担当者 | 安部 良 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | SEM-202 |
「認知革命」はヒト特有の「知性」、「感性」「想像力」「感情」などからなる「人間知能」を生み出し、人類はその誕生以来600万年間、大型捕食者におびえてひっそりと生きる弱小哺乳類の座から僅か数万年の間に食物連鎖の頂点に駆けあがった。やがて、農耕牧畜は都市を生み、文字の発明から文明社会が誕生し、その後の科学革命、産業革命は地球の生態系を一変させ、地球環境そのものも大きく変えようとしている。さらに、コンピューターの登場を端に発する情報革命は、ほんの50年の間に人間社会を大きく変えた。そして、人間の脳の階層構造に基づき開発されたディープラーニングを基礎とする第3世代「人工知能」は、社会の中でのヒトの役割を大きく変えるのみならず、SNSやデジタル機器による情報テクノロジーを通じて人の行動や思考に影響を与えてきている。今や我々人類は「自然知能」「人間知能」「人工知能」の3つの知能により操られている。
一方、ヒトの健康と福祉の増進を目的に発展してきた「生命科学」は、多くの病から人類を救い、寿命を延ばし、人類に繁栄をもたらした。そしてついには遺伝子を思うがままに変えることできる「ゲノム編集」という技術を開発した。今やヒトは自分の好みや欲望の為に、38億年かけて培ってきた「自然知能」に対して挑戦状をたたきつけているようにも思える。知性や感情を必要としない「人工知能」は、定められた問題を解決する能力については「人間知能」をはるかに凌駕する。今後、人類はこの三つの「知能」のバランスをどのように取っていくのか、また、向かうべき社会にはどのような「幸福」があるのだろうか。
後期の授業も、前期と同様、学内外から講師を招いて受講者を含めたディスカッションやグループワークなどを交え進めていく。
後期では、幸福についての理解を深める。また、石器時代から現代にいたるまでの人類の活動の中、幸福の役割、その姿の変化を学び、来るべき予測不能な社会の中で力強く生きていく力を育む。
授業中に行われるディスカッションやグループワークへの参加(15%)と提出されたレポートの評価(85%)により成績を決定する。レポートのテーマ、及び作成、提出、評価については授業時間内に担当教員より示される。
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 購入テキストなし | ||
参考文献 |
人類史の大まかな流れを学んでおく。人工知能、ゲノム編集などの先端科学技術について基礎的な知識を得ておくことが望ましい。
この授業は、知識の習得を目標にしたものではなく、取り上げられた内容を材料に、考察し、受講者がそれぞれの人生の指針を見出すことを目標にしている。レポートについては、授業内容に集中し、考察した内容を的確に表現できるようにすることが高い評価となる。積極的な受講を期待する。
回 | 授業内容 |
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第1回 | <オリエンテーション・導入> 担当:安部良(戦略的イノベーション研究センター) 授業の進め方、評価方法、授業内容の概略の説明 文明はヒトに幸せをもたらしたか。 |
第2回 | <幸福とは、幸福の実体(1)幸せのアルゴリズム(脳科学・脳化学)> 担当:細田千尋(戦略的イノベーション研究センター) 幸せを感じるには、脳がどのような状況になっていることが必要なのか?脳に幸せを感じさせられるための行動、行動選択に欠かせない脳の構造や機能、行動選択時に起こる脳内の神経伝達物質の変化、行動選択に伴う脳の機能や構造の変化などについて、心理学、教育学、認知科学、生理学の視点から、幸福の実現について考察する |
第3回 | <幸福とは、幸福の実体(2)外発的・内発的動機づけ> 担当:岡ノ谷一夫(東京大学大学院総合文化研究科) 自然知能における幸せと人間知能における幸せ:報酬にもとづく行動と内発的動機付けにもとづく行動 |
第4回 | <幸福とは、幸福の実体(3)人間知能の“偏り”って?> 担当:稲垣綾子(文学部心理学科) 臨床心理学とその実践からみた“幸せ”とは ―自閉スペクトラム症をもつ者との15年以上にわたる臨床経験と事例から考える |
第5回 | <幸福とは、幸福の実体(4)ある“幸福学”> 担当:安部良(戦略的イノベーション研究センター) 満足と幸福のからくり、情動・感情としての幸せ(愛の科学)など |
第6回 | <幸せの変遷(1)旧石器時代の幸福> 担当:阿部朝衛(文学部史学科) 幸福の誕生、狩猟採集社会の変革 |
第7回 | <幸せの変遷(2)新石器時代の幸福> 担当:阿部朝衛(文学部史学科) 幸せの者は彼らか我々か、狩猟採集社会と農耕牧畜社会 |
第8回 | <幸せの変遷(3)経済学から見た幸福(1)> 担当:廣田功(経済学部経済学科) 経済学の展開、国民の豊かさから個人の満足へ、功利主義、分配と格差の顕在化、 貧困観の変化、厚生経済学の成立 |
第9回 | <幸せの変遷(4)経済学から見た幸福(2)> 担当:廣田功(経済学部経済学科) 経済学の展開、国民の豊かさから個人の満足へ、功利主義、分配と格差の顕在化、貧困観の変化、厚生経済学の成立 |
第10回 | <幸せの変遷(5)思想史から見た幸福(1)> 担当:福島知己(経済学部経営学科) ユートピアの歴史。われわれは何を幸福と感じてきたか |
第11回 | <幸せの変遷(6)思想史から見た幸福(2)> 担当:福島知己(経済学部経営学科) AIとロボットの時代の人間本性論。機械と人間。科学技術の発達は人間本性論にどのような影響をもたらしたか |
第12回 | <幸せの変遷(7)現代政治と幸福追求> 担当:天日隆彦(法学部法律学科) 経済協力開発機構(OECD)による幸福度指数なども踏まえ、政治における幸福の意味を考察する |
第13回 | <文明の暴走?(1)> 担当:岡ノ谷一夫(東京大学大学院総合文化研究科) 生物進化の終焉と人工知能のシンギュラリティ |
第14回 | <文明の暴走?(2)> 担当:安部良(戦略的イノベーション研究センター) ゲノム編集、死の調節 |
第15回 | <人類の未来> 担当:岡ノ谷一夫、安部良 多様な価値観と多様な幸福感を可能にする社会の設計 |