産業・企業研究Ⅱ
担当者岡本  勉教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [国際経済学科]
科目ナンバリングMAN-304

授業の概要(ねらい)

 いま、みなさんが知っている大手の銀行の名前を挙げてみてください。
みずほ、三井住友、三菱UFJの3つは、すぐに出てくるでしょう。りそなの名前も挙がるでしょう。
それで、4つです。
 しかし、1990年代には、日本の大手銀行はもっと数があり、都市銀行と呼ばれる大手銀行だけで13行もありました。
 都市銀行だけではなく、長期信用銀行、信託銀行と分類される銀行もあり、
 1980年代、日本の大手銀行は、世界最強の金融機関でした。
 1980年代後半ごろは、世界の大手銀行のトップ10のうち、6、7行を日本の銀行が占めていました。
 それがいまはすっかり様変わりし、大手銀行は冒頭に挙げた4行に減ってしまいました。
 長期信用銀行はなくなり、信託銀行も数が減りました。
 たかだが、20年、30年のうちに、何が起きたのでしょうか。
 この20年、30年は、日本の金融機関にとって、激動の時代でした。
 もう少し具体的にいえば、最強を誇った金融機関が、一気に弱小化し、多くの金融機関が倒産する。
 どん底に落ちたあと、この10年で、回復に向かい、なんとか、世界の金融機関と戦えるだけの力を取り戻した。
 そういう時代です。
 その間に、日本の銀行各行は、何をしてきたのか。いま、何をしようとしているのか。
そういう中で、日本銀行はマイナス金利を打ち出した。マイナス金利とは何か?
 日本銀行や財務省の動きをまじえ、激動の金融機関の過去を振り返り、現在の姿を確認し、未来を展望します。

授業の到達目標

 日本の金融界は、この20年ほど、まことに激しく動きました。いまも、その激しさは、収まったわけではありません。
 就職に関連して言えば、日本の銀行は、採用する学生の数を、びっくりするほど、減らしています。
 それは、金融界の激しい動きの延長線上にあります。
 日本の金融界は、いったい、どうしてそんな激しい動きに陥ったのか。
 それをしっかり理解し、日本の金融の現在を把握するのが、講義の目標です。

成績評価の方法および基準

 講義形式ではありますが、質問をたくさんします。積極的に答えてください。
 講義の最終回には講義内試験をします。
 そうしたものの総合評価で、成績を決めます。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書とくに定めませんが、新聞、テレビ、あるいはネットでもかまいませんが、日々のニュースを、しっかりウオッチしてください。

参考文献

準備学修の内容

 金融の動向も、経済だけではなく、政治、国際、社会の動きからも、大きな影響を受けます。
 君たちは、その中で、生きています。 
 金融のニュースは、とっつきにくいかもしれませんが、日々のニュースを関心を持ってウオッチしてください。

その他履修上の注意事項

この講義のためのノートを一冊、用意してください。
 小さなノートではなく、A4サイズのノート、いわゆる大学ノートを用意してください。
講義の内容を、しっかりと、ノートに取ってください。
 講義では必ず、鉛筆(シャープペンシルでもかまいません)と消しゴムを持って来てください。

授業内容

授業内容
第1回この回はガイダンスです。
日本の金融の現状をざっくりと説明し、日本の金融を勉強する意味を話します。
第2回日本の銀行は、1980年代には、世界最強と見られていた。
それが、バブル崩壊後、一時、多くの銀行が倒産の危機に陥る。いま、ようやく回復して落ち着いてきた。
この20年を簡単に振り返る。
第3回金融産業とは何か。
 日本の金融は、次のように分類される。
 ・ 3大銀行 プラス1
 ・ 信託銀行
 ・ 旧長期信用銀行
 ・ 地方銀行
 ・ 信用金庫、信用組合
 ・ 政府系金融機関 
 ・ 郵便局
 ・ 農協
 その違いを理解する。

