担保物権法
担当者内田  暁教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [政治学科]
科目ナンバリングCIL-206

授業の概要(ねらい)

 本講義では、民法典第二編第七章から第十章の内容に、民法典に規定のない担保物権を加えた、講学上「担保物権法」と呼ばれている分野について学びます。
 皆さんがお金を貸すとして、何を重視するでしょうか。おそらく、「この人はちゃんと借りたお金を返してくれるのか?」という点を重視するのではないでしょうか。これは皆さんに限らず、世の金融機関においても同じことです。彼らは、ビジネスでお金を貸しているのであって、決して慈善活動をしているわけではありません。お金を貸す際には、必ず、「この人はちゃんと借りたお金を返してくれるのか?」、すなわち、お金を貸す相手を「信用」できるのかという点を慎重に検討します。お金を貸すというのは、相手を「信用」するということなのです。金融機関は、信用に値する人にしかお金を貸してくれないのです。
 それでは、反対に皆さんがお金を借りる立場であったとしたら、どうでしょう。どのようにすれば、金融機関からお金を融資してもらえるでしょうか。上に述べたことを踏まえれば、金融機関に「信用」してもらえればよい、ということになります。そこで問題は、どのようにすれば「信用」を得られるのか、という点に収斂します。
 結論を先取りしていえば、借りたお金は絶対に返すという保証=「担保」を相手に与えればよい、ということになります。本講義では、このような「担保」のうち、物的担保(物を担保に供する方法)と呼ばれるものについて学びます。

授業の到達目標

①担保物権法について、基本的な知識を修得する。
②併せて、債権総則、契約総論、契約各論、物権法の知識を確認し、より確かなものにする。
③本講義で修得した知識を活かして、社会に生起する問題を分析・説明できるようにする。

成績評価の方法および基準

・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(70~100%)
・小課題を課した場合には、その内容による評価(0~30%)
・出席点は、原則として考慮しません。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『担保物権法』(第2版、2019年)松井宏興成文堂
参考文献『民法Ⅲ』(第4版、2020年)内田貴東京大学出版会
参考文献『担保物権法(第4版、2017年)』道垣内弘人有斐閣
参考文献『民法判例百選Ⅱ(第8版、2018年)』窪田充見・森田宏樹有斐閣
参考文献『担保物権法』(第2版、2019年)田髙寛貴・白石大・鳥山泰志日本評論社

準備学修の内容

【予習課題について】
 授業時に、次回の授業で取り上げる内容に関する予習課題を提示します。
 受講者は、指定テキストや参考文献を手掛かりにして、課題に取り組んでください。

【復習課題について】
 授業時に、その回で学習した内容を確認するための課題を提示します。
 学期末の試験は(小レポートを課す場合には、それも)、この復習課題をもとに実施します。

【学習の進め方】
 学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。また、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

その他履修上の注意事項

・受講時には六法(『ポケット六法』や『デイリー六法』などの小型のもので結構です)を必ず持参してください。六法の引き方に慣れることも、法学部での学習の大事なポイントです。
・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
・先に書いたように、「担保物権法」は「物権法」や「債権法」の知識を前提としています。いうなれば、担保物権法は民法(財産法)学習の集大成です。したがって、本講義の受講者は、本講義の前に、あるいは本講義と併せて「物権法」や「債権総則」、「契約法」といった講義について受講していることが望ましいでしょう。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション 本講義において学習する担保物権法について概観する
第2回 担保物権の種類と担保物権の性質と効力について学習する
第3回 抵当権の意義と性質および効力について学習する
第4回 抵当権に基づく物上代位について、基本的な要件や効果について学習する
第5回 抵当権に基づく物上代位について、判例等を用いて各論的な学習をする
第6回 抵当権と利用権(特に法定地上権)について学習する
第7回 抵当不動産の第三取得者の保護の在り方について学習する
第8回 共同抵当や根抵当について学習する
第9回 質権の意義と種類について学習する
第10回 質権の効力について学習する
第11回 留置権の意義と効力について学習する
第12回 先取特権の意義と種類、効力について学習する
第13回 譲渡担保という非典型担保について学習する
第14回 仮登記担保および所有権留保という非典型担保について学習する
第15回 本講義のまとめと授業内試験