人間学基礎セミナーⅡ
担当者冲永 隆子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングSEM-202

授業の概要(ねらい)

 人間学とは人間にかかわる学であり、「哲学、言語学、心理学、精神病理学、宗教学、芸術学、教育学、社会学、文化人類学、歴史学、人文地理学など、様々な分野にわたっている」(「序―人間学への案内」作田啓一ほか編『人間学命題集』新曜社、1988)。
 この授業では、担当者冲永隆子の専門領域である、いのちをめぐる倫理学(生命・医療倫理・バイオエシックス)の視座から、視聴覚教材(主にNHK番組)を使って、人間にかかわる様々な倫理的、社会的問題について共に考えていく。「生命倫理」領域の講義テーマは以下のとおり。
◎ コロナ時代の生命倫理1 :1. 限られた人工呼吸器を高齢者から若者に譲る医療資源配分「トリアージ」問題(NHKスペシャル)、新型コロナワクチン接種の優先順位…といった「公衆衛生の倫理」2. COVID-19末期患者を診続けた医師たちー「死」をどう考える(BBCニュース)、厚生労働省の「人生会議」(ACP)ーコロナを境に従来から積み残されてきたエンドオブライフケアの倫理的課題はどう変化していくか、といった死生学や臨床倫理学をテーマに扱う。
◎コロナ時代の生命倫理2 :1 .緊急事態下の「限られた医療資源の配分」、「高度集中医療を若者に譲る意志カード」、コロナ前からのテーマ「脳死・臓器提供意思表示カード」
2.「高齢者は早めの"人生会議”を」コロナ禍で日本老年医学会がまとめた、新型コロナウイルス感染症流行期にACP実施を進める提言。「命の選別しないで、コロナで「仕方ない」を恐れる障害者」…の報道。コロナ禍で苦悩する不妊治療の現状ー「不要不急」「延期」問題について。
 この授業では、基盤教育としてのリベラルアーツ教育の実践をめざす。そのために、様々な専門分野の外部講師を招聘して教室内での対話を行い、その場のリアルな意見交換やその後の課題レポートを通して、互いにフィードバックすることを特徴とする。「『学校で学んだことを全て忘れた後に残るものが教育である』(アインシュタイン)。まさに教養教育がそれですね。…」(「対談:大学の教養教育を考える【PartⅡ】森本あんり/杉万俊夫」、「特集:大学と教養」『人環フォーラム』第33号、京都大学大学院人間・環境学研究科、2013年12月、12頁)
具体的には、①参加者の希望テーマに沿った発表演習や「哲学対話」、②様々な専門領域の外部講師による講義を数回、例えば、メディアの立場からは、濱田哲郎(NHK専門委員、元NHK社会部記者)講師によるメディア論(以下、シラバス参照)。精神科医の三脇康生(仁愛大学)、メンタルヘルスからは渡邊洋次郎(リカバリケアハウスいちご)、患者当事者の視点からは入澤仁美(順天堂大学)、その他、何人かのスペシャリストを招聘予定。③レポート・感想文・卒業論文の作成、発表(プレゼンテーション)実践に対する基本的な指導も併せて行う。以下、授業の概要。参考までに2020年度および2021年度春期の授業収録動画YouTubeのURL。視聴するにはカーソルをURLにもっていき右クリックで「コピー」下あたりの「https…移動」で画面に飛びます。そのほか、Google検索エンジンで、「冲永隆子YouTube」とすると、これまでの授業動画が色々出てきます。https://youtu.be/Yg1D73gSQcc(*NHK濱田:学術会議問題) https://youtu.be/Y7JGdKCI8Fc(冲永:パパ活) https://youtu.be/zC0qROgtznY(*渡邊:薬物・アルコール依存症リカバリー支援) https://youtu.be/uHDxrtynBGU(冲永:上野千鶴子「東大入学式祝辞 女性差別問題」) https://youtu.be/wzVkrLQRV1w(*NHK濱田:知る権利 表現の自由)「レポートの書き方」https://youtu.be/mXzEYj9w-0I(冲永)https://youtu.be/hFP8l55r7EA(*NHK濱田:緩和ケア病棟の実際)https://youtu.be/vfKuBNnmeJQ(*NHK濱田:災害とどう向き合うか)https://youtu.be/XI2O6crACNg(*順天堂入澤:当事者のACP)

<濱田哲郎(NHK専門委員)2021年後期シラバス>
テーマ:「メディアは果たして斜陽産業か?」 10月11日に実施予定。
内 容:国民のネットを見る時間がテレビを見る時間を上回った、という調査結果が発表された。もはやテレビは終わったコンテンツ、メディアは斜陽産業、と主張する人たちも少なくない。しかし、果たしてそうだろうか。国民が知りたい、知らなければならない情報をSNSは提供してくれるだろうか。否、だと考える。 しかし、だからと言ってメディア産業がこの先も安泰かというとそうではない。 日本テレビのアイヌ民族差別問題など、業界の劣化も叫ばれている。今のままではメディア業界が「淘汰」の時代を迎えることはそう遠いことではないだろう。 玉石混交、様々な情報が溢れる時代を迎えて、情報をどう受け取り、発信していくのか、具体的事例を通して考えるともに、メディア業界を目指す学生諸君に就活の ポイントを伝える。





