契約法Ⅰ(総論)
担当者内田  暁教員紹介
単位・開講先選択必修  2単位 [法律学科 2018年度以降]
科目ナンバリングCIL-203

授業の概要(ねらい)

 普段はあまり意識しないかもしれませんが、我々の日常生活は、実に様々な「契約」に取り囲まれています。コンビニでジュースやおにぎりを買うのは「売買契約」、実家から離れて一人暮らしをするためにマンションの一室を借りるのは「賃貸借契約」。銀行にお金を預けるのは「消費寄託契約」ですし、逆にお金を借りたら「金銭消費貸借契約」を締結したことになります。アルバイトをしようと思ったら「雇用契約」を結びます。将来的にマイホームを持つ際には、工務店や大工さんと「請負契約」を締結するかもしれません。このように、我々の生活は「契約」なしには成立しえないといっても過言ではありません。
 本講義では、このように我々の日常生活に密接に関わる「契約」というもの一般について学びます。「契約」はどのようにして締結するのでしょうか。「契約」の内容はどのようにして定まるのでしょうか。成立した「契約」には、どのような効力があるのでしょうか。相手方が「契約」を守ってくれない場合には、どのような救済手段を講じることができるのでしょうか。本講義では、これらのテーマを検討すること通じて、「契約」というものについての知識を修得することを目指します。
 なお、形式的な意味での「契約総論」だけの知識では、「契約」をめぐる問題には対処しきれません。例えば、未成年者が契約を締結した場合には、行為能力の制限を理由とした取消しが問題となりえますが、これは「民法総則」の問題です。また、契約の相手方が契約違反をしたために損害を被った場合には、損害賠償を求めることになりますが、これは「債権総則」の問題です。このように、「契約」をめぐる問題を考えるにあたっては、形式的な意味での「契約総論」だけの知識では必ずしも十分ではないのです。そこで本講義では、必要に応じて「民法総則」や「債権総則」上の問題についても触れることにします。

授業の到達目標

①契約総論についての基本的な知識を修得する。
②契約法の学習を通じて、「民法総則」や「債権総則」、「契約各論」に関する基礎的な知識をも修得する。
③修得した知識を用いて、実際に生起する法的問題を分析・説明できるようになる。

成績評価の方法および基準

・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(70~100%)
・小課題を課した場合、その内容による評価(0~30%)

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『契約法』(2018年)松井和彦・岡本裕樹・都築満雄日本評論社
参考文献『リーガルベイシス民法入門』(第3版、2019年)道垣内弘人日本経済新聞出版社
参考文献『契約法』(2017年)中田裕康有斐閣
参考文献『民法判例百選Ⅱ 債権』(第8版、2018年)窪田充見・森田宏樹有斐閣

準備学修の内容

【予復習について】
 各回の授業時に、次回の授業で取り上げる内容に関する予習課題を提示します。各回の授業は、事前に提示した予習課題を確認することから始めますので、受講者は、指定テキストや参考文献を手掛かりにして、課題に取り組んできてください。また、各回の授業時に、その回で学習した内容を確認するための復習課題を提示します。
【学習の進め方】
 学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。また、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

その他履修上の注意事項

・受講時には六法を必ず持参してください(『ポケット六法』や『デイリー六法』等の小型の六法で十分です)。
・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
・本科目を受講する前に、あるいは本科目と並行して民法概論や民法総論、物権法や債権総則といった科目を受講していることが望ましいでしょう。
・「契約法Ⅰ(総論)」では、「契約」というもの一般について取り扱います。これに対して、民法典ではいかなる類型の「契約」が想定されているのか、それぞれどのような性質があり、特殊性があるのかとった問題について取り扱うのが「契約各論」という分野です。これら二つの科目は密接な関わりを持ちますので、受講生は、本科目の後に「契約法Ⅱ(各論)」の講義も受講することが望ましいでしょう。

授業内容

授業内容
第1回 イントロダクション:契約法入門
第2回 契約自由の原則とその修正について
第3回 定型約款について
第4回 契約の成立について(契約はどのようにして締結するのか)
第5回 契約の効力1:契約成立前の状況と契約の効力について
第6回 契約の効力2:同時履行の抗弁権について
第7回 契約の効力3:危険負担制度について
第8回 契約の効力4:事情変更の法理について
第9回 契約の効力5:第三者のためにする契約について
第10回 契約違反と救済1:契約違反(債務不履行)の種類について
第11回 契約違反と救済2:契約違反(債務不履行)に対する救済の種類や方法について
第12回 契約違反と救済3:損害賠償の範囲等について
第13回 契約違反と救済4:契約の解除1:解除制度の意義と要件について
第14回 契約違反と救済5:契約の解除2:解除制度の効果について
第15回 契約法Ⅰ(総論)の総まとめと授業内試験