非行少年の処遇
担当者岡本 潤子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [初等教育学科 こども教育コース]
科目ナンバリングSOP-202

授業の概要(ねらい)

 非行を行った少年に対する処遇は,社会の「子ども観」を映す指標です。それは,時代により変化し,人権についての意識や,人間関係の科学についての態度を反映し,経済や政治の影響も大きく受けています。非行少年の立ち直りを有効に実現することは,肯定的な人間観の共有に資するだけでなく,社会防衛の視点からも極めて重要なことです。しかし,非行少年への処遇に,社会は大きな関心を寄せているとは限りません。「非行少年の更生」「立ち直りへの支援」は,他人事としてとらえられがちであり,敬遠される話題になりがちです。現在,少年法における成年年齢について,議論が進行中です。この授業が,これからの社会を担う有権者である皆さんが,社会の一員として,「非行少年の処遇」についての自分自身の姿勢を意識し,考察していくきっかけとなることを期待します。
 本授業では,まず,非行少年に対する処遇の歴史的背景と少年法の理念を学んだ後,非行に関わる捜査機関,判断機関,処遇機関の具体的関わりを学んでいきます。オンライン広義になりますが、単に知識を学ぶだけでなく,自分自身の立ち位置についての吟味もしながら取り組んで欲しいと思います。
 本授業は,春期の授業「司法・犯罪心理学Ⅰ」での学習を前提としていますが,「司法・犯罪心理学Ⅰ」の履修を要件としているわけではありません。また,公認心理師科目である「司法・犯罪心理学Ⅰ」とは異なり、少年非行に特化して学んでいく授業です。

授業の到達目標

 ① 少年法の歴史と理念について,説明できる。
 ② 捜査機関,判断機関,処遇機関それぞれの役割と実務を説明できる。
 ③ 少年の更生と立ち直りについて,自分自身の考えを説明できる。

成績評価の方法および基準

  毎回の授業時で設定される課題または確認小テストの合計で評価します。課題・確認小テストは回答期限内に回答することが必要です。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書テキストは使用せず,講義に際してレジュメを配布します。
参考文献『令和元年版犯罪白書』法務総合研究所
参考文献『少年法の社会史』徳岡秀雄福村出版
参考文献『犯罪心理学事典』日本犯罪心理学会丸善出版

準備学修の内容

 授業の中では,非行少年の処遇に関わっている人の体験談や参考文献などを紹介します。それらから発展させて書物,新聞,専門誌,メディア情報などに興味を持ってあたり,関心を広げてください。
 

その他履修上の注意事項

 ① 毎回、レジュメPDFと、音声を配信します。レジュメは概要なので,音声を聞きながらメモを加えるなどして細部を充実させ,内容を理解するようにしてください。
 ② 課題・確認小テストは、授業ごとの受講期間(授業日から1週間)までは回答を提出できるようにしますが、回答期限を過ぎると点数が下がります。
 ③ 授業では,知識を得るだけではなく,社会の一員として,非行に対する自分の立ち位置を絶えず問う姿勢を持ってください。
 ④ 心理学の研究調査への協力を複数回予定しています。研究への参加体験としてご協力ください。
 

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション。少年非行及び非行の現状についての基礎事項
第2回少年事件の特徴。取り扱いの流れ。少年審判と刑事裁判との違い。被害者の権利と参加。
第3回非行少年に対する処遇の歴史
第4回少年法の成り立ちと理念
第5回少年法改正と関連する検討事項 ①
第6回少年法改正と関連する検討事項 ②
第7回児童相談所,児童自立支援施設におけるの非行少年の処遇
第8回警察における非行少年の手続き及び処遇
第9回家庭裁判所における非行少年の手続き及びその実情 ① (審判の実際)
第10回家庭裁判所における非行少年の手続き及びその実情 ② (家庭裁判所調査官の活動を中心に)
第11回保護観察における非行少年の処遇と立直り
第12回少年院における非行少年の処遇 ① (少年院の種類,処遇課程)
第13回少年院における非行少年の処遇 ② (処遇の技法,少年の人権への配慮)
第14回少年鑑別所における非行少年の心身鑑別と,少年鑑別所の地域貢献
第15回振り返りとまとめ