授業の到達目標

 ①受講者は、人間学や生命倫理学に関連するキーワード(KW)について正しく説明することができること。
 ②グループ討論や発表演習によって、他人の意見と比較し、自分の見解を他に示すことが可能になること。大学卒業後、様々な社会で活躍する皆に役立つための思考訓練の場としての活用が可能になること。

成績評価の方法および基準

 授業内の積極的発言状況やプレゼンテーション(発表)と数行のVTR感想文・課題提出(提出はすべてLMSコンテンツ「課題」やGoogleフォームの「アンケート」)を40%、最終授業終了後にLMSコンテンツ「課題」に提出してもらうレポートを60%。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書 なし
参考文献『いまを生きるための倫理学』 盛永・松島・小出編丸善
参考文献『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』梶谷真司幻冬舎
参考文献冲永隆子「学生と共に考える『コロナ時代の生命倫理』—リベラルアーツ教育に向けた実践報告」『帝京大学共通教育センター論集』2021年Vol.12、53-75頁(*教室内で配布します)
冲永隆子『終末期の意思決定ーコロナ禍の人生会議に向けて』晃洋書房、2021年冬出版予定(*LMSコンテンツに配布)
参考文献*教室で参考文献リストを配布します(上記参考文献を含め、こちらでコピー配布しますので、購入の必要はありません)

準備学修の内容

 ①配布資料コピーの次回授業部分を事前に読んでおくこと。LMSの「連絡事項」指示に従うこと。
 ②対面授業の参加者とリモートでの参加者全員は、ほぼ毎回の授業の感想あるいはコメント数行の簡単な文をLMSの「課題」ツールに送ること。

その他履修上の注意事項

 この授業は、春期(人間学基礎セミナーⅠ)・秋期(人間学基礎セミナーⅡ)の半期のみの受講でも対応できるように考慮しています。「ライフサイエンスⅠ・Ⅱ」とも関連しています。
幅広い生命倫理の問題、生と死(障害者殺傷事件、安楽死、出生前診断…)、セクシュアリティ(女性差別「ジェンダー論」、セクシャルマイノリティLGBT、生殖医療…)等のテーマについて、ジャーナリスト、医師、哲学・倫理学分野の研究者等、各方面の専門家を交えたZoomでの対談式講義を数回行います。オンデマンド授業で繰り返し、基礎知識を得たり、Zoomでのリアルな双方向授業でその都度わからないことを確認したりするメリットがあります。試行錯誤して行う関係で、予定が変更するかもしれませんが、原則、毎回の授業を対面授業の予定日程で行い(Zoomを立ち上げます)、参加できない人向けにZoomでのレコーディング収録アーカイブを準備します。Zoomのレコーディング収録mp4ファイルをYouTubeにアップしますので、参加できなかった人はオンデマンドYouTube動画を観てください。対面に参加できなかった(できない)人は、Zoomでのリアル参加、YouTubeでのオンデマンド参加いずれかで出席となります。加えて一回ごとの課題提出で参加とします。

授業内容

授業内容
第1回 はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。人間学・生命倫理学、「哲学対話」等についての序論。
 *予定するテーマ及びVTR内容や順番は、初回~3回授業の参加者全員で決める。3回目以降のテーマ、視聴覚教材の順序変更あり。
第2回 前回のテーマで対話。「哲学対話」とは何か。
第3回 濱田哲郎(NHK専門委員、元NHK社会部記者)
 テーマ:「メディアは果たして斜陽産業か?」上記シラバス
第4回 「哲学対話」について『考えるとはどういうことか』で解説。選んだテーマで対話。
第5回 『考えるとはどういうことか』で解説。選んだテーマで対話。
第6回 渡邊洋次郎(メンタルヘルス リカバリケアハウスいちご)
 テーマ:アルコール・薬物依存症からの回復支援
第7回 「依存症」について対話。
第8回 TBS「ゆがんだ正義 相模原殺傷事件」 (2018) 対話
 KW:障がい者、優生思想
第9回 前回のつづきTBS「ゆがんだ正義 相模原殺傷事件」 (2018) 対話
第10回 NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」 宮下洋一『安楽死を遂げた日本人』 (小学館2019) 対話
第11回 前回のつづきNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」 対話
第12回 蒔田栄(メンタルヘルスサロン 自殺予防プロジェクト 大曲聖書バプテスト教会牧師)
 テーマ:聖書の世界観からみるいのちの尊さ、重さ
第13回 「自殺」「医師による幇助自殺」「安楽死」どこがどう違うのか?徹底討論。LMSコンテンツに提出した「課題」を元に討論・発表
第14回 河合香織『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋2018) 対話。LMSコンテンツに提出した「課題」を元に討論・発表
第15回 前回のつづき 総まとめ