第4回日本の3大銀行プラス1 の変遷 その1
 日本の大手銀行は、1990年前半まで、都市銀行と呼ばれる13行が活発に営業していた。
 それは、
 第一勧銀、富士、住友、三菱、三和、東海、三井、太陽神戸、協和、北海道拓殖、大和、さいたま、東京
  ーーの13行だ。
 それがいま、3プラス1の4行になった。その変遷を学ぶ。
第5回日本の3大銀行プラズ1 の変遷 その2
 (4)の続き
第6回財閥系銀行
 上記の13行のうち、富士、住友、三菱、三井は、旧財閥系銀行と呼ばれる。
財閥とは何かを勉強する。

第7回長期信用銀行の破綻
 日本には、かつて、長期信用銀行と呼ばれる銀行があった。
 それは、日本興業銀行、日本長期信用銀行、日本債券信用銀行の3行だ。
 長期信用銀行は、戦後の日本企業を金融面から支えた銀行だった。
 いまはみな、姿を消し、あるいは、姿を変えた。
 長期信用銀行の役割を理解する。
第8回日本銀行とは何か?
 日本銀行とは、何をする銀行か。どこにあるか知ってますか。
 日本銀行は、いま、日本の金利をマイナス金利にしている。
 日本銀行の役割を理解する。

第9回円ドル相場とは何か?
 金融は、日本国内だけで仕事が出来るわけではなく、
 アメリカや欧州、中国といった世界各国、地域と、取り引きをしなくてはならない。
 円を使っているのは日本だけだから、アメリカと取り引きするには、ドルと交換する必要が出てくる。
 それを外国為替と呼ぶ。
 外国為替市場は、どこにあるのだろう。何をしているのだろう。
 外国為替を理解する。
第10回証券会社の変遷
 銀行ではないが、証券会社も、金融機関と呼ばれることがある。
 かつては、野村、大和、日興、山一が4大証券だった。
 いまは山一が消え、野村、大和、日興の3社態勢になった。
 証券業界の変遷を見る。
  
第11回銀行が倒産した日
 1997年11月、日本のサッカーが初めてワールドカップへの出場を決めた日、
 北海道拓殖銀行が倒産した。
 たまたま同じ日になったものだが、おかげで、当時の新聞のトップニュースは銀行の倒産で、
 サッカーの扱いは極めて小さい。
 北海道拓殖銀行に続いて、同じ11月に山一証券が倒産した。
 この11月、日本人は、戦後初めて、銀行も証券会社も倒産するということを知った。
 そのときのことを振り返る。
第12回銀行はなぜ倒産するのか。前回からの続きです。
 かつて、銀行は倒産するはずがないと思われていたが、
 1997年11月の北海道拓殖銀行の倒産に象徴されるように、90年代後半には、銀行の倒産が相次いだ。
 直接の原因は、バブル崩壊だ。 
 銀行は、なぜ、倒産するのか。そのメカニズムを考える。
第13回低金利時代からマイナス金利へ
 銀行に預金すると、利子が付きます。
 1980年代までは、預金の利子は、5%-6%ぐらいありました。
 いまの利子を知ってますか? 0・005%ぐらいしかありません。
 これを低金利と呼びますが、最近、日銀がマイナス金利を打ち出しました。
 どうしてそんなことになったのかを学びます。

第14回銀行の仕事の変遷
 金利が5%も6%もあったころと比べ、いまの低金利時代には、銀行の仕事の内容も大きく変わりました。
 利子が高いころは、ほうっておいても、お客さんがお金を預けに来てくれました。
 いまでは、銀行に足を運ぶお客さんが減りました。
 銀行の仕事も変わってきました。
 銀行は、低金利時代になり、お客さんが減ってしまいました。
 また、インターネットで取り引きをするインターネットバンキングも普及してきました。
 そうすると、銀行は、支店がだんだん不要になってきました。
 実際、最近、駅の回りでも、銀行の支店がどんどん減っています。
 そうなると、銀行の新規採用が減り、これは、就職戦線にも大きな影響を与えます。
 その現状を理解します。
第15回半年の内容を踏まえ、最後に、まとめと講義内試験を実施します。