知的財産法Ⅱ(著作権法)
担当者木村 友久教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [法律学科 2018年度以降]
科目ナンバリングNFL-202

授業の概要(ねらい)

知的財産法(制度)の全体像を確認するとともに、著作権法、商標法、不正競争防止法(周知著名表示の保護、ドメイン名の保護等)について、具体的な事件あるいは基本的な実務処理事例も参考にしながら説明する。この授業では、コンテンツ及び標識法領域の事業活動等で、修得した知的財産法の基本的な知識をもとに新たな価値創造やリスク軽減を提案あるいは実行できる基礎的な能力形成を目指します。

授業の到達目標

①知識・理解の観点・・・著作権法、商標法等の全体について、基本的な事項を修得する。
②思考・ 判断の観点・・・著作物性の判断、著作者の権利に関する事案、著作隣接権の事案等、ここで学んだ法律の知識を基に合理的に整理できる。
③関心・意欲の観点・・・出版、放送、映画、音楽の事業活動領域で、法的な観点から実務処理あるいは新たな仕組みづくりに積極的に対応できる。
④態度の観点・・・出版、放送、映画、音楽の事業活動領域で、ここで学んだ法律の知識を基に自律的な提案をする態度を獲得する。
⑤技能・表現の観点・・・著作権法、商標法等の基本的な知識を使い、事業活動等で基本的な実務処理と新たな仕組みを提案することができる。

成績評価の方法および基準

評価方法:1.試験(50%) 2.ワークシート(50%)
評価基準:1.試験・小レポート・・・知識、理解を測定 教科書や講義で扱った知識項目に関する問題や、入門レベルの著作権侵害訴訟等における基本的対応を理解する。
     2.ワークシート・・・思考、判断、関心・意欲を測定 講義(予習復習を含む)を通して理解・実感したことを整理し、まとめることができる。
                グループワーク、ペアワークなどの討議に積極的に参加する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書楽しい著作権法 2019年版著者 小川明子
制作著作 国立大学法人山口大学
有限会社 山口ティー・エル・オー
ISBN 978-4-9903935-5-7
参考文献なし

準備学修の内容

各回のレジュメと判決文をLMSに掲載します、事前にダウンロードしてください。
事前に、下記の権利管理団体、権利者団体のホームページをざっくりと閲覧して概要をつかんでください。
一般社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)
https://www.jasrac.or.jp/
株式会社NexTone
https://www.nex-tone.co.jp/
一般社団法人日本書籍出版協会
http://www.jbpa.or.jp/index.html
公益社団法人日本漫画家協会
https://www.nihonmangakakyokai.or.jp/

その他履修上の注意事項

授業では、グループワーク、ペアワークによる討議と討議した内容をワークシートに記入する作業を行い、コンテンツ系の知的財産について初歩的な実務能力獲得を目指します。積極的な授業参加を希望します。
下記のパテントサロンHPは、知的財産の記事が掲載されたポータルサイトです。閲覧をお勧めします。
http://www.patentsalon.com/

授業内容

授業内容
第1回講義概要・・・講義の全体像と評価方法の説明
知的財産法の概要・・・コンテンツ及び標識法を中心に知的財産法(制度)を確認し、著作権法の位置づけを確認する。
第2回著作権法(1)・・・著作物性の判定、著作者、職務著作、外部デザイナーとデザインオフィスの関係等について、具体的な事例をもとに討議する。
第3回著作権法(2)・・・著作者の権利「著作者人格権」「著作権」の全体像を説明し、三島由紀夫の手紙事件やアニメの著作権をめぐる事件等で検討する。著作物の種類別に翻案となる事例・限界を討議する。二次的著作物、パロディの関係を検討する。
第4回著作権法(3)・・・①著作隣接権、出版権について、具体的な事例をもとに説明する。
②権利制限規定の全体像を説明し、私的複製、引用、学校その他の教育機関における複製等(法改正前後についても扱う)、営利を目的としない上演等について検討する。
第5回著作権法(4)・・・著作権侵害の総合演習、マリカー事件、金魚電話ボックス事件等を使って法的処理における立論と抗弁の演習を行う。ドザエモン展とドラエモン展の事案を使い、紛争が発生した場合を想定して立論と抗弁を討議する。
第6回著作権法(5)・・・出版と著作権法の関係について、多様な出版物を扱う際に起こりえるいくつかのモデル事例をもとに説明し、同時に著作権法を踏まえた処理を討議する。
第7回著作権法(6)・・・音楽業界と著作権法 ボーカロイド、ユーチューバーの立場から見た著作権法、ミュージカル運営時の権利処理(グライドライツ)について、典型的な事件に初歩的な実務処理も含めて説明しあわせて討議を行う。
第8回著作権法(7)・・・①放送と著作権法 番組コンセプト模倣と著作権侵害、原典資料を同じくする小説の紛争事例等で説明して討議を行う。
②映画と著作権法 映画の配給システムと著作権法の関係、映画著作物の創作者および著作権者の整理等を具体的事件で説明して討議を行う。
第9回著作権法(8)・・・写真芸術と著作権法 写真の著作物について創作の本質から検討を行う。写真の技法と写真著作物の関係、写真著作物の創作の瞬間はどの時点か、写真による表現と依拠性を争う事件、スイカ写真事件、ファッションショー写真事件、お菓子に同封されたフィギュアー事件などで説明して討議を行う。
第10回著作権法(9)・・・プログラム、データベースの保護について、保護客体の著作物性を精査しつつ著作権法と特許法の交錯部分も含めて説明する。また、プログラム著作物がテーマとなった著作権侵害事件について最近の傾向と法解釈上の問題点を検討する。
第11回商標法(1)・・・商標制度および標識法の全体像、商標の定義と商標登録要件。
第12回商標法(2)・・・商標権の効力、効力の及ばない範囲と権利変動、登録商標の類似範囲、先使用権等、商標権侵害訴訟の典型事例に基づいて説明する。
第13回商標法(3)・・・商標権侵害訴訟の立論および抗弁の演習、損害額の算定等、具体的な事例をもとに演習を行う。
第14回不正競争防止法・・・不正競争防止法の全体像確認、周知著名表示の保護、ドメイン名の保護
第15回まとめと試験