環境衛生工学
担当者宮川 宗之教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [スポーツ医療学科]
科目ナンバリングEIA-301

授業の概要(ねらい)

 環境衛生工学は、環境や健康に有害な化学物質等を適切に処理して環境への放出を防止し、環境を清浄に保つとともに、有害化学物質曝露による健康障害を防ぐための技術である。本講義では、化学工学的な技術の解説に重点をおくのではなく、化学物質による健康障害を未然に防止するための枠組み、すなわち化学物質の健康リスク評価とリスク管理を重点に解説する。リスクという概念やその評価方法について知ることは、職場に限らず一般環境における基準値の設定や規制を考えるための基本、すなわち安全・安心を担保するための考え方を知ることとなる。この科目は、有害化学物質を取り扱う工場等、様々な有害因子が存在する事業場においても衛生管理業務を担当することが可能な第一種衛生管理者の資格取得の要件とされていることから、職場環境に存在する有害因子から労働者を保護するための方法が中心となる。作業管理・作業環境管理・健康管理や職場の衛生管理体制についても解説する。
 注)この科目は、労働安全衛生法で定められている国の資格「第一種衛生管理者」免許の取得に必要な科目の一つであり、「第一種」の免許に必要な有害化学物質管理に関して詳しく解説する。常時50人以上を雇用する事業場では、免許を受けている等、資格を有するもの(常勤者)から「衛生管理者」を選任し、職員の衛生管理に関わる業務を担当させる必要がある。健康スポーツコースでは要件となる9科目(生理学Ⅰ、生理学Ⅱ、救急処置法、衛生学・公衆衛生学、精神医学、産業労働心理学、環境衛生工学、労働関係法令Ⅰ、労働関係法令Ⅱ)を履修すると、試験免除で免許取得が可能。学生便覧参照。

授業の到達目標

 ・化学物質による健康障害リスクの評価について基本的考え方を他者に説明できる。
 ・化学物質の有害性の種類を理解し有害性情報伝達システムの概要を他者に説明できる。
 ・職場における化学物質等による健康リスクの管理について概要を他者に説明できる。

成績評価の方法および基準

 評価は原則100%期末試験で行なう。化学品の有害性情報伝達システム、健康障害リスク評価の基本、職場の衛生管理体制について、知識と理解度を問う。不適切な授業態度(私語など他の学生の学習の妨げとなるような問題行動)があった場合は、確認・記録をして評価時に10点の減点をする

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『基準値のからくり』2014村上道夫・他講談社ブルーバックス
参考文献『化学物質のリスク評価がわかる本』2012化学物質評価研究機構丸善出版
参考文献『労働安全衛生法のはなし(第3版)』2016畠中信夫中災防新書
参考文献『やさしい化学物質のリスクアセスメント』2017沼野雄志中央労働災害防止協会

準備学修の内容

 大学のウェッブファイルサーバーで配付する授業資料をダウンロードして印刷し、授業時に持参すること。授業全体をカバーする教科書はないので配付する資料(パワーポイント・参考文献等)によく目を通し、不明な点は授業中に質問すること。試験前には配付資料をよく読み復習するとともに、憶えておくべき重要次項は確実に知識として修得すること。これらの学習には合計30時間以上が必要と考える。衛生管理者免許を取得しようとする場合は上記参考書を購入し通読しておくことが望ましい。

その他履修上の注意事項

 化学物質による健康問題について常に関心を持つよう努めること。衛生管理者免許取得を希望しない者にも一定の知識の修得と化学物質による健康障害防止についての基本的な考え方を理解することは、市民として生きる上でも重要なものと考えられる。このような知識の獲得は、安全・安心な社会をつくる上でも必要であり、興味をもって学習してもらいたい。授業ではできる限り前方の席に着席するとともに与えられた情報を自分の頭の中で整理する(能動的に講義を聞く)習慣を身に着けてもらいたい。授業中の質問も歓迎する。

授業内容

授業内容
第1回 環境衛生工学とは:地域や職場における有害化学物質曝露による健康障害の発生防止対策の基本について学ぶ。
第2回 職場における有害因子と職業病:職業性疾病の歴史と現状について学ぶ。
第3回 化学物質の危険有害性:化学物質の危険有害性の種類について学ぶ。
第4回 毒性発現と曝露レベル;量-影響関係・閾値等について学ぶ。
第5回 化学物質による健康障害リスクの評価と管理の基本:基本的な考え方と評価基準値設定の手順について学ぶ。
第6回 化学物質のリスク評価1:国が実施するリスク評価について学ぶ。
第7回 化学物質のリスク評価2:事業者が実施するリスク評価について学ぶ。
第8回 化学物質の危険有害性情報の伝達(GHS)1:急性の影響に関わる次項について学ぶ。
第9回 化学物質の危険有害性情報の伝達(GHS)2:慢性の影響に関わる事項について学ぶ。
第10回 化学物質の危険有害性情報の伝達(GHS)3:混合物に関わる事項について学ぶ。
第11回 物理因子によるリスク:暑熱・寒冷、騒音と難聴、振動障害について学ぶ。
第12回 作業環境の測定と評価1:曝露限界値(管理濃度・許容濃度等)について学ぶ。
第13回 作業環境の測定と評価2:測定デザインと測定法の基礎について学ぶ。
第14回 作業環境の測定と評価3:管理区分の決定と対策について学ぶ。
第15回 復習とまとめ。