担当者 | 中谷 直司教員紹介 | |
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単位・開講先 | 選択 2単位 [総合基礎科目] | |
科目ナンバリング | POL-102 |
【障碍などで配慮が必要な場合は、LMS上に記載するメールアドレスに連絡を下さい(大学からの連絡は履修が最終確定して以降になるため】
大きくいって3つのことを学びます。
1つ目は現代(近代)における「民主政治とは何か」です。もちろん教科書的な説明によれば、民主政(デモクラシー)とは主権者である国民が、多くの場合は議会選挙への平等な参加を通じて、国家の意思決定を行う政治制度です。しかし憲法にこのように書き込んだからといって、民主政が実現するとは限りません(人民主権や民主主義を憲法や国名に掲げながら、民主政が実現していない国家は多数あります)。またイギリスのように、国民というよりは「議会のおける国王(女王)」に主権があるとされながら、かなり早くから現代(近代)民主政を実現している国もあります。では、ある国の政治体制が確かに民主政であると言えるためには、どのような条件が必要なのでしょうか(なお、民主的な憲法は民主政の定着にとって大きな助けになりますが、つきつめていえば、必定要件でも十分条件でもありません)。またこれほど民主政の理念が世界全体で支持されながら(だから多くの国が自国は民主政国家であると自任・自称しています)、実際には民主政国家とはいえない国が多数の残っているのはなぜでしょうか。その理由を探ります。
2つ目は民主政の「質」をあげるための課題についてです。「質」をもう少し厳密に表現すれば、民主政の「応答性」ということになるでしょう。たとえ日本のような十分な民主政国家の有権者だとしても、政治に不満を覚えることは少なくないでしょう。投票権があるのに、どの政党や候補者に入れても結果は変わらないと考える、あるいは自分の一票が政治家や官僚に作用して、国家の行く末を変えていくという実感を持てない人が多くいるはずです。こういう不満は、あなたの投票行動(要望)に対して、政治の「応答性」(反応)が低いとあなたが感じている証拠です。こうした不満は、大規模な人口を前提にした間接民主政である以上、仕方ない面もあるのですが、それでも民主政の「応答性」をあげていくためには、どのような工夫が可能なのでしょうか。選挙制度、イデオロギーと党派性、議会および執政(行政)制度、選挙外の政治活動を主な軸として考察します。
3つ目は、現実の政治制度のなかで、以上の民主主義の応答性を確保するためにどのような工夫がなされ、あるいは足りない部分を克服するために、歴史的にどのような改革がなされてきたかです。同時に、制度的工夫には「トレードオフ」(あるメリットが別のデメリットの原因となる)がどうしてもつきまといます。こうした政治制度上のトレードオフには、どのようなものがあるのでしょうか。そうした中かで、どうしたトレードオフには目をつむり(あるいはいくつかあるトレードオフのなかから、どのような組み合わせを選び)、現在の政治制度は成り立っているのでしょうか。かつ、トレードオフをめぐるこうした選択には見直す余地はないのでしょうか。アメリカの特に大統領制と日本の議院内閣制を事例に考察します。
授業を聞いていくと、「政治学者」になるわけでもないのに、なんでこんな迂遠な話を、とあるいは思うかもしれません(残念ながら、この授業を聞いただけでは、政治学者にはなれませんが)。でも我慢強くお付き合いいただければ、この授業が半ばまで進む頃には、みなさんの現実の政治に対する見方が点から線に、そして立体的なものへと大きく変わることをお約束します。ただし、家族や友達と政治に関する話しが合わなくなる副作用が出ると思われます。
難易度の低いものから順に:
(1)民主政はなぜ困難なのか、同時になぜ可能なのかを、政治学の知見を踏まえて、自ら考察し、説明出来るようになる。
(2)民主政の「応答性」とは何か、それはどのような制度によって実現されているのか、それでも残る問題は何かを、政治学の知見を踏まえて、自ら考察し、説明できるようになる。
