生活の医学Ⅱ
担当者宮本  亘教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [スポーツ医療学科]
科目ナンバリングBAM-102

授業の概要(ねらい)

 Common Diseaseとは、日常的に高頻度で遭遇する疾患、有病率の高い疾患のことをいう。その中には、メタボリック症候群とよばれる生活習慣病から、認知症や脳卒中などの加齢が関連する疾患、さらには喫煙が関連する慢性閉塞性肺疾患など様々な疾患が含まれる。また現代社会における個人にかかるストレスが引き起こす疾患もある。これらCommon Diseaseに関して、新聞やテレビの報道で見聞することはあっても、それよりもさらに深くつきつめて学ぶ機会はなかなかない。この授業を通して、将来的に学生が関わる可能性が高いCommon Diseaseに関する正し知識を身に着けていただきたい。
 最近いたるところに自動体外式除細動器をみかける。これは、ヒトの急変時にすぐに使用することにより、命を助けることができる可能性を高めるためである。しかしながら、その適切な使用方法を理解していなければ急変時に何もできない。帝京大学八王子キャンパス内にも、自動体外式除細動器がいくつか設置されている。この授業を通して、勇気をもって自動体外除細動器を使うことができれば、失われずにすむ生命があることを知っていただき、是非使うための知識を学んでいただきたい。
 また、最近問題になっている医学的なテーマ(救急車の誤った使われ方、過労死)についての授業も行う。医学に興味のある学生に履修していただきたい。

授業の到達目標

我々が日常生活において遭遇することが多いCommon Diseaseの代表的な疾患について、その概念と原因、診断法、治療法、予後について解説できる。
ストレスの多い現代社会において問題となっている過労死について、そして救急医療現場において大きな役割を担っている救急車の問題点について解説できる。
倒れているヒトを発見した場合、そのヒトに救急蘇生が必要か否かの判断が行える。
救急蘇生の手順および自動体外除細動器の使い方について解説できる。

成績評価の方法および基準

成績評価は第15回目に筆記試験(資料持込不可)を行い、その結果を基に行う。受験資格獲得には14回の講義(15回目は試験)の6割以上の出席を課す。各授業の最後に、課題を提示する。その課題は作成して提出する必要はないが、筆記試験はその課題内容を中心に作成する予定であるため、授業後にきちんと復習をしていただければ、試験合格は決して難しくはない。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書特になし
参考文献

準備学修の内容

授業資料(power pointで作成)を配布し、それに則って授業を進める。基本的に次回授業の資料を先だって配布するので、予習として授業を受ける前に一度目を通し、興味を持った内容に関しては自身で、インターネットなどを利用して検索すると授業をさらに興味深く受けることができる。
授業において重要なポイントを強調して解説するので各自授業資料に書き込み、復習として自宅で必ず授業資料に再度目を通していただきたい。

その他履修上の注意事項

授業中の私語は厳禁、目に付けばその場で退室を命じる。その場合、今後の当科目の履修継続は認めない。我々の生活に深く関わる医学の知識を身につけたい学生に是非履修していただきたい。

