担当者 | 横手 拓治 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [日本文化学科] | |
科目ナンバリング | SOC-202 |
わが国の出版文化のうち、子ども向けの出版活動は児童書・児童雑誌が担いました。日本の児童文学は大正時代に「お伽噺から文芸へ」と展開しはじめ、大正末期から昭和初期にひとつの頂点へ達したといわれます。そのなかで、雑誌『赤い鳥』が幅広い作者を集め、浜田広介、小川未明、坪田譲治、新美南吉といった、現代まで読み継がれる作家が名作を著しました。
『銀河鉄道の夜』『グスコーブドリの伝記』『やまなし』等で名高い童話作家・宮澤賢治の登場も、こうした背景を抜きにしては考えられません。賢治は詩人、教育者、科学者などさまざまな相貌を持ちますが、本講では、童話作家の面に焦点を当てて内実を検討していきます。その一方で、出版者や出版状況の様相を解説しながら、同時代の他の作家・作品を採りあげ、日本児童文学の黎明期を多面的に見ていきたいと思います。
本講ではまた、関連するアニメ作品や朗読資料の紹介を組み合わせていきます。
講師は書籍・雑誌の編集者として出版文化に関わる活動を長年にわたって務めてきましたが、SLBA(学校図書館図書整備協会)の選定図書となった児童書3冊、宮澤賢治について3冊の自著(筆名・澤村修治)があり、それらで得た知見を併せ、児童文学初期の歴史を解説していきたいと思います。
日本の児童文学、そのはじまりについて、作者と作品を通じて必要な知識を修得する。
出版文化の重要な要素である子ども向け出版について、初期の歴史における様相を理解する。それを通じて、「子どもが持つ関心」への向き合い方について学修する。
世界的な評価を得ている宮澤賢治の人物像を理解し、賢治童話の成立と発展について知識を修得する。
宮澤賢治の童話作品の全体像を把握し、作品の魅力について説明できる能力を養う。
出席率(50%)、筆記試験(30%)、受講態度(20%)を総合して行う。
授業を理解するために必要なレジュメを、事前にLMSにて示すので、読んでおくこと。
採りあげる童話作品を、事前にLMSで示す場合があり、読んでおくこと。
特になし。
要点をまとめた授業用データを、パワーポイントで講師が毎回示す。
回 | 授業内容 |
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第1回 | ガイダンスおよびプロローグ:明治期の児童向け読み物(巌谷小波「こがね丸」他) |
第2回 | 「お伽話」から「文芸」へ① 浜田広介(作家について、「泣いた赤鬼」他作品について) |
第3回 | 「お伽話」から「文芸」へ② 小川未明(作家について、「赤い蝋燭と人魚」他作品について) |
第4回 | 「お伽話」から「文芸」へ③ 坪田譲治(作家について、「風の中の子供」他作品について) |
第5回 | 鈴木三重吉と『赤い鳥』 |
第6回 | 新美南吉(作家について、「ごん狐」他作品について) |
第7回 | 宮澤賢治① 1918年夏と1921年――童話作家初発の2説 |
第8回 | 宮澤賢治② 童話作家の成長――農学校教師時代と『注文の多い料理店』 |
第9回 | 作品論『グスコーブドリの伝記』『風の又三郎』 |
第10回 | 賢治アニメの鑑賞① ますむら・ひろし『グスコーブドリの伝記』 |
第11回 | 作品論『ポラーノの広場』『セロ弾きのゴーシュ』 |
第12回 | 賢治アニメの鑑賞② 高畑勲『セロ弾きのゴーシュ』 |
第13回 | 宮澤賢治③ 晩年の作家、そして『銀河鉄道の夜』 |
第14回 | 賢治アニメの鑑賞③ 杉井ギザブロー『銀河鉄道の夜』 |
第15回 | まとめの講義と筆記試験 |