比較考古学研究
担当者
単位・開講先選択  4単位 [文学研究科 日本史・文化財学専攻]
科目ナンバリング

授業の概要(ねらい)

 文化や歴史の本質を理解するためには、深く詳しく掘り下げることが当然の方向性であるが、別の文化と比較してみることも有効である。遠く離れた地域に類似の文化や社会がある場合、その類似性を生み出したのはどのような背景なのか、時間的地域的に近いところに大きく異なる文化がある場合、その相違の背景にあるのは何なのか。そのような追求が文化や歴史の本質の理解に役立つ。本講義ではこの方法によって考古学で扱う文化の本質を理解することを試みる。比較は、日本の中での比較、日本と西洋、西洋と東洋の比較にとどまらず、時代を超えた社会の比較などめまぐるしく広がる。受講する学生は、講義の細部にこだわらず、比較という視点でものごとの本質を理解する方法を学びとってほしい。

授業の到達目標

 さまざまな題材を取り扱うが、それらを記憶してもらうことが目的ではなく、比較によって歴史と文化の本質を理解する方法を身につけるのが目的である。

成績評価の方法および基準

 自ら何らかの比較によって文化の本質に迫る試みをしてもらい、口頭発表とレポートの作成をする。ただし履修者の数によっては他の形態の試験を行う可能性もある。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書
参考文献春:この授業に関するまとまった本はないが、授業に合わせ、授業時間中に指摘する。
宮本常一『イザベラ・バードの旅』(講談社学術文庫2226)には多くの比較の視点が含まれ、この授業にとって有益である。
参考文献秋:この授業に関するまとまった本はないが、授業に合わせ、授業時間中に指摘する。藤本強『ごはんとパンの考古学』同成社市民の考古学1、藤本強『都市と都城』同成社市民の考古学2は平易に書かれた比較考古学の実践である
藤本強 『ごはんとパンの考古学』同成社市民の考古学1
藤本強 『都市と都城』同成社市民の考古学2

準備学修の内容

 その回の授業で何と何を比較し、本質的にどのようなことがらを明らかにしようとしたのか、復習しながら考えること。

その他履修上の注意事項

 研究発表は比較の観点があれば、比較材料は考古学に限らない。普段から比較の視点でものごとをとらえる習慣を獲得してほしい。

授業内容

授業内容
第1回 何を比較するか、どう比較するか、何のために比較するか。
第2回 日本の常識は世界の常識ではない。「世界4大文明」とは?!
第3回 日本における文明の成立について考える。
第4回 文明と都市
第5回 日本の歴史的食料と西洋の歴史的食料
第6回 食物が生み出す社会の違い、思想の違い
第7回 稲作の多様性(1)
第8回 稲作の多様性(2)
第9回 文明を生み出した食料資源と生み出さなかった食料資源、ニューギニアクック湿地を例に
第10回 日本列島の中央(ヤマト)と北(蝦夷地)と南(琉球)(1)
第11回 日本列島の中央(ヤマト)と北(蝦夷地)と南(琉球)(2)
第12回 日本列島の中央(ヤマト)と北(蝦夷地)と南(琉球)(3)
第13回 文化圏とは何か、民族とは何か
第14回 学生の研究発表と討論
第15回 学生の研究発表と討論
第16回 比較考古学概説
第17回 日本と東南アジア(1) 日本と東南アジアの狩猟採集文化
第18回 東南アジアの農耕の始まり
第19回 日本と東南アジア(2) 東南アジアの銅鼓と日本の銅鐸
第20回 日本と東南アジア(3) 青銅器の比較
第21回 日本と東南アジア(4) 国家形成過程の比較
第22回 金印の比較研究
第23回 雲南の古代社会と邪馬台国の比較
第24回 西洋の貨幣と東洋の貨幣(1) その本質的な違い
第25回 西洋の貨幣と東洋の貨幣(2) 世界の貨幣の統合過程
第26回 西洋の貨幣と東洋の貨幣(3) 日本の貨幣の特性
第27回 ヨーロッパの都市とアジアの都城
第28回 西洋の社会と東洋の社会:都市、流通、権力構造の比較
第29回 学生の研究発表と討論
第30回 学生の研究発表と討論