日本文化研究(出版)Ⅰ
担当者横手 拓治
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングSOC-201

授業の概要(ねらい)

 日本の小説は明治以来、21世紀の現代へ至るまでさまざまな展開を見せてきました。本講義では、著名な作品の本文を紹介しつつ、開化期から村上春樹までをコンパクトにまとめた安藤宏『日本近代小説史』をテキストに、関連映画や音声資料、ドキュメンタリー映像も紹介しながら、日本の小説の特徴を捉えるよう導いていきます。実際の作品に関しては、文章・文体の解説を多めに行い、表現法についても一定の知見も養ってもらうえるようにしていきます。
『日本近代小説史』は図版を多用した通読しやすい一冊本であり、中立的解釈を前提にしたこともあって、多くの大学でテキストに使われています。いわゆる純文学だけでなく、推理小説・SF・時代小説など大衆文学について筆が及んでいるのも同書の特徴といえます。「近代小説と映像文化」の項もあります。講師は同書の担当編集者であり、編集制作に関わってきました。
 本講義では、同書を読みながら必要に応じて周辺の事情を説明していきます。作品と作家だけでなく、出版者や時代ごとの背景も併せて講義することで、わが国出版文化の様相を解説します。なお本講では、同書の扱わなかった21世紀の同時代小説をプラスして述べていきます。
 これらを併せ、出版文化の一翼を形成した日本の小説に関して、幅広い知見を養ってもらいたいと思います。 

授業の到達目標

 すでに膨大な文化遺産となっている日本の小説について、その全体像についての知識を、『日本近代小説史』を基に修得する。
 近代小説の展開を見ていくことで、それを支えた日本の出版文化について知見を深める。
 「言葉で世界をつくること」である小説に登場した、日本語におけるさまざまな表現を味わうことで、文章についての可能性を理解する。
 日本の近現代史の歩みとも重なる日本小説の展開史を学ぶことで、対外的に日本的なものについて発信する能力の一端を養う。

成績評価の方法および基準

 出席率(50%)、筆記試験(30%)、受講態度(20%)を総合して行う。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書日本近代小説史安藤 宏中央公論新社(中公選書)
参考文献

準備学修の内容

 授業で扱う『日本近代小説史』の範囲を読んでおくこと。
 授業を理解するために必要なレジュメを、事前にLMSにて示すので、読んでおくこと。

その他履修上の注意事項

 特になし。
 要点をまとめた授業用データを、パワーポイントで講師が毎回示す。

授業内容

授業内容
第1回 ガイダンス
第2回 文明開化期の小説
第3回 独自の自然観と美意識 ~樋口一葉、泉鏡花、国木田独歩など
第4回 自然主義リアリズム
第5回 夏目漱石と森鷗外
第6回 耽美派と白樺派 ~谷崎潤一郎、武者小路実篤など
第7回 芥川龍之介、そしてプロレタリア文学(小林多喜二など)
第8回 モダニズムと探偵小説、歴史小説 ~ダダイズム、江戸川乱歩など
第9回 戦争と小説
第10回 無頼派、戦後派から第三の新人へ
第11回 社会派推理小説とSF ~松本清張、星新一など
第12回 女性文学、在日文学、沖縄文学、土着性の探求
第13回 小説と映画、村上春樹
第14回 ポストモダン、現代(21世紀)の小説
第15回 まとめの講義と筆記試験