授業内容

授業内容
第1回高血圧:よく耳にする『高血圧』について、その病態と診断法、治療法について学ぶ。また、『高血圧』を放置した場合、どのような害が身体に生じる可能性があるかについても理解する。
第2回メタボリック症候群:メタボリックとは代謝という意味である。代謝という言葉は広い意味を持つため、メタボリック走行群という病名を耳にしたことはあっても、その内容をきちんと理解している学生は少ないであろう。この授業からメタボリック症候群の概念について学ぶ。メタボリック症候群に含まれる疾患、その病態と診断法、治療法について理解する。
第3回不整脈:稀ではあるが、スポーツ活動中に突然死が生じることはよく知られている。その原因の1つに不整脈がある。『不整脈』という単語を耳にしたことがある学生は多いと思うが、そのほとんどは『不整脈』をきちんと解説できないであろう。この授業から『不整脈』に関する正しい知識を身に着ける。
第4回COPD:慢性閉塞性肺疾患とは慢性的な呼吸障害を引き起こす病気の総称である。この授業から、呼吸器のしくみと慢性閉塞性肺疾患の概念、診断法と治療法について学ぶ。また慢性閉塞性肺疾患は喫煙と深く結びついているため、喫煙がもたらす害についても理解を深めていただく。
第5回うつ病:うつ病による自殺が社会問題となっている。その背景には、現代日本社会がつくりだす、個人へのストレスが大きく関与している。このストレス社会においてうつ病患者が急増している。その反面、うつ病という病名が与える誤解から、うつ病を正しく理解している学生は少ないと思われる。この授業から、うつ病に関する正確な病態を学ぶ。
第6回認知症:2012年度の調査によると、日本における認知症の有病率は約15%であった。今から6年前のデータであるため、現時点ではその割合はさらに増加していることが容易に予測できる。認知症は加齢に伴い、誰でも発症する可能性がある。しかし、認知症に対する正しい知識がなければ、患者は勿論のこと、周りの家族も不幸になる。この授業から、認知症に対する偏見のない正しい知識を身に着ける。
第7回脳卒中:脳梗塞という病名を聞いたことがない学生はいないだろう。脳卒中とは脳血管が詰まったり破れたりして生じる病気であり、高齢化に伴い、その発症は増加している。そして発症からいかに早く治療を開始することができるかによって、患者のその後の運命が大きく変わることになる。この授業から、脳卒中の発症要因と初期症状、治療のタイミングとその予後について学ぶ。
第8回睡眠障害:睡眠は身体にとって必要不可欠であるが、様々な原因から睡眠障害が生じる。正常な睡眠システムと不眠症の原因、症状、その対処法について学ぶ。睡眠障害は、ストレス社会においてその患者数が増加の一途をたどっており、学生が今後出ていく社会は睡眠障害と密接な関係にある。そのため、睡眠障害に対する知識は必ず有益となるであろう。
第9回耳、鼻、喉の病気:目下、コロナウイルス感染が世相をにぎわせているが、微生物が体内に侵入する経路は鼻や口から喉に至るケースが最も多い。そのため、鼻、喉や耳のCommon Diseaseは比較的頻度が高い。この授業から、耳、鼻、喉のありふれた病気についてその症状と診断法、治療法について学ぶ。
第10回救急蘇生法①:救急蘇生法の総論を解説する。倒れている人を発見した場合、その人に救急蘇生を適用すべきか否かに関する判断、適用すべきと判断した場合に行うべき動作と手順に関して学ぶ。
第11回救急蘇生法②:自動体外式除細動器の使い方を学ぶ。帝京大学八王子キャンパス内にも、自動体外式除細動器は設置されている。それは、倒れた人に対して救急蘇生が必要となった場合、すぐ使うことを目的とされている。帝京大学の学生は、もれなく救急蘇生ができるようなっていただきたい。
第12回歩行と靴の問題:我々は当たり前のように歩いているが、ヒトが歩行能力を身に着けるに至った進化の過程がある。さらに靴を履くことが常識となっているが、履物にも歴史があり、その理解を深めることにより、我々が履いている靴の問題点が浮き彫りになる。この授業から歩行と靴の問題点を学ぶ。
第13回救急車:我々が普段道路で目にする救急車は、救急医療において重要な役割をはたしている一方で、大きな問題を抱えている。この授業から、救急車の歴史と問題点について学ぶ。
過労死:働き方改革が叫ばれるようになった昨今、その背景に現代社会における過労死の問題がある。今後学生が社会に出るにあたり、過労死の問題はもっと深刻になってくることが予想される。過労死と正しい働き方について学ぶことは、今後の社会を着ていく上で有用かつ必須である。
第14回整形外科領域の救急疾患:整形外科領域で緊急処置の必要となることが多い、開放骨折、骨盤骨折、切断肢・指について、その治療の現状について理解する。
第15回試験