授業の概要（ねらい）

　修士2年次必修のこの授業では，各院生が実習を行っている心理臨床センター及び学外実習施設について，その体験を全員でディスカッションしながら深め，グループワークやペアワークを通じて体験的に相互に学びあう。そのことによって，実際に臨床心理士及び公認心理師にとって必要な知識・技能の基礎的な理解を深め，（１）コミュニケーション，（２）心理検査，（３）心理面接，（４）地域支援 等の支援を安定して行うことにつなげていく。
　また，心理に関する支援を要する者等の理解とニーズの把握及び支援計画の作成，心理に関する支援を要する者へのチームアプローチ，多職種連携及び地域連携，公認心理師としての職業倫理及び法的義務，リスク管理への理解も重視する。特に，心理職がどのように他職種と連携し，クライエントをアセスメントし，心理職としての役割を担っているのかについて，充分に討論したい。その中で実習の体験を深め，学生自身がプレゼンテーションして学生同士で共有しあうことを重視する。なお，大学院修了後の心理臨床家としてのキャリア形成の在り方について討議する場も設ける。
　なおこの科目は，臨床心理士養成における必修科目であると同時に，公認心理師養成に関する必修科目として位置づけられる。

授業の到達目標

　この授業を経て，実際に臨床現場で働くことが可能なレベルを目指し，次の目標を達成する。
　１）心理臨床センターでクライエントを担当することによって，心理面接，グループ支援及びマネジメントの実際を理解し，さまざまなクライエントのアセスメントまた支援方法について体得する。
　２）心理臨床センターでの運営実習を通じて，相談機関の運営方法や受付などのマネジメント業務，他のスタッフとのチーム構築（コミュニケーション含む）など，実際に働く上において最低限必要なことを身に付ける。
　３）心理臨床センター及び学外機関の実習における体験も含め，各種臨床場面における支援のあり方の全体像を把握するとともに，心理職の役割やチーム連携の在り方について理解する。また，その内容を適切に表現できる。また臨床心理学的に考察できる。
　４）他の院生が発表するケースや実践事例について，十分に傾聴し，その内容を共感的に理解するとともに，自らの心に中に生じたことを表現し，建設的な意見を出して参加できる。そして院生チームとして，相互に連携し，お互いに啓発し合い，よい臨床家としての成長の歩みを実感できる。

成績評価の方法および基準

　授業の到達目標に照らし合わせて，事例の発表方法や討議への参加などを総合的に評価する。到達目標については，各項目に関して多軸評価表を作成し，自己評価も行えるようにする。自己評価を含めたフィードバック面接及びディスカッション30％，センタースタッフによる評価30％，プレゼンテーション20％，レポート課題20％ の割合で全体を評価する。

教科書・参考文献

準備学修の内容

　心理臨床センターでの運営及びクライエントとの関わりについては，スーパービジョンやケースカンファレンスを通して理解を深めておくとともに，学んだことのポイントを本授業の中で語れるようにしておく。学外施設での実習で学んだ内容を，自分が将来どのように発展させていくかについて学び，その内容をいつでも本授業の中で語り話しあえるようにしておくこと。自らのさまざまな支援上の体験を総合的に考察し深める作業が重要である。発表日にプレゼンテーション資料を作成し，当日配布すること。

その他履修上の注意事項

　修士1年次の「臨床心理基礎実習」の単位を修得したものが履修できる。
　自分のクライエントとの関わり，また，実習施設での体験を発表するために準備をするところから，まず，クライエントや施設の機能や役割に対する理解がより深まるであろう。また，他の学生が実施している実習から，さまざまな心理臨床の在り方を学び，各施設の特徴を理解する。クライエントとの関わりや実習体験を発表することは，グループに対して自分を一部，さらけ出す必要も生じる場合があり，痛みを伴うこともあるかもしれないが，良き臨床家となるためには必要なプロセスである。この授業に参加するものは，発表者が発表を行ったことで，臨床家として育っていくエネルギーがわくような体験となるよう，よきファシリテーターとしての在り方も考えた意見を深めてほしい。

　この科目は、公認心理師試験受験資格を得るために必要な科目である。
　この科目は、臨床心理学専攻に特化した科目である。

授業内容