担当者 | 宇多 浩教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | PHE-104 |
行動規範論Ⅰでは、人間のもつ道徳性とその根底にあるものを探究しましたが、行動規範論Ⅱではおもに、1970年代以降に展開された、正義論にかかわる諸問題を考察していきます。
倫理的な問いかけは、個々の人間の性格や行為に対して問いうるだけでなく、「社会のあり方」に対しても問うことができます。「社会」とは互いに利害の衝突しあう人間どうしが協働するために作り上げたものですが、個々の利害の調整をするために、さまざまな社会制度が存在しています。そこで問題になるのは、このような社会制度が倫理的に見て「正しい」「公正である」といえるのは、何を根拠にしているのか、ということです。たとえば、「階級制度」などの政治的に不平等な制度や、富の極端な格差を許容する社会制度は「公正である」といえるのでしょうか。そうであるとすれば、あるいはそうでないとすれば、それはなぜでしょうか。
講義では、このような社会の「公正さ」とその根拠について、さまざまな正義論の学説を紹介しながら、考察していきたいと思います。
講義の後半では、正義論の延長として、グローバルな次元での格差・不平等に関する倫理的な議論を紹介していく予定です。
・正義論の主要な学説について、そのエッセンスを自分の言葉で簡潔にまとめることができる。
・授業で紹介した学説を踏まえながら、不平等や格差の問題に対して、自分なりの議論を論理的に展開することができる。
・平常点(約40%)、中間試験(約30%)、期末試験(約30%)によって総合的に評価する予定。
・平常点はほぼ毎回の授業で課す小課題によって評価します。
・5回を超えて欠席した場合は、原則として受験資格はないものとみなす(試験を受けても不可(D)扱いとなる)。
・定期試験は論述形式とし、資料等の持ち込みは認められない。
・定期試験は中間と期末の2回を受験する必要がある。どちらか1つでも受験しなかった場合は、原則として不可(D)となる。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 教科書:特になし | ||
参考文献 | 『倫理学の話』(2015年) | 品川哲彦 | ナカニシヤ出版 |
参考文献 | 『これからの「正義」の話をしよう』(2010年) | M・サンデル | 早川書房 |
参考文献 | その他の参考文献は、授業時に適宜、紹介します。 |
・基本的にほぼ毎回、授業の内容に関連する小課題を課します。それを次回までに行ってくる必要があります。
前期と同様、基本的に毎回授業に出席し、授業内容を理解していなければ、試験で及第点をとることはできません。授業を聞いて、授業内容を理解しようとする意欲のある学生の受講を期待しています。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 講義の概要 |
第2回 | 正義論の系譜 ― おもにアリストテレスの議論に沿いながら、「正義」とはどのようなことを意味するのか、について考察する。 |
第3回 | ロールズの正義論(1) ロールズの功利主義批判を踏まえながら、彼が正義論においてどのような問題を探究しようとしているのか、について見ていく。 |
第4回 | ロールズの正義論(2) 「原初状態」、「無知のベール」といったロールズの基本概念を紹介しながら、彼が「正義の原理」をどのような仕方で導こうとしたのか、について見ていく。 |
第5回 | ロールズの正義論(3) ロールズ正義論の中心にある「格差原理」に焦点をあて、その原理がどのような背景に支えられているのか、について見ていく。 |
第6回 | リバタリアニズム(1) リバタリアニズムの基本的な考え方を紹介するとともに、ノージックの唱える「最小国家論」の特色とその問題点について考察する。 |
第7回 | リバタリアニズム(2) リバタリアニズムの中心にある「正義の権限理論」の内容を確認するとともに、「課税は強制労働である」というノージックの見解について検討する。 |
第8回 | 潜在能力の平等 ― アマルティア・センのケイパビリティ・アプローチを確認し、潜在能力の平等とは何を意味するかを考察する。 |
第9回 | まとめと中間試験 |
第10回 | グローバルな倫理学(1) グローバルな倫理学の導入として、世界における格差・不平等の現状を確認する。 |
第11回 | グローバルな倫理学(2) グローバルな規模での貧困・不平等の問題について、「救命ボートの倫理」やリバタリアニズム、近親者優先倫理の立場から考察する。 |
第12回 | グローバルな倫理学(3) グローバルな規模での貧困・不平等の問題について、シンガーの功利主義やカントの倫理学の立場から考察する。 |
第13回 | グローバルな倫理学(4) グローバルな規模での貧困・不平等の問題について、ポッゲの正義論の立場から考察する。 |
第14回 | グローバルな倫理学 (5) ヌスバウムのケイパビリティ・アプローチの観点から、グローバルな格差・不平等の問題を考察する。 |
第15回 | まとめと期末試験 |