人間学基礎セミナーⅠ
担当者冲永 隆子教員紹介
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングSEM-201

授業の概要(ねらい)

 人間学とは人間にかかわる学であり、「哲学、言語学、心理学、精神病理学、宗教学、芸術学、教育学、社会学、文化人類学、歴史学、人文地理学など、様々な分野にわたっている」(「序―人間学への案内」作田啓一ほか編『人間学命題集』新曜社、1988)。
 この授業では、いのちをめぐる倫理学(生命倫理・バイオエシックス)の視座から、視聴覚教材(主にNHK番組)を使って、人間にかかわる様々な倫理的、社会的問題について共に考えていく。基盤教育としてのリベラルアーツ教育の実践をめざす。具体的には、①生命倫理・医療報道を題材にした発表演習や「哲学対話」、②外部講師(ジャーナリストNHK専門委員)によるメディアリテラシー(番組の読み解き)の講義、ノンフィクション作家による講演(日程は未定)③レポート・感想文・卒業論文の作成、発表(プレゼンテーション)実践に対する基本的な指導も併せて行う。
 以下の幅広い生命倫理の問題・テーマを扱う。生と死(自然災害、障害者殺傷事件、安楽死、出生前診断…)、セクシュアリティ(女性差別「ジェンダー論」、コロナ禍の貧困女性、パパ活問題、セクシャルマイノリティLGBT、生殖医療…)等。参考までに昨年の授業YouTubeのURLを示す。カーソルをURLにもっていき右クリックで「コピー」下あたりの「https…移動」で画面に飛びます。https://youtu.be/Yg1D73gSQcc(学術会議問題) https://youtu.be/Y7JGdKCI8Fc(パパ活) https://youtu.be/zC0qROgtznY(薬物・アルコール依存症リカバリー支援) https://youtu.be/uHDxrtynBGU(上野千鶴子「東大入学式祝辞 女性差別問題」) https://youtu.be/wzVkrLQRV1w(知る権利 表現の自由)
 本講義では、各回にわたって理論の教授項目と共に、最近の医療や災害報道に関する倫理学を学ぶ。例えば2019年の公立福生病院の透析中止、厚生労働省「人生会議」ポスター撤収問題、2020年のALS難病患者京都嘱託殺人事件、感染症時代の現在直面している以下の「コロナ時代の生命倫理」の課題を中心に扱う。1. 限られた人工呼吸器を高齢者から若者に譲る「トリアージ」問題(NHKスペシャル)、緊急事態下の「限られた医療資源の配分」、「高度集中医療を若者に譲る意志カード」といった「公衆衛生の倫理」 2. COVID-19末期患者を診続けた医師たちー「死」をどう考える(BBCニュース)、厚労省や日本老年医学会が勧める「人生会議」(ACP)-「高齢者は早めの人生会議を」コロナを境に従来から積み残されてきたエンドオブライフケアの倫理的課題、死生学や臨床倫理学をテーマに扱う。さらに、各方面の専門家を交えたZoom立ち上げ対面講義を数回行いYouTube動画を配信する。例えばNHK専門委員、元NHK社会部記者の外部講師による「メディア・リテラシー(情報の読み解き)〜災害から身を守るために〜」と「コロナ弱者を考える-「貧困女性」」講義を予定(日程は未定)。受講者は教室でのリアルな対面授業で哲学対話や臨床倫理アプローチを活用しつつバイオエシックス的思考を涵養するのと同時に、自宅でのZoom収録オンデマンド動画で繰り返し基礎知識を得ることができる。
 このセミナーでは参加者全員の討論が中心になってくる。意欲ある皆さんの受講を期待している。*予定するテーマ及びビデオ内容は授業の進捗状況により変更する。

授業の到達目標

 ①受講者は、人間学や生命倫理学に関連するキーワード(KW)について正しく説明することができること。
 ②グループ討論や発表演習によって、他人の意見と比較し、自分の見解を他に示すことが可能になること。大学卒業後、様々な社会で活躍する皆に役立つための思考訓練の場としての活用が可能になること。

成績評価の方法および基準

 授業内のプレゼンテーション(発表)やVTR感想文を含む2-3行程度の簡単なコメント(最終授業までにLMS「課題」に提出)40%、最終授業時に提出してもらうレポート60%。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献『いまを生きるための倫理学』 盛永・松島・小出編丸善
参考文献『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』梶谷真司幻冬舎(新書)
参考文献*教室で参考文献リストを配布します(上記参考文献を含め、こちらでコピー配布しますので、購入の必要はありません)

