スポーツ方法実習(野外活動)
担当者倉品 康夫
単位・開講先選択  1単位 [現代ビジネス学科]
科目ナンバリングHSS-201

授業の概要(ねらい)

  《本キャンパスの「地の利」"locational advantage"を活かす》帝京大学は「自然が残る都市近郊」にあり、豊かな多摩の身近な自然を生かした『フィールドワーク』です。この学習資源を最大限に活用して野外活動を実習します。
《学生が指導者になる為の指導》学生が他の学生を指導して教員がそれを指導(スーパーバイズ)します。この重層的な教育システムは安全性も高めます。「生涯スポーツとしてキャンプ」を指導する方法を実習します。
《地の利を活かしキャンプ指導者となる為に》
フィールドには大学最寄りの多摩センター駅からバスで10分の近さなので足繁く通います。
《日程》
基礎授業、講義・試験以外、実習本行4日(必修)とスタッフ養成等の『グループワーク』の準備学修2~4日(選択必修)を確保し行います。
《実施プログラム》
 ①キャンプ(野外生活技術)、②ハイク・周辺谷戸山及び高尾山(登山技術)、③ロゲイニング(地図読図周辺競歩)、④冒険プログラム(木登り、ロープワーク)、⑤里山体験(田植え・間伐等野外教育)⑥野外食育プログラム(野外生活技術)等を複合して行います。

上記実施プログラム概要及び留意点、
 ①野外生活技術:学生が指導者になる為の指導がねらいなので基本が実践できて、教えられるスタッフを養成しつつ実習します。
 ②ハイク:里山の谷戸山でも登山技術は習得しますが、それ以外にも良質な大自然にふれることも課題です。そこで、大学から程近い、保全された裏高尾の自然も探勝します。
 ③周辺ロゲイニング:広い谷戸のポイントを携帯のカメラで撮影し、地図を作りポイント『グループワーク』で周ります。
 ④冒険プログラム:いざという時や将来の災害時に困らないよう、危機を想定した「楽しく身につける冒険体験」として、小学校で導入されているPA的ハイエレメントのロープコースの設置及び指導を実施します。
 ⑤里山体験(田植え・間伐):地主の好意で田植えを二枚行います。また、里山の手入れとして竹等を切ることもあります。
  プレ田植として、水田の中で相撲をとる、サッカーをする。また、安全に木に登ってみます。
 ⑥野外食育プログラム:耐火煉瓦によるピザ釜を組み立てて、調理方法を検討、『討議』します。
※質問すること:疑問点はできるだけ、共有して、その場で解決できればと考えます。それがリスクマネジメントにも貢献します。
※以下「谷戸(やと)」とは、丘陵地が浸食されて形成された谷状の地形を指します。
 以上

授業の到達目標

 2.1【当事者として主体的に活動することができ、交互に仲間を指導することができる】
 移動距離が短い、全日程日帰り、費用も安く抑えた、「安近短」のキャンプです。里山百選に選ばれた小野路に位置する谷戸で、東京とは思えない山奥に足しげく通いつつ、ピアサポート・仲間同志で指導しあい、「学生が主体的に活動すること」が最大の特徴です。※注意点:そのためには学生が担当プログラムの全体指導ができるように事前に個別的指導を受けることが前提になります。
 2.2【裏山に登れことができる・常に「こんなとこ、どうやってやるの…」に挑戦することができる】
 合言葉は「裏山に登れ」。これは石巻市の大川小学校からの教訓です。2011年3月11日の東日本震災以降、戦後最大の歴史の断絶と転換点から、さまざまな観点における、自助・共助みんなが生き残れる国民的サバイバルについて考えることもキャンプの目的です。キャンプ場は里山の谷戸の田んぼにあり、周囲を谷戸山に囲まれています。谷戸までの往復には、斜面を上り下りします。
 その他、常に「こんなこと、どうやってやるの…」の想定外に挑戦します。目標は「想定外という言い訳」を無くすです。
 2.3【ふりかえりにおいて様々な考えを述べることができる】
 2.4【参考文献を読み問題提起・質問等ができる】
 2.5【担当プログラムの指導案を書くことができる】
 2.6【リスクを間違って見積もる根拠のない自信、思い込みを客観的に分析できる】※メタ認知とも云います。
 以上、これらが行動指針キーセンテンスです。
 また、本キャンプは、参加学生自身がキャンプ場の施設作成に関わり、当事者意識や多様な役割行動能力、キャンプの創造・運営能力を養います。
 誰かがやるのを期待するではなく、自分達でやって楽しむ・体験する。これが、今後の生涯スポーツとしてのキャンプの重要なテーマです。将来、教育現場で学年キャンプ、クラスキャンプを実践する際・地域でキャンプをする(災害による「キャンプ活動」をふくむ)時に使える力は「主体的に為す事によって学ぶ」実践によってのみ育まれると考えます。
 その際、指導者が使ってはいけない言葉は「団体行動だから」。使う概念は「和、責任、自立、共生、共有」となります。
 そもそも、キャンプとは「団体行動」とは何かを根本的に身体活動を通じて理解させることです。
 学校現場等で「手垢ついた」の常套句をイニシエーション(「つかみ」)の段階で教条的に使いません。迂遠(遠まわり)ですが「ふりかえり」の段階で体験から「手垢のついた言葉」である「団体行動」から解放された明確化や概念化の段階が聞けるような仕組み作りが目標と考えます。

