日本文学史研究Ⅱ
担当者川下 俊文
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングJPH-202

授業の概要(ねらい)

本授業では、明治初期における「書生」(=学生)の登場から、明治末期における大学生が直面した閉塞的な状況までを、文学作品の通読によって追体験する。後期では、明治後期の夏目漱石『三四郎』(1909)を中心に扱う。
明治初期、身分制社会の解体とともに「学問による立身出世」というスローガンが生み出され、若者の人生観を大きく規定するようになった。こうして成立した学歴社会は、今日に至るまで、多かれ少なかれ機能し続けている。本授業ではその原点に立ち返ることで、現代社会を生き抜くための新たな視野を獲得してほしい。

授業の到達目標

①学生は、明治文学に描かれた大学生の生活や思想にふれることを通じて、現代に生きる大学生としての自己を省み、社会への主体的な姿勢を培うことができる。
②学生は、明治後期の代表的な文学作品を読むことで、当時の日本社会が経験した劇的な変化(特に帝国主義・資本主義の発展)と、それによって生じるひずみを理解する。それによって、流動化する現代社会への考察を深めることができる。
③学生は、漢文学・英文学の素養に裏打ちされた夏目漱石作品を読むことで、日本語の豊かな教養を身につけることができる。

成績評価の方法および基準

各回の小テストおよび期末課題(到達目標①、②、③:必須) 100%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書三四郎夏目漱石岩波書店(岩波文庫)、1990年(¥500予定)
参考文献近代日本文学案内十川信介岩波書店(岩波文庫別冊)、2008年(¥760予定)
参考文献夏目漱石『三四郎』をどう読むか石原千秋他河出書房新社、2014年(¥1750予定)

準備学修の内容

・各回の授業で扱う範囲の本文を読み、内容を整理しておくこと。各回の授業は、すでに本文を読んできていることを前提として行う。

その他履修上の注意事項

文学作品そのものだけでなく, そこに描かれた文化的背景について興味を持つ学生を歓迎する。
私語・飲食・携帯電話の使用といった, 授業の妨げとなる行為は厳禁とする。
対面授業への出席が困難な学生のために、オンライン授業(LMSでの授業資料・授業音声公開)を併用するので、希望者は教員まで申し出ること。
毎週の小テストおよび期末課題を、LMSで出題する。これをもって成績評価を行うので、必ず毎週の締切までに回答すること。

授業内容

授業内容
第1回〈ガイダンス〉
本授業の進め方を説明し、高等教育機関の整備や資本主義社会の進展などによる、立身出世主義の変容について概説する。
第2回〈『三四郎』を読む1〉
夏目漱石『三四郎』一を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第3回〈『三四郎』を読む2〉
夏目漱石『三四郎』二を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第4回〈『三四郎』を読む3〉
夏目漱石『三四郎』三を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第5回〈『三四郎』を読む4〉
夏目漱石『三四郎』四を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第6回〈『三四郎』を読む5〉
夏目漱石『三四郎』五を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第7回〈『三四郎』を読む6〉
夏目漱石『三四郎』六を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第8回〈『三四郎』を読む7〉
夏目漱石『三四郎』七を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第9回〈『三四郎』を読む8〉
夏目漱石『三四郎』八を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第10回〈『三四郎』を読む9〉
夏目漱石『三四郎』九を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第11回〈『三四郎』を読む10〉
夏目漱石『三四郎』十を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第12回〈『三四郎』を読む11〉
夏目漱石『三四郎』十一を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第13回〈『三四郎』を読む12〉
夏目漱石『三四郎』十二を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第14回〈『三四郎』を読む13〉
夏目漱石『三四郎』十三を読み、明治末期における大学生の生活について学ぶ。
第15回〈授業のまとめ〉
これまでの授業内容を振り返り、夏目漱石がとらえた明治四十年代の青年像や文学観について理解する。