産業・企業研究Ⅰ
担当者岡本  勉教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [観光経営学科]
科目ナンバリングMAN-316

授業の概要(ねらい)

大学に入ったとき、電気製品を買った人は多いでしょう。とくに独り暮らしを始めた人はそうだと思います。
 その際、ネットで 安い製品を探すと、アクアというブランドの製品が目につきませんでしたか。
 あ、それを買ったという人も少なくないでしょ う。
 そのアクアは、もともと、日本の三洋電機だったことを知ってますか。
 三洋電機は10年ほど前、経営不振に陥り、パナソニッ クに買収されました。そして、パナソニックが、三洋の一部を中国企業に売却したのです。
 同じように、シャープは、台湾の企業の傘下に入りました。
  東芝も、一部の部門を、中国の企業に売却しました。
 1980年代、90年代、日本の電機各社は、世界最強を誇っていました。
松下(パナソニック)、ソニー、日立、三菱、東芝、 シャープ、三洋、それに、NEC、富士通と、世界トップクラスの企業がそろい、
盤石の態勢と見られていました。
 日本の電機産業、電機企業に、いったい何が起きたのか。いま、日本の電機産業、電機企業は、どうなって いるのか。
 最強を誇った日本の電機産業に、どうして、「GAFA」が登場しなかったのか。
 日本にGAFAが登場するには、何が必要なのか。
 そうしたことをすべて勉強し、インターネット、ITの展開を踏まえ、
 日本の電機産業、電機企業の問題点、現状、課題を探 り、将来を展望します。
            ***
 ところで、いま「電機」といいましたが、「電機」は、
 重電、弱電、家電、あるいは、半導体、通信機など、広い分野にわたりま す。
「重電」と「弱電」「家電」の違いを言える人はいますか?
講義では、そのような基礎知識も学びます。
 

授業の到達目標

日本経済、世界経済は、かつてなく激しく動いています。
 5年前、10年前とはまるで違う動きを見せます。
 電機は、その典型です。
 電機の過去、現在、将来を勉強し、
 それを通じて、日本経済、世界経済を見るようにするーーというのが、ひとつの到達点 です。

成績評価の方法および基準

講義形式ですが、質問をたくさんします。
 本当にたくさん質問しますので、積極的に答えてください。
講義の最終回には講義内試験をします。
 普段の質問と、最終回の試験で、評価を決めます。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 教科書、参考書は定めませんが、新聞、テレビ、あるいはネットで、日々のニュースを、しっかりウオッチしてくださ い。
参考文献

準備学修の内容

産業の動向は、経済だけではなく、政治、国際、社会の動きからも、大きな影響を受けます。
 君たちは、その中で、生きています。
いま、日本と世界で、何が起きているのか、答えられるように、日々のニュースに関心を持ってください。

その他履修上の注意事項

この講義のためのノートを一冊、用意してください。
 小さなノートではなく、A4サイズのノート、いわゆる大学ノートを用意してください。
講義の内容を、しっかりと、ノートに取ってください。
 講義では必ず、鉛筆(シャープペンシルでもかまいません)と消し ゴムを持って来てください。