 野外生活技術指導法(ブッシュクラフト)及びリスクマネジメントにおける具体的到達目標の例:
鋸(のこぎり)の使い方及び安全の指導ができる。火の起こし方及び安全の指導ができる。火を起こして、米を炊くこと及び安全の指導ができる。本結びを結ぶことができる指導ができる。エイトノットの結び方及び応用(人の身体に結んで引き上げるロープワーク)を子どもに教えることができる。

成績評価の方法および基準

成績評価の方法および基準
 上述の主体性・当事者性を参与的に観察して評価します。観察する具体的内容及び態度は以下のようです。
・主体的に活動しつつ(※やる気・エンゲージメントとも云う)、仲間とも交流して作業を進めている。
・仲間と挑戦、チャレンジしている姿勢(※自己効力感を高める行動)。
・安全に配慮した行動をして(※自分の行動を客観的に分析している)、仲間に伝達している。
・質問力:わからないことが解る問題解決能力。

 レポートについて
 実習二日目にレポートテーマ設定及びグループ作りを『討議』します。キャンパスからの近さを活かし、学生諸兄姉はキャンプ場に足しげく通いながら、仲間とともにテーマについて考え下さい。その成果を、設定したテーマ毎に最終日の講義及び試験の日に『プレゼンテーション』します。その際の質問、『ディスカッション』を重視します。※質問して、討議するのは発表者に対する「礼儀」です。
 レポートの全体テーマを事前に発表します。それに沿って設定したグループ毎のテーマに取り組みます。その進捗作業を中間的にも相談・討議しつつ進めます。
 また、参考文献を読みキャンプ中に問題提起・質問等ができることも評価の対象です。また、毎活動後の「ふりかえり」「自己変容の語り」も重視します。SNSを利用して「ふりかえり」を共有する場合もあります。
 評価の配分割合:目標到達度60%・レポート20%・ふりかえり及び質問等20%

レポートテーマ予定
「大学キャンプ指導者養成の問題点」

 以上




教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書2012、『スポーツビジネス概論』  黒田次郎・倉品康夫ら叢文社
教科書※以下、2.4で述べた生涯スポーツについて言及した資料を倉品康夫 cinii で検索して読んでおくこと。
教科書 『野外活動における冒険プログラムの役割』1997、 ※目標:冒険プログラムの構造を説明できる。日本体育学会
教科書 『ポール・ウォークを考える:ストックを使って上半身を活用し積極的に登山・野外活動を行なう』1993、 ※目標:登山技術として杖の使い方を説明できる。日本体育学会
教科書 『スポーツを育て支えるスポーツ推進委員の在り方とは:「新たなスポーツ文化」ネットワークを創る試み』2012、 ※目標:地域での生涯スポーツの普及促進について自分なりの展望を持てる。日本体育学会
教科書『《小乗》スポーツを大乗化する試み:スポーツの負の部分が顕在化する昨今、改めてスポーツが人々の幸せに貢献するあり方を考える』2014、日本体育学会『スポーツと仏教と倫理 : スポーツだけがすごく高貴なもの、高等なものという発想を止める』2015、 ※スポーツイベントの熱狂について自分の意見をもつことができる。日本体育学会
教科書www.camping.or.jp/JJCS192015.pdf
「キャンパス近くの自然を生かした活動…」『キャンプ研究No.19』pp61-66 ※レポートを書く際に言及すること。
公益社団法人日本キャンプ協会
教科書http://www.camping.or.jp/JJCS232020.pdf
もしくは
日本キャンプ協会 キャンプ研究 vol.23
で検索して下さい。
《実践報告》
野外で『うまい飯を炊く』調理法の検討 ー飯盒炊飯を負の歴史から考えるー
『キャンプ研究No.23』2020.pp41-45
《地域研究》
地域研究:里山キャンプを考える
『キャンプ研究No.23』2020.pp47-51
倉品、 宮内麻里香、柏木舞、 滝島慎、露木拓実

