
※以後の( )内は、必要に応じて取り上げ、模擬授業のテーマや解説する内容としていかす。
第7回演習1-①(学校における個の学びを支援する授業力向上の取り組み)
 校内研修会の在り方と意義について情報交換し、校内でのよりよい研修方法について理解する。
第8回演習1-②(授業改善推進プラン)
 現任校や実習校での「授業改善推進プラン」の紹介をもとに、各自自己の課題を明らかにし、授業改善推進プラン等を作成し、プレゼンテーションやディスカッションを通じて、授業力の向上を図る。
・A類学生は、自己の授業改善推進プランを作成する。例えば、インターネット等により授業改善プランにかかる資料を集め、書き方を紹介したり、活用したりする。
・B1類学生は、A類学生への指導助言とともに、課題解決のための校内研修を検討する。
・B2類学生は、授業改善推進プランを作成するために必要な「視点」を検討し、A類学生、B1類学生のプレゼンテーションに対して指導助言する。 など
第9回演習2-①(資料活用の方法)
 効果的な指導方法・指導技術、教材・教具の活用について検討し、その活用方法を習得する。
第10回演習2-②(指導形態の工夫)
 学校の授業で行われている指導形態について、教科の特性や児童生徒の発達段階などの面から整理し、その効果的なあり方について検討する。
第11回演習3-①(教科等の関連を図った個の学びを支援する指導方法のあり方)
 道徳、外国語活動、総合的な学習の指導時間の授業と教科学習との関連について理解を深め、合科的指導や関連を図った指導の方法を学ぶ。
第12回演習3-②(授業づくりの視点と指導法)
 導入場面の在り方、発問や指示、反応予測、板書の仕方などについての理解を深め、指導法の改善を図る。
第13回演習4-①(全員参加の授業づくり)(個に応じた教師の協力的指導)
 個に応じた授業のあり方について理解を深めるとともに、協働作業〔少人数・習熟度別学習、TT等も含む〕の検討を通じて、指導方法・指導技術を身につける。
第14回演習4-②(学校における個を支援する評価活動)(学習感想と評価、活動の見取りと評価)
 学校における評価場面(授業中、単元末、学期末、学年末など)と評価方法を整理し、それぞれの意義や課題について検討する。
 ※8回の演習では、A類学生(B類学生を含む)4人が模擬授業を行い、授業記録を作成する。翌週に授業に関する分析や省察を授業記録を通して提案する。演習4は、2月に帝京大学小学校において実際に授業を実施する。
第15回「確かな学力の育成」と評価
 テスト問題〔TIMSS、PISA、日本の学力調査問題など〕の検討を行い、個の学びを支援し、「確かな学力」の育成につながるテストの作成や実施に係るマネジメントを教職の意義や教育の基礎理論を踏まえて理解する。
・A類学生は、学力テストなどのテスト問題を実際に解き、実習校の実態を踏まえてその意図や問題点の検討を行う。
・B1類学生は、学力テストの意図や問題点を把握し、A類学生の意見を取り込みながら所属校の実態を踏まえてグループ討議を進行する。
・B2類学生は、地区の実態を踏まえたテスト問題作成にかかる課題や改善策をまとめ、説明できるようにする。