授業内容

授業内容
第1回この回は、全体のガイダンスです。
日本の電機産業、電機企業について学ぶ意味を話します。
第2回日本の電機産業の現状はどうなっているのか。
日本の電機産業は、強いのか、弱いのか?
世界でのポジションはどうなっているのかなどを勉強します。
第3回家電、弱電、重電の違いを学びます。
半導体、半導体製造、通信、精密機械についても概観します。
第4回日本の電機産業は、1980年代に全盛期を迎えます。
当時の日本の電機企業は、世界の市場をほぼ制覇していました。
実際には、どんな状況だったかを学びます。
第5回全盛を誇った日本の電機産業は、どうして弱くなったのか。
2000年を過ぎてから、ソニーの変調が目立つようになりました。
日本の電機を牽引してきたソニーが、新製品を出すことが出来なくなり、
2003年4月に発表した決算が、大幅な減益となりました。
これをソニーショックと呼びます。 ソニーの凋落を調べます。
第6回三洋電機の衰退、消滅。 三洋電機は、堅実な電機会社として、高い評価を得ていました。
しかし、ソニーの凋落の後を追うように経営内容が悪化し、パナソニックに身売りしました。
パナソニックは、その後、三洋の家電部門を中国企業に売ってしまいました。それがアクアです。
三洋の凋落について勉強します。
第7回シャープの転落。 シャープは、世界でもいち早く、液晶テレビに特化し、2010年ぐらいまでは、 強力な地位を築いていました。
しかし、ソニー、三洋についで、経営が悪化し、やがて台湾の企業の傘下に 入ってしまいます。
液晶のシャープに、何が起きたのか。
第8回東芝の危機。 三洋、シャープがおかしくなっても、東芝は大丈夫だろうとだれもが思っていました。
東芝は、家電から半導体、原子力まですべてを手がける巨大企業で、経営は盤石と思われていました。
ところが、アメリカの原子力企業ウエスティングハウスを買収したところ、ウエスティングハウスの 負債が東芝にのしかかり、
東芝そのものが経営破たんの危機に陥ります。
東芝は、家電部門や、半導体、医療部門を売却し、なんとか危機を乗り越えました。
しかし、半導体も医療部門も、東芝の稼ぎ頭だったのです。 再生に向け、まだ先行きは不透明なままです。
第9回NECと富士通。 通信と半導体を主力とする会社が、日本には、あります。
その代表選手が、NECと富士通です。
1980年代、90年代には、NECも富士通も、半導体とパソコンでトップ企業となり、 世界をリードしました。
ところが、両者とも、半導体は、海外の会社との競争に負け、パソコン部門も最近、中国の会社が資本参加しました。
日本を代表する優良会社に何があったのかを調べます。
第10回日本の電機には、大手各社だけではなく、独自の技術を持つ中堅企業がたくさんあります。
日本経済は、そうした中堅企業がたくさんあるのが特色であり、強みでもあります。
それは、パイオニア、沖電気、ケンウッドといったメーカー、あるいは、 オ
ンキョー、山水、トリオ、ヤマハ、DENONなどのメーカーです。
そういう中堅企業を調べます。
第11回苦難の時期を経て、日本で、しっかり世界と戦っているメーカーは パナソニック、日立、三菱電機というところになりました。
ソニーも、一時の低迷を乗り越え、復活しています。
NEC、富士通も技術力で再生を図ります。
日本の電機が再生するには、どうすればいいのかを考えます
第12回アメリカの電機産業と日本の電機産業。
日本の電機産業は、戦後、アメリカの電機産業をお手本にし、アメリカから学んで、大きくなりました。
そして、1970年代には、日本の電機産業はアメリカを逆転します。
しかし、2000年以降、日本の電機は力を失い、アメリカに抜かれます。
日米の電機を比較して考えます。
第13回中国と韓国。 東芝は中国の電機に家電部門を売却しました。
シャープは台湾の企業の傘下に入りました。 三洋は中国の企業に売却されました。
一方、NECや富士通が半導体でおかしくなったのは、韓国企業とくにサムスンとの 半導体の競争に負けたからです。
中国と韓国の電機産業は、今度、どう展開するのかを考えます。
第14回アメリカの電機産業は、衰退したように見えて、実は、新しい企業が続々と登場しています。
GAFAと呼ばれるグーグル、アマゾン、フェースブック、アップルがその代表です。
それだけではなく、ウインドウズのマイクロソフト、半導体のインテルなど、
GAFA以外にも 巨大企業が世界市場を握っています。
日本は、シャープ、三洋電機など電機企業が相次いで衰退したあと、
それに変わる企業、 GAFAのような企業が出てきません。
日本の電機が再生するには、そうした新しい企業が必要です。
では、どうすればいいのか。今後を展望します。
第15回 最終回は、講義内でまとめと試験をします。