担当者 | 佐藤 光宣教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [経営学科] | |
科目ナンバリング | EDE-202 |
経済生活の進展は経済学に関する知識の成長と蓄積をもたらした。また、そうした経済学の知識は、経済生活の進展に何某かの影響を与えた。実際、経済的難局に対処するための処方箋は、経済学という学問の知識の体系に基づいて提示された。かくして経済学の知識は、経済政策の立案と実行に寄与することとなった。このような観点をもって、学生を経済学の歴史の世界に導くことが、本授業の狙いである。
経済学史Ⅱの授業は、重商主義の時代から現今に至るまでの経済学の流れを概括することから開始する。授業では幾多の経済学を、それが生まれ出た社会的環境、自然的環境および文化的環境という背景に留意しつつ取り上げる。その順序は、前期に取り上げた古典学派以降の経済学のうち、その派生物としてのマルクス経済学を手始めに、限界主義経済学やアメリカ制度主義へと辿る。
現今の資本主義という金銭文化段階(pecuniary stages of culture)にある諸社会は、極めて不安定な様相を呈している。学生には、この経済社会のなかで生き抜く力が以前にも増して求められている。加えて、我々は、問題解決能力を涵養することはもとより、何が問題なのかを見極める能力そのものが問われている。それゆえ授業の到達目標は、経済学の学問としての歴史に慣れ親しむことを通じて、経済学者たちから生きる姿勢を学び取ることである。そこで授業の到達目標の細目を、次のように定める。
(1)経済学の学問としての流れを説明できること。
(2)経済学の主要な学派同士の連関を理解できること。
(3)経済学の根底に置かれた特定の人間性の概念と中心問題を理解できること。
(4)限界主義経済学とアメリカ制度主義経済学の類型を明確に判別できること。
(5)現今の経済社会について、批判的かつ建設的観点を得られるようになること。
後期期末試験の点数を中心に、学習到達度調査小テストと平常点によって成績を決定する。その配分基準は次の通りである。
期末テスト60%/学習到達度調査小テスト20%/平常点20%
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | テキストは使用しない。プリントを配付する。参考書は下記の通りである。 | ||
参考文献 | A History of Economic Thought, 1954 | Eric Roll | London: Faber & Faber Ltd. |
参考文献 | 経済学説史 | 隅谷三喜男 訳 | 有斐閣、上下巻、平成14年刊 |
参考文献 | The Evolution of Economic Thought, 1963 | Jacob Oser | New York: Harcourt Brace & World |
参考文献 | A History of Economic Thought, 1977 | William J. BarberThorstein Veblen | New York: The Macmillan Company |
参考文献 | 経済思想史入門 | 稲毛満春・大西高明 訳 | 至誠堂、昭和48年刊 |
参考文献 | The Theory of the Leisure Class, 1899 | Thorstein Veblen | New York: The Macmillan Company |
参考文献 | 有閑階級の理論 | 小原敬士 訳 | 岩波書店、昭和36年刊 |
参考文献 | The Theory of Business Enterprise, 1904 | Thorstein Veblen | New York: Charles Scribner's Sons |
参考文献 | 営利企業の理論 | 小原敬士 訳 | 岩波書店、平成8年刊 |
参考文献 | 経済理論と低開発地域 | G.ミュルダール (著) 小原 敬士 (翻訳) | 東洋経済新報社、1959 |
参考文献 | 反主流の経済学 | G.ミュルダール (著) 加藤 寛 (翻訳) 丸尾 直美 (翻訳) | ダイヤモンド社、昭和55年刊 |
参考文献 | Imperial Germany and the Industrial Revolution, 1915 | Thorstein Veblen | New York: Macmillan |
参考文献 | 制度主義者たちと限界主義経済理論 | 佐藤光宣 著 | 多賀出版、昭和63年刊 |
まず、「ソースタイン・ヴェブレンの生涯と著作」についてレポートにまとめること。
次いで、総合基礎教育科目の「経済学」を履修し、その内容を的確に理解していることが望ましい。同様に、「経済思想史」は必須の授業科目と言わねばならない。また、歴史について深く真摯な関心を持つことは、この授業の準備として何より幸いである。さらに、世界史と経済史とを同時に学ぶことも準備学習となる。本授業の履修に際しては、前期学期授業の「経済学史Ⅰ」を必ず履修していることを要する。
なお、授業2単位週90分間の授業については、週180分以上の授業時間以外の学習時間が必要である。本授業も、その例外ではない。
経済学の学問としての歴史を理解することは、先人たちの知的格闘を通じて建設された経済学に対して畏敬の念を深めるに違いない。学生は授業に臨んでは、経済学的および歴史的な観点から物事を考える態度で聴講し、読み書きすることを望む。授業の内外を通じて行われるであろう勉学は、この授業が学生に対して最も欲するところである。
なお、毎回の授業に際して学生は勉学のための秩序を乱すことのないよう、まず要望する。また、一貫した知的環境のなかで授業が成立するよう、併せて要望する。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 自己紹介。授業の内容と予定および前期授業の概括 ―シラバスの解説を中心として― |
第2回 | 経済学の学問としての歴史とその展望 ―偉大な建設者たちと経済学の主要な学派― |
第3回 | ドイツ歴史学派(German Historical School)の伝統と経済社会学者の活躍 ―資本主義をめぐるゾンバルトとウェーバー― |
第4回 | ゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(Georg Wilhelm Friedrich Hegel)の観念論哲学 ―その著『精神現象学』と弁証法― |
第5回 | カール・ハインリッヒ・マルクスの経済学 ―その著『資本論』と資本主義経済の基本構造― |
第6回 | ルドルフ・ヒルファーディング(Rudolf Hilferding) ―独占資本主義段階と金融資本の運動― |
第7回 | 限界革命と快楽主義心理学 ―苦痛(pain)から快楽(pleasure)への心理学的重点の移動― |
第8回 | 限界主義学派(Marginalist School) ①ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons) ―その生涯と業績― |
第9回 | 限界主義学派(Marginalist School) ②ウィリアム・スタンレー・ジェヴォンズ(William Stanley Jevons) ―限界効用逓減の法則の発見と『経済学の理論』― |
第10回 | ソースタイン・ヴェブレン(Thorstein Veblen)とアメリカ制度学派 ―『有閑階級の理論』(The Theory of the Leisure Class, 1899.)を中心として― |
第11回 | ヴェブレンの制度の概念とウィリアム・ジェームズ(William James)の習慣 ―『心理学原理』(The Principles of Psychology, 1890.)をめぐって― |
第12回 | ヴェブレンと近代経済社会 ―顕示的消費と金銭的競争(pecuniary emulation)― |
第13回 | ウェズレー・C・ミッチェル(Wesley Clair Mitchell)の経済学 ―景気循環理論をめぐって― |
第14回 | ジョン・メイナード・ケインズ(John Maynard Keynes)と大恐慌 ―ヴェブレンの「社会的購買力」とケインズの「有効需要」― |
第15回 | カール・グンナール・ミュルダール(Karl Gunnar Myrdal)と貧困 ―偏見の社会的成長と累積的因果関係の原理― |