担当者 | 阿部 朝衛教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択必修 2単位 [史学科] | |
科目ナンバリング | ARC-201 |
現生人類の社会の維持・創造は生物的文化的な再生産を基盤とする。文化的再生産は学習・教育によってなされ、それによる知識・技能の蓄積によって新たな文化・技術が創造される。学習・教育活動において、子ども期の養育環境・学習過程が重要な意味を持つことは明らかである。人類以外の生物でも学習は個体・集団の維持に役割を果たすが、人類ではそれが著しい。したがって、これらの行動は人類の出現以降の進化的産物であり、身体・脳の進化と文化の蓄積との相互の関係で形成されてきたと考えられる。本講義では、この進化過程を子ども期に焦点を当てて検討する。すでに猿人・原人・旧人の子どもの生育環境などの検討を行っているので、今年度はH・サピエンスの子どもの諸環境・学習過程を、猿人・原人・旧人の考古学資料との比較によって、その特殊性や普遍性を考察する。春期では、人類進化の概要、サピエンスの生物的・文化的特殊性を検討する。秋期では、サピエンスの子どもへの養育活動、石器製作・描画に関わる技能の獲得に焦点を当て、子どもの学習過程を検討し、春期の検討結果を含めて、サピエンスの子どもの生育環境・学習過程を総合的に考察する。
春期では下記の①・②を主に求め、秋期では③・④を求める。秋期の講義内容は春期の講義内容を前提としているので、秋期のみの履修では③・④に到達することは困難である。
①人類進化の概要を理解できる。
②人類進化上での子ども期の重要性が理解できる。
③人類進化上、子ども期・学習期間の延長、それに伴う社会的な投資の増大が起こっていることを理解できる。
④サピエンス段階での子ども期の特殊性・普遍性が理解できる。
授業時間の最後で行うテストによって判断する。授業途中で講義内容の難易度をアンケート等によって確認し修正を加えるので、テストの解答を恐れる必要はない。出席し、講義に集中することは当然のことである。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 特になし | ||
参考文献 | 人類の移動誌 | 印東道子 | 臨川書店 |
参考文献 | 人類20万年遙かな旅路 | アリス・ロバーツ | 文藝春秋 |
参考文献 | 文化がヒトを進化させた | ジョセフ・ヘンリック | 白揚社 |
参考文献 | 人類の足跡10万年全史 | スティーヴン・オッペンハイマー | 草思社 |
参考文献 | 進化心理学から考えるホモサピエンス | アラン・S・ミラー | パンローリング株式会社 |
参考文献 | 人類進化の科学哲学 | 中尾 央 | 名古屋大学出版会 |
講義の都度、必要な課題を提示する。
文化遺物の説明時に、考古学実習室に保管している石器やその材料などの重量物を教材とする場合、考古学実習室に移動することもある。その際は、事前に説明を行うので、了解を願いたい。
回 | 授業内容 |
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第1回 | 導入:講義の目的・内容等の概要の説明 |
第2回 | 人類進化の概要 |
第3回 | 人類進化上における子ども期の長期化とその意義 |
第4回 | 人類進化と文化進化(猿人・原人・旧人) |
第5回 | 人類進化と文化進化(旧人から新人) |
第6回 | 形質からみたサピエンス |
第7回 | 遺伝学からみたサピエンス |
第8回 | サピエンスの出現と拡散 |
第9回 | サピエンスとネアンデルタール人との関係 |
第10回 | サピエンスとデニソワ人との関係 |
第11回 | 初期サピエンスの文化(アフリカ) |
第12回 | 初期サピエンスの文化(西アジア) |
第13回 | 初期サピエンスの文化(オーストラリア) |
第14回 | 後期旧石器時代の文化 |
第15回 | 総括、試験 |