出版文化論Ⅰ
担当者横手 拓治
単位・開講先選択  2単位 [社会学科]
科目ナンバリングSOC-229

授業の概要(ねらい)

 ベストセラー。元来「最もよく売れた商品」の意であるこの言葉は、とりわけ本に対してよくいわれます。本講義は戦後の70年以上の時代のなかで登場したベストセラー書を採りあげ、著者や作品内容、出版側の戦略などを紹介しながら、「なぜ売れたのか」について講じていきます。テーマ、タイトル、著者の魅力、時代との関連、そしてプロモーションの様相などを多面的に考察しつつ、大衆文化の一側面としてベストセラーの意味を捉えるよう導いていきます。
 本講義はまた、直近に至るまで21世紀の事情を多めに扱うようにしました。小説からノンフィクション、実用書など、登場する作品については、目にしたこと、読んだことのある本が数多く見つかると思います。それらの対象作が売れていった背景を把握することは、「現代」を知るための一つの有効な方法です。テレビや映画などメディアミックスの効果、流通や宣伝の問題、インターネットの影響など、現在の私たちの日常生活とも関連性が深い事項についてもさまざまに指摘し、内実の考察をおこなっていきます。
 なおテキスト『ベストセラー全史 現代篇』は講師の単著(筆名・澤村修治)で、本講は著者自らが内容を講じていくものです。
 講師は37年にわたり出版社で編集者・編集長として活動をしてきました。雑誌11年および書籍26年、創刊事業は5回、編集長は3回です。その間に年間ベストセラーにランクインする本も世に送っています。現在でも大学教員を勤めるほか、思想誌の編集委員長を務め編集者としても現役です。それらをふまえ、実務を重ねてきたうえで得た知見も併せてお伝えしていきたいと考えます。
「売れる」という現象について中身を把握し知識を深めることは、現代社会において、今後どのような分野で考え、行動するさいにも役に立つはずです。本講はその点もふまえて講義を進めていきたいと思います。

授業の到達目標

 戦後の日本現代史・同時代史に登場したベストセラー書籍を分析していくことで、出版物の時代からの影響、時代への影響を捉え、出版文化のありようを理解する。
 「売れるもの」はどうやって生み出されるのか、さまざまな例を知ることで、多くの人の関心を呼ぶ方法について知識を修得する。
 2021年までのベストセラーを横断的に知ることで、日本における大衆文化の歩みを捉える。

成績評価の方法および基準

 出席率(50%)、筆記試験(30%)、受講態度(20%)を総合して行う。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書ベストセラー全史〔現代篇〕澤村修治(講師の筆名)筑摩書房(筑摩選書)
参考文献

準備学修の内容

 対象となる時代について年表などをもとに知識を得ておくこと。
 授業を理解するために必要なレジュメを、事前にLMSにて示すので、読んでおくこと。

その他履修上の注意事項

 特になし。
 要点をまとめた授業用データを、パワーポイントで講師が毎回示す。

授業内容

授業内容
第1回 ガイダンス(LMSによるオンデマンド形式)
第2回 第1章 スクラップ・ラッシュから「新体制」へ ~戦後・20世紀①
第3回 第2章 ブックス本の隆盛 ~戦後・20世紀②
第4回 第3章 大競争の時代 ~戦後・20世紀③
第5回 第4章 テレセラーの確立 ~戦後・20世紀④
第6回 第5章 多点数化時代のベストセラー  ~戦後・20世紀⑤
第7回 第6章 新書ブーム:前半 ~21世紀①
第8回 第6章 新書ブーム:後半 ~21世紀②
第9回 第7章 ネット社会のなかのベストセラー:前半 ~21世紀③
第10回 第7章 ネット社会のなかのベストセラー:後半 ~21世紀④
第11回 第8章 二極化の広がり:前半 ~21世紀⑤
第12回 第8章 二極化の広がり:後半 ~21世紀⑥
第13回 第9章 出版の変容とベストセラー:前半 ~21世紀⑦
第14回 第9章 出版の変容とベストセラー:後半 ~21世紀⑧
第15回 第2回~第14回の対面授業とは別のオンライン授業/課題レポート(LMSより出題し、投稿先もLMS)