※今回の実技の導入、共通理解のレポートです。このレポートの通読、共有が前提になります。
公益社団法人日本キャンプ協会
参考文献

準備学修の内容

 【予習】前述、生涯スポーツについて言及した資料を 倉品康夫 cinii 等で検索して読んで、キャンプ中の評価の対象である問題提起・質問等ができるように準備すること。
 【復習】各実習及び準備学習・調査で全体の「ふりかえり」をするが、さらに学習者自身が自らの知識や体験、感情などを見つめ、その学び(意味を構築するプロセス)を、反映できるようにすること。

その他履修上の注意事項

※注意:
後述の7. 各回の授業内容にある
5/10(日),5/17(日),6/7(日),6/14(日),6/21(日),7/18(土)の日程は全員出席の授業日程です。
それ以外に以下の授業時間外の個別指導及びグループワークの準備学習・調査があります。
【授業時間外の準備学習・調査】
 学生が指導者となり、教員がその指導をスーパーバイズする(見守り、問題を発見し、必要なら介入し、協議し助言する)という重層的な指導システムとするため、以下の候補日程、9:00~16:00の時間に準備学習・調査を師弟同行(どうぎょう:教員と学生が教育的実践を通してともに学びあう、励ましあう) 的に実施する。※下記日程に2回以上参加すること(例年全部出る人もいます)。
内容:キャンプ場整備、トイレ作り、機材チェック、周辺探索、食料予算計画 田んぼ。キャンプ場整備、薪作り、ブッシュクラフト、周辺探索、リスクマネジメント。高尾山事前調査予定、コース確認、リスクマネジメント。田植え準備、薪作り、ピザ釜、ブッシュクラフト、木登り・ハイエレメント作成、ロゲイニング準備。
 
候補日程: 5/24(日),5/30(土),5/31(日),6/20(土)
※以上、計画は目標実現の為にある。ゆえに目標実現の為に予定は変更される場合があります。
※集合場所は多摩センター8番バス乗り場付近
 【会計・実習参加費6,000円の予算計画,執行及び収支報告】
 【自然に負荷をかけない活動】
 ゴミは出さない、すべて持ち帰る。
 【保険について】
 リスクマネジメントの観点から保険の内容について確認し、共有する。
 【注意点】
 大学の健康診断を受診することが受講の条件。
 キャンプ活動にはホームセンターのゴム長靴が便利。
 雨具はゴム引きのズボンと上着がベスト。安価な雨具は無力である。
 着替えを用意しておくこと。

授業内容

授業内容
第1回 《基礎授業》:5月10日(日)9:00~17:00(予定)
 場所:帝京大学八王子校舎
 内容:授業概要説明。基礎的講義及びグループワーク。
 説明等終了後、自己紹介・役割分担・日程確認。
 計画打合せ。献立及び予算作成。準備日程参加名簿作成。
 キャンプサイト移動、インタープリテーション(その1)、調査実施。火起こし・倉庫整理・テント・おやつ・振り返り。
第2回         〃
第3回 《実技初日:キャンプ準備》5月17日(日)基礎授業翌日(予定)
※以下、実技の集合場所は多摩センター8番バス乗り場付近(高尾山の場合を除く)。
 9:00~17:00 場所:谷戸
 活動概要:地域の自然インタープリテーション(その2)、キャンプサイト準備実施。火起こし・テント・かまど作り。
第4回         〃
第5回         〃
第6回 《2日目:野外料理等》6月7日(日)(予定)
 9:00~17:00 場所:谷戸
 活動概要:里山体験、野外生活技術及び野外料理実習、ブッシュクラフト、レポートテーマ設定
 縄の結び方,ブッシュクラフト,炊き込みご飯,ネーチャーゲーム,お昼寝,片付け.
第7回         〃
第8回         〃
第9回 《3日目:里山チャレンジ等》6月14日(日)(予定)
 9:00~18:00 場所:谷戸
 活動概要:里山チャレンジ,田植え,野外生活技術,野外料理実習とブッシュクラフト.
第10回         〃
第11回         〃
第12回 《4日目:後片付け》6月21日(日)(予定)
 9:00~16:00 場所:谷戸
 活動概要:ロゲイニング,実習補遺及びサイト整備
第13回         〃
第14回 《5日目:講義及び試験》7月18日(土)(予定)
 9:00~12:30 場所:帝京大学八王子校舎
 活動概要:講義補遺,筆記試験及び実技試験(ロープワーク)
第15回 【補講】8月初旬予定 ※試験日程終了後
 9:00~16:00 場所:高尾山登山
 集合場所:京王線高尾山口 大鳥居の下
以上、計画は目標実現の為にある。ゆえに目標実現の為に臨機応変に変更されるものとする。