西洋史籍講読5-Ⅳ
担当者石川 敬史教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [史学科]
科目ナンバリングHEA-410

授業の概要(ねらい)

 歴史とは、書物を通して研究される学問です。しかしいざ我々が研究を始めようとすると、書物の圧倒的な不在に気づきます。文字が発明されて以来、実は書物は破壊されてきたのです。書物が破壊されてきた理由は様々です。例えば、自然災害、戦争、保存方法についての無知、単純な不作為、宗教的弾圧、恐怖政治、社会思想などが考えられます。専門的歴史研究の基礎を学ぶこの史籍講読の授業では、書物の不在もまた、書物の存在と同様に歴史を形作ってきた可能性を探求し、歴史をより深く考察するための見識を涵養することをねらいとしています。授業は、フェルナンド・バエス『書物の破壊の世界史 - シュメールの粘土板からデジタル時代まで』(紀伊國屋書店)『の精読を演習形式で行います。受講者の積極的な参加が何より求められます。

・授業は、演習形式で行います。受講者はその日講読するテキストの該当箇所を必ず事前に読み込み、疑問点・感想を明らかにしてから授業に参加してください。
・受講者は、必ず1回〜2回以上、報告を担当します。報告担当になった受講者は、その日講読するテキストの該当箇所を要約し、自分なりの論点をまとめて報告してください。
・報告者の報告をもとに、受講者と教員が議論を行い、理解を深めていきます。

授業の到達目標

文献資料を適切に要約し、他者に説明することができるようになる。
古代から現代までの変化を歴史的に把握できるようになる。
歴史的文献を自力で探し出せる能力を身につけることができるようになる。

成績評価の方法および基準

授業への積極的な参加姿勢:50%
報告担当者としての報告:20%
前期の授業終了後に提出するレポート:30%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『書物の破壊の世界史 - シュメールの粘土板からデジタル時代まで』フェルナンド・バエス(八重樫克彦・八重樫由貴子訳)紀伊國屋書店
参考文献『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』ウンベルト・エーコ、ジャン=クロード・カリエール(工藤妙子訳)CCCメディアハウス

準備学修の内容

・受講者は、授業に出席する前に必ず、その日講読する該当箇所を読み込んできてください。
・報告担当者は、報告レジュメを作成し、テキストの内容を初めて知る人にも分かるように報告するとともに、問題点・疑問点を明らかにしておいてください。
・受講者は、自分なりの問題意識を明確にして授業に臨むようにしてください。

その他履修上の注意事項

演習形式の授業なので、受講者の積極的な参加姿勢がなければ成立しない授業です。それゆえ、成績評価も授業への参加、授業への貢献を基準の中心としています。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス
・授業運営の方針、使用テキストについての解説
・報告担当者の割り振り
・その他、全般的な説明
第2回【第2部 東ローマ帝国の時代から19世紀まで】
第11章 厄災の最中で
第12章 革命と苦悩
報告者による報告と議論
第3回【第2部 東ローマ帝国の時代から19世紀まで】
第13章 過剰な潔癖さの果てに
第14章 書物の破壊に関する若干の文献
報告者による報告と議論
第4回【第2部 東ローマ帝国の時代から19世紀まで】
第15章 フィクションにおける書物の破壊
報告者による報告と議論
第5回中間考察
前期から引き続き講読してきた【第2部 東ローマ帝国の時代から19世紀まで】についての概説講義および質疑応答
第6回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第1章 スペイン内戦時の書物の破壊
第2章 ナチスのビブリオコース
報告者による報告と議論
第7回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第3章 第二次世界大戦中に空爆された図書館
第4章 現代文学の検閲と自主検閲
報告者による報告と議論
第8回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第5章 大災害の世紀
第6章 恐怖の政権
報告者による報告と議論
第9回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第7章 民族間の憎悪
第8章 性、イデオロギー、宗教
報告者による報告と議論
第10回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第9章 書物の破壊者
第10章 イラクで破壊された書物たち
報告者による報告と議論
第11回【第3部 20世紀と21世紀初頭】
第11章 デジタル時代の書物の破壊
報告者による報告と議論
第12回【本書の解説と後書き】
報告者による報告と議論
第13回予備日
演習形式の授業は、必ずしも予定通り順調に行くことはない。進度が遅れた場合はこの13回目を予備日として利用する。
第14回中間考察
【第3部 20世紀と21世紀初頭】を中心として概説講義および質疑応答
第15回後期の総括授業
・後期の授業を振り返り、自由討論を行う。
・レポート課題の指示