心の健康教育に関する理論と実践
担当者元永 拓郎教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [文学研究科 臨床心理学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 公認心理師の4つの業務のうちのひとつに、心の健康に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供を行うこと、とあり、心の健康教育が主要な業務であると位置づけられている。臨床心理士においても、その4業務のひとつである地域支援において、心の健康教育が重要であることは言うまでもない。心の健康教育は、心理教育、メンタルヘルス教育、患者教育など、さまざまなスタイルの総称であり、対象者の心の健康の保持増進のための、教育や情報提供の営みの総称ということができるであろう。
 心の健康教育の実施は、個別面接の中でなされることもあれば、関係者に対する支援の中で行われることもある。小グループ対象の双方向のワークショップのようなものもあれば、多数の聴衆を前にした講演会として実施されることもある。公認心理師や臨床心理士の臨床実践活動に連動して、包括的なサービスとして展開されることも把握しておきたい。
 この授業では,心理支援のさまざまな場面で展開される心の健康教育の具体的実践を学ぶと同時に、各院生が実習を行っている心理臨床センター及び学外実習施設において,心の健康教育がどのように展開されているかその実際の理解を深めることとなる、それらを通して、実際に臨床心理士及び公認心理師にとって必要な心の健康教育に関する知識・技能の臨床的理解を深め、(1)コミュニケーション、(2)心理検査、(3)心理面接、(4)地域支援 等の支援を安定して行うことにつなげていく。
 また、心理に関する支援を要する者等の理解とニーズの把握及び支援計画の作成、心理に関する支援を要する者へのチームアプローチ、多職種連携及び地域連携、公認心理師としての職業倫理及び法的義務、リスク管理への理解もふまえ、心の健康教育を効果的にまた継続性を持って企画立案、実施するための基本的技術の習得をめざし、心の健康教育の模擬的実施を行い、その中で生じる課題や検討点を把握し、大学院修了後に、公認心理師そして臨床心理士として業務を行う実際の場面において、心の健康教育が効果的に企画立案、そして実施、評価が行えることにつなげていきたい。

授業の到達目標

1)心の健康教育の基本的理念や特徴、臨床実践上の意義について説明できる
2)各分野における心の健康教育の実際や役割について説明できる
3)心の健康教育の具体的企画立案の方法を学び、その運用や評価についての基本的スキル身につけ、模擬的に実施できる
4)心の健康教育が、心理支援の全体的な展開において、どのような機能や役割を持つか理解し、その効果的な運用について意見を述べることができる

成績評価の方法および基準

授業の到達目標に照らし合わせて,事例の発表方法や討議への参加などを総合的に評価する。
プレゼンテーション40%、小テスト20%、レポート30%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書心の健康教育 [公認心理師実践ガイダンス4]野島 一彦 岡村 達也 (監修), 松本 剛 (著), 宮崎 圭子 (著)

木立の文庫
参考文献家族教室のすすめ方後藤雅博 編金剛出版
参考文献わかりやすい生活技能訓練東大生活技能訓練研究会 編金剛出版
参考文献いじめへの解決志向プログラムスー・ヤング 著 黒沢幸子 監訳金子書房
参考文献いのちの教育近藤卓 著実業之日本社

準備学修の内容

 心理臨床センターや実習先、また大学院各講義の中で、心の健康教育と関連する事項を整理して、その心の健康教育としての意義や課題、将来への発展性などについて、自分の意見をまとめておく。また各プレゼンテーションに関する参考論文を事前に読み込み、グループの運営方法についても丁寧に企画する。プレゼンテーション当日のディスカッションでその論文も参考に意見を述べることができるようにしておくこと。

その他履修上の注意事項

 心の健康教育は、それ自体が単独で行われる場合もあるが、通常は、個別支援やコンサルテーションといった種々の心理支援の中で行われる性質のものである。その意味では、ターゲットとなったフィールドや支援の対象者に対して、どのような支援プログラムを展開するとよいかというより大きな意味での支援計画とその効果的な実施が重要となる。その支援プログラムの中で、心の健康教育がどのように展開されるかについて、充分な議論をしていければと考える。その意味では、修士1年次の「臨床心理基礎実習」はじめすべての講義演習実習科目と連動した形でこの講義は展開される。

授業内容

授業内容
第1回オリエンテーション、心の健康とは、心の健康教育の概要、心の支援活動と健康教育
第2回心の健康教育の技法、心理教育プログラム、ロールプレイ、グループワークの方法
第3回プログラム理論とその評価、心の健康に関する政策の組み立て方
第4回自殺対策と心の健康教育
第5回認知症と心の健康教育
第6回メンタルヘルスリテラシー教育
第7回保健医療分野の健康教育
第8回児童福祉分野での健康教育
第9回障害児・者と心の健康教育
第10回教育分野での心の健康教育
第11回司法・犯罪分野の心の健康教育
第12回産業・労働分野の心の健康教育
第13回IT依存・ゲーム依存と心の健康教育
第14回災害支援と心の健康教育
第15回まとめ、心の健康教育の今後の展開