準備学修の内容

①指定した教科書および配布資料コピーの次回授業部分を事前に読んでおくこと。
②授業ごとにLMSでの課題(例えば、授業内での発言を簡単にまとめる、Googleアンケート、1-2行の簡単なコメント等)を提出。課題1-14提出の締切は授業最終回から10日前後。

その他履修上の注意事項

①私語や食事(飲水は可)、授業に関係のない行為、周囲への迷惑行為は厳禁。
②試験や課題レポート等に対し、対面講義やZoom動画の中で解説等のフィードバックを行う。LMSの「連絡事項」に留意すること。
③この授業ではセミナー形式に基づく、発表演習の場であり、それに向けて、数回、視聴覚教材を用いてグループ発表・討論を行うため、極力欠席・遅刻は控えること。
④この授業は、春期(人間学基礎セミナーⅠ)・秋期(人間学基礎セミナーⅡ)の半期のみの受講に対応できるように考慮している。「ライフサイエンスⅠ・Ⅱ」とも関連している。

授業内容

授業内容
第1回はじめに―授業の進め方や評価方法などの説明。人間学・生命倫理学、「哲学対話」等についての序論。
自己紹介、前年度の授業内容…
第2回「生命倫理」概論『いまを生きるための倫理学』生命操作・医療のテーマ2
最近の医療報道「公立福生病院の透析中止問題に対する冲永のコメント(毎日新聞)」
対話・討論
第3回「生命倫理」概論『いまを生きるための倫理学』生命操作・医療のテーマ1
最近の医療報道「5つ子妊娠・減胎手術後流産訴訟に対する冲永のコメント(共同通信)」
対話・討論
第4回「生命倫理」概論『いまを生きるための倫理学』生命操作・医療のテーマ3
最近の医療報道「厚労省の「人生会議」ポスター炎上問題に対する冲永のコメント(週刊金曜日)」
IAHR「Taboo of contemplating dying: Difficulties in introducing Advance Care Planning to Japan 」
対話・討論 
第5回NHK外部講師による「コロナ弱者を考える」 コロナウイルスの感染拡大によって多くの人が職や家族を失っている。そうした実態はメディア等で取り上げられているが、最も困窮しているのにも関わらず、ほとんど知られていない「貧困女性」と言われる人たち。なぜ「貧困」となったのか、ならざるを得なかったのか。ジェンダー問題の背景を説明できる。KW: 貧困、DV、風俗産業、売春、法律、社会保障【課題5】    
第6回NHK「ETV特集~それはホロコーストのリハーサルだった~障害者虐殺70年目の真実」(2015) 
対話・討論
第7回こころの健康相談室メンタルヘルス指導員・外部講師による「自殺対策プロジェクト アーロン・アントノフスキーのストレス対処力・生きる底力SOC、ヴィクトール・フランクルの人生の意味論、三つの価値」人はなぜ生きるのか
第8回NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」、宮下洋一『安楽死を遂げた日本人』(小学館2019)対話・討論 
第9回リカバリー回復支援者メンタルヘルス指導員・外部講師による「コロナ禍のメンタルヘルス」KW:若年層、女性の自殺率増加、生きにくさを覚える「社会的弱者」いのちの価値についてディスカッションできる。リカバリー回復支援、自殺予防対策の外部講師による授業 【課題9】コロナ禍であぶり出されたテーマ
第10回ジェンダー教育『いまを生きるための倫理学』(156頁)セクハラ、女性差別問題
(上野千鶴子の東大学部入学式祝辞…)対話・討論
第11回性と結婚『いまを生きるための倫理学』(300頁)キリスト教的家庭観は生命倫理の性の倫理に適用可能か?(LGBTの息子の代理出産を引き受ける母…)対話・討論
第12回坂詰真吾『「身体を売る彼女たち」の事情―自立と依存の性風俗』(ちくま新書2018)対話
第13回河合香織『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』(文藝春秋2018)対話 
第14回「メディア・リテラシー(情報の読み解き)〜災害から身を守るために〜」: 今冬の大雪、夏に続く豪雨災害、そして10年前の東日本大震災。 こうした災害から自分や家族の生命を守るためにテレビやラジオ、ネット等の情報をどう活用すれば良いのか。気象災害と地球温暖化の関わり、地震と津波のメカニズム、災害時に陥りやすい人間の心理などを理解し、自らの災害の備えを構築することができる。 KW: 地球温暖化、自然災害、災害心理(平常心のバイアス)、災害情報 【課題14】
第15回生・性・死のダイアローグ 外部講師(未定)との全体討論