(3)民主政を維持し、その応答性を高めるために現代民主政がどのような制度的な工夫を行っているのか、それでも残る課題は何か、どのような改善策が考えられるかを、政治学の知見を踏まえて、アメリカの大統領制と日本の議院内閣制を事例として自ら考察し、説明できるようになる。
・授業内課題(コメントペーパーの提出、小テストの解答、授業態度):60%
*単なる出席は加点対象としない。
・期末試験:40%
・ブックレポート(提出任意、加点のみ、内容に応じて最大で20%)
種別 | 書名 | 著者・編者 | 発行所 |
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教科書 | 『政治行動論』 | 飯田健、松林哲也、大村華子 | 有斐閣 |
参考文献 | 『日本政治の第一歩』 | 上神貴佳、 三浦まり 編 | 有斐閣 |
参考文献 | 『政治学 [補訂版]』 | 久米郁男 ほか | 有斐閣 |
参考文献 | 『デモクラシーとは何か』 | ロバート・A・ダール(中村孝文訳) | 岩波書店 |
参考文献 | 『アメリカ大統領制の現在』 | 待鳥聡史 | NHKブックス |
参考文献 | 『アメリカの政党政治──建国から250年の軌跡』 | 岡山裕 | 中公新書 |
参考文献 | 『政治改革再考──変貌を遂げた国家の軌跡』 | 待鳥聡史 | 新潮選書 |
参考文献 | 『日本の国会──審議する立法府へ』 | 大山礼子 | 岩波新書 |
・授業内容を踏まえて、次回授業で答えもらいたい質問をコメントペーパーに書く。
・授業内容、配付資料、小テストの内容を踏まえて、期末試験の準備をする。
・授業内容を踏まえて、ブックレポートの作成を進める(任意;新書中心の課題文献リストを配付する)。
・教科書は、授業中に読み上げたり、逐一参照の指示をしたりはしない。授業は基本的に担当者が配付するレジュメやスライド資料を用いて行うが,授業内容についての十分な理解を求めるのであれば、教科書を是非手に入れて,参照してもらいたい。
・毎回の講義では、授業に対する感想・質問をLMSでリアクションペーパーとして提出してもらいます。質問については、3~4をピックアップし、次回の授業冒頭で回答します。
・「政治」とは何か、「政治学」とは何かについての原理的な説明は、同じ担当者による政治学入門Iを履修のこと。
・前期の政治学入門Iを履修していなくても、理解に大きな問題はない。ただしIIの方が難易度はやや上がりますので、通して受けた方が、政治理解はより進むと思う(順番は問わないのでぜひ!)
回 | 授業内容 |
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第1回 | オリエンテーション─授業の進め方と狙いの説明 |
第2回 | 民主政1──民主政とは何か:二つの条件 |
第3回 | 民主政2──民主政はなぜ困難なのか |
第4回 | アメリカの大統領制1──「大衆」を信用しない設計思想 |
第5回 | アメリカの大統領制2──現代大統領制の登場とその背景 |
第6回 | アメリカの大統領制3──人びとはどのように投票先を決めるか |
第7回 | アメリカの大統領制4──選挙をみるポイント |
第8回 | 民主政における応答性1──応答性の概念と有権者の役割 |
第9回 | 民主政における応答性2──有権者のディレンマ:限られた資源と情報をどう活かすか |
第10回 | 民主政における応答性3──選挙の役割と選挙制度によるトレードオフ |
第11回 | 現代日本の政治・行政改革1──歴史的背景と目的 |
第12回 | 現代日本の政治・行政改革2──冷戦後の内閣機能の強化、選挙制度改革、行政制度改革 |
第13回 | 現代日本の政治・行政改革3──その成果と意図せざる副作用? |
第14回 | 現代日本の政治・行政改革4──何を変えるべきか、何を維持すべきか+有権者に出来ること |
第15回 | (オンライン)授業の総括 |