消防法と予防行政Ⅱ
担当者小堀 百合子
単位・開講先選択  2単位 [スポーツ医療学科]
科目ナンバリングLAW-202

授業の概要(ねらい)

 消防機関の仕事には、消火、火災予防、救助、救急の4つの大きな柱があり、これらは、消防組織法及び消防法に基づいて実施されています。
 このうち、火災予防行政は、建築物等の火災発生の防止と被害の軽減を目的として、消防法に基づき建物の関係者にあらかじめ対策を講じさせるとともに、消防機関が立入検査などによって消防法への適合性を調査し、違反している場合は、命令を発するなどして安全を確保することを主な内容としています。
 近年、大規模化、高層化した建物が急速に増加し、これらの建物は、火災が発生した場合の潜在的危険性が極めて高く、また、技術の進歩、社会の多様化等に伴い、火災予防行政の内容もより高度化しています。このような中で、予防を担当する消防官には、関係法令に関する正確な知識を持って、建物の安全確保を図ることが求められています。
 このため、2006年に消防機関には火災予防の専門知識を有する「予防技術者」を置くことが義務づけられました。この資格は、国家試験委託機関が行う「予防技術検定試験」の合格者に与えられます。「予防技術検定試験」は「防火査察」「消防用設備」「危険物」の3区分で実施されますが、本授業はこの中の「防火査察」の内容について学習します。
 具体的には、防火査察業務である立入検査、防火管理及び消防法違反に対して行う命令等の措置(違反処理)についての関係法令、実施要領等を実際の火災事例、違反事例を踏まえて説明します。
 本科目は、実務経験のある教員による授業です。担当教員は、東京消防庁において予防業務に携わった経験があり、授業では、その実務経験での事例等をもとに講義を展開していきます。

授業の到達目標

(1) 消防法では、火災から人命、財産を守るために、建物には消防用設備等の設置(ハード面の対策)と防火管理(ソフト面の対策)が義務づけられており、それを担保するために消防機関が行う立入検査、予防措置命令等が規定されています。これらの予防関係規定を理解し、その基本的な事項について説明できる。
(2) 予防技術検定試験の科目の1つ「防火査察」に関する知識を習得する。

成績評価の方法および基準

(1) 筆記試験(80%) 筆記試験は出席回数が3分の2以上の者に対して行います。出席回数が3分の2未満の者は、特別の理由がない限り履修放棄とみなし、採点をしません。
(2) 授業内で実施する小テストの成績、授業態度など(20%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 テキストとして、プリントを配布します。
参考文献『消防基本六法』東京法令出版(株)

準備学修の内容

 授業では、授業のポイント、関係法令についてのレジュメを配布するので、復習、試験準備に活用してください。特に、関係法令は必ず見直すこと。
 自宅、大学、アルバイト先などの身近な建物にどのような消防設備(消火器、自動火災報知設備、スプリンクらー設備など)、建築設備(避難階段、防火区画など)が設置され、きちんと維持管理されているか、確認しておくこと。

その他履修上の注意事項

 この授業は、私たちの身近な防火対象物の安全確保のために、消防法でどのような防火・防災対策が規定されているかを学び、理解することを目的としています。
 授業で学んだことを活かして、社会人としての危機管理能力を高め、自分自身、身近な人々、さらには地域の安全・安心のために貢献されることを期待します。

授業内容

授業内容
第1回ガイダンス(授業の目的、内容、進め方、テキスト、予防技術資格者)
最近の消防事情
第2回消防に関する基礎知識(消防法令の概要)
消防の体系と消防法における予防関係規定の仕組み:消防組織法第1条、消防法第1条、第2条
第3回立入検査(1):消防法第4条、第4条の2
第4回立入検査(2):立入検査の実施要領
第5回屋外における火災予防:消防法第3条
第6回防火対象物の火災予防措置命令:消防法第5条
第7回防火対象物の使用禁止命令:消防法第5条の2
消防吏員による火災予防措置命令:消防第5条の3
第8回行政上の救済制度
消防法における期間及び期限の特例:消防法第5条の4
第9回防火管理制度:消防法第8条
統括防火管理制度:消防第8条の2
第10回過去の災害事例から学ぶ
阪神・淡路大震災の特徴と教訓
東日本大震災の特徴と教訓
第11回防災管理制度:消防法第36条
第12回防火対象物定期点検報告制度:消防法第8条の2の2
点検報告の特例認定制度:消防法第8条の2の3
第13回その他の火災予防対策
避難上必要な施設等の管理:消防法第8条の2の4
防炎規制:消防法第8条の3
火気規制:消防法第9条
住宅用防災機器:消防法第9条の2
第14回消防用設備等:消防法第17条
まとめ(重要法令の復習等)
第15回授業内試験とまとめ