日本文学史研究Ⅰ
担当者川下 俊文
単位・開講先選択  2単位 [日本文化学科]
科目ナンバリングJPH-201

授業の概要(ねらい)

本授業では、明治初期における「書生」(=学生)の登場から、明治末期における大学生が直面した閉塞的な状況までを、文学作品の通読によって追体験する。前期では、明治前期の坪内逍遥『当世書生気質』(1885-86)および二葉亭四迷『浮雲』(1887-1889)を中心に扱う。
明治初期、身分制社会の解体とともに「学問による立身出世」というスローガンが生み出され、若者の人生観を大きく規定するようになった。こうして成立した学歴社会は、今日に至るまで、多かれ少なかれ機能し続けている。本授業ではその原点に立ち返ることで、現代社会を生き抜くための新たな視野を獲得してほしい。

授業の到達目標

①学生は、明治文学に描かれた大学生の生活や思想にふれることを通じて、現代に生きる大学生としての自己を省み、社会への主体的な姿勢を培うことができる。
②学生は、明治前期の代表的な文学作品を読むことで、当時の知識人階層に属する青年たちの生活や思想について知ることができる。それによって、流動化する現代社会への考察を深めることができる。
③学生は、文語体・口語体という、文体の大きく異なる小説を読み比べることで、日本語の豊かな教養を身につけることができる。

成績評価の方法および基準

課題レポート(到達目標①、②、③:必須) 90%
受講態度 10%

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書当世書生気質坪内逍遥岩波書店(岩波文庫)、2006年(¥700予定)
教科書浮雲二葉亭四迷岩波書店(岩波文庫)、2004年(¥600予定)
参考文献近代日本文学案内十川信介岩波書店(岩波文庫別冊)、2008年(¥760予定)

準備学修の内容

・各作品について、各回の授業で扱う範囲の本文を読み、内容を整理しておくこと。各回の授業は、すでに本文を読んできていることを前提として行う。

その他履修上の注意事項

文語文を毎週読むことになるので, 高校で習う程度の古文の知識をもっていることを前提とするが, もちろん熟達している必要はない。
文学作品そのものだけでなく, そこに描かれた文化的背景について興味を持つ学生を歓迎する。
第1回の授業内でガイダンスを行うので, 必ず出席したうえで履修登録をすること。
私語・飲食・携帯電話の使用といった, 授業の妨げとなる行為は厳禁とする。

授業内容

授業内容
第1回〈ガイダンス・前期の導入〉
本授業の進め方を説明し、明治時代における書生・学生の誕生について概説する。
第2回〈『当世書生気質』を読む1〉
坪内逍遥『当世書生気質』第一回・第二回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第3回〈『当世書生気質』を読む2〉
坪内逍遥『当世書生気質』第三回~第五回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第4回〈『当世書生気質』を読む3〉
坪内逍遥『当世書生気質』第六回~第八回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第5回〈『当世書生気質』を読む4〉
坪内逍遥『当世書生気質』第九回・第十回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第6回〈『当世書生気質』を読む5〉
坪内逍遥『当世書生気質』第十一回・第十二回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第7回〈『当世書生気質』を読む6〉
坪内逍遥『当世書生気質』第十三回・第十四回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第8回〈『当世書生気質』を読む7〉
坪内逍遥『当世書生気質』第十五回~第十七回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第9回〈『当世書生気質』を読む8〉
坪内逍遥『当世書生気質』第十八回~第二十回を読み、明治10年代の世相および書生の生活について学ぶ。
第10回〈『浮雲』を読む1〉
二葉亭四迷『浮雲』第一回~第三回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。
第11回〈『浮雲』を読む2〉
二葉亭四迷『浮雲』第四回~第六回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。
第12回〈『浮雲』を読む3〉
二葉亭四迷『浮雲』第七回~第九回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。
第13回〈『浮雲』を読む4〉
二葉亭四迷『浮雲』第十回~第十二回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。
第14回〈『浮雲』を読む5〉
二葉亭四迷『浮雲』第十三回~第十五回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。
第15回〈『浮雲』を読む6・前期のまとめ〉
二葉亭四迷『浮雲』第十六回~第十九回を読み、「学問による立身出世」に挫折する青年の苦悩について考察する。また、前期の授業内容を振り返り、書生の登場から明治前期までの展開について把握する。