租税法Ⅱ
担当者古市 将人教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [経済学科]
科目ナンバリングPUL-302

授業の概要(ねらい)

 なぜ、税金は割り勘ではないのだろうか。国の歳出に必要な税額を一人当たりに換算すれば税金は一つで十分になり、租税法という講義はずいぶん簡単になる。しかし、現実はそうなっていない。現実の租税制度は複数の税金で構成されている。この問題をどう説明すべきだろか。その上で、「なぜ、私たちは政府に税金を支払うのだろうか」という質問を考えてみてほしい。この疑問に対して、憲法に書かれている「納税の義務」を持ち出すのが簡単な答え方であろう。つまり、「なぜ、このルールに従わないといけないのか」という質問に対して、「それが義務だから」と答えることになる。さて、どう考えるべきか。
 以上の問題に対して、政府による公共サービスの財源調達のために税金が存在すると説明する人もいるかもしれない。実際、私たちが日々利用する道路・公園・保育園・小中学校・介護施設は、国や地方自治体が建設・整備しており、その財源は租税によって調達される。しかし、考えてみると私たちは税金を支払った見返りとして特定の政府のサービスを受け取ってはいない。個別の公共サービスを利用するたびに、税金を支払うことはない。つまり、お店では商品とお金が一対一の対応関係をもつが、納税額と納税者の受け取る公共サービス量は一対一の対応関係をもっていないのである。
 税と公共サービスの関係を出発点として、税制を理解するために必要な基本的な制度・理論・歴史を本講義では扱っていく。特に、本講義では、付加価値税と日本の地方税制を中心に扱う。

授業の到達目標

 以下の4点が本講義の到達目標である。
 (1)地方税を評価するための考えを理解し、それを説明できる。
 (2)付加価値税の仕組みを理解し、税額を計算できる。
 (3)地方消費税の意義を理解し、それを説明できる。
 (4)住民税の意義を理解し、税額を計算できる。

成績評価の方法および基準

 講義中に提出してもらうリアクションペーパー(30%)、講義後課題(30%)、試験の点数(40%)によって基本的に評価する。ただし、以下の加点措置を実施する。
 (1)加点レポートを提出できる。提出者にはレポート分の点数が上記の点数に加点される。
    *このレポートの提出は任意である。未提出であっても減点はされない。
 (2)講義中の教員の質問に答えることで、加点される場合がある。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書講義ノートを配布する。参考文献と講義との対応関係は講義にて指示する。有用な参考文献は適宜紹介する。
参考文献『租税法概説 第3版』中里実・弘中聡浩・渕圭吾・伊藤剛志・吉村政穂編有斐閣、2018年。
参考文献『よくわかる税法入門 第13版』三木義一編有斐閣、2019年。
参考文献『地方消費税の経済学』持田信樹・堀場勇夫・望月正光 有斐閣、2010年。
参考文献『私たちはなぜ税金を納めるのか 租税の経済思想史』諸富徹新潮社、2013年。

準備学修の内容

 初回講義時に、各回の講義概要、各回の到達目標とキーワードなどを整理した資料を配布する。講義の冒頭で、前回講義の復習(約5~10分)をする。そのため、配付資料を参考に、キーワードの定義を確認しノートに整理する、講義ノートの例題・練習問題を自分で解く、到達目標を確認するといった、復習と予習を履修者はすることが望ましい。予習の際には、次回の授業概要、到達目標、キーワード、関連する例題をよく読むことが望ましい。復習の際には、講義で扱った重要用語の定義や到達目標を確認した上で、例題と練習問題をもう一度自分で解くことが望ましい。特に、講義で扱った税の計算問題を自分で解くことは、講義の内容を理解するのに必要である。

その他履修上の注意事項

 予備知識のない学生にも理解できるように講義する。ただし、租税法Ⅰを履修済みの学生はより効率よく学習することができるだろう。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション:授業のガイダンスと基本用語について
第2回租税の意義と基本用語
第3回租税原則論と地方税原則論
第4回日本の地方税体系について
第5回消費税の理論と制度(1):なぜ、一般消費税が台頭してきたのか
第6回消費税の理論と制度(2):付加価値税とは何か
第7回消費税の理論と制度(3):日本の国税消費税の仕組み
第8回消費税の理論と制度(4):消費税と複数税率
第9回地方消費税の理論と制度(1):消費地と税収帰属先の一致について
第10回地方消費税の理論と制度(2):日本の地方消費税について
第11回これまでの講義の復習と補足
第12回地方所得税としての住民税
第13回地方環境税:地方公共団体の独自課税と地方環境税
第14回国際課税(1):概論
第15回国際課税(2):国際課税とグローバル・タックス
 ※ 進度などの関係で、一部変更する場合がある。