ライフサイエンスⅠ
担当者安部  良
単位・開講先選択  2単位 [総合基礎科目]
科目ナンバリングSCE-103

授業の概要(ねらい)

 21世紀は生命科学(ライフサイエンス)の世紀と言われている。近年、ヒトを含めた生物の持つ遺伝情報やゲノムの解読が進むにつれ、我々の健康や病気を取り扱う生命科学は単に生物学や医学の世界を超えて、地球環境や、政治、経済、文化を含むヒトの活動のあらゆる分野に影響を与えている。今や、生命現象の理解や、組み換えDNA技術に代表されるバイオテクノロジーは、理系、文系を問わず必ず学ぶべき学問領域である。なぜなら、我々は地球という惑星に生きる多様性に満ちた生命体の一つの生物種であるとともに、地球上のすべての生命体の運命を握る唯一の生物種であるからある。また、我々人類は、生命誕生以来38億年にわたって営まれてきた生存と繁殖の追求というルールの下で、選択と淘汰により形作られてきたという点では他の生物と変わりはないが、巨大化した脳により作り出される宇宙的広がりをもつ内的世界を有するという点では、唯一無比の存在でもある。従って、一回しかない人生を充実し、幸福に満ちたものにしていくためには、人間とは何か、人間が作る世界とはどのようなものかを学び、それをベースに、今、我々の周りで何が起こっているのか、これから何が起こるのかを関心を寄せ、それにふさわしい行動をとっていくことが、充実した、幸福な人生を送っていくために誰しも必要なことと思われる。
 本講義は内科医であり、また免疫学者として生命科学の最先端の研究を長年続けてきた研究者が講師として担当する。
 人類はどのようにして生まれ、どのように地球上に世界を作ってきたのか。我々は、現在、どのような社会に住み、そこでは何が起ころうといているのか。授業では、これらの問題について私なりの視点から話を進めていこうと考えている。私のバックグランドである生物学、医学からのアプローチとなるが、対象はヒトの活動なので、経済や、政治、法律、心理学や宗教、文化など、皆さんの専門領域に踏み入ることになる。すでに授業で関連領域の専門教育を受けている受講者は取り上げた事柄について違った見方があると思われる。それらについて授業中やレポートを通じてディスカッションすることで互いの視野を広げる事にもなる。また、新入生にとっては、今後、それぞれの専門領域を学ぶ際、視点を変えた見方として役立つと思われる。
 前期(ライフサイエンスI)では、まず、現在、我々の健康や社会生活に大きな脅威となっている新型コロナウイルス感染症について、数回にわたり専門的な視点も含め、わかりやすく解説する。その後、本題に入り、生命の誕生から、生物の進化を概説し、前期の主題である、人類の誕生、進化、言語の発生を通じて意識や知性を生み出した認知革命、文明社会の形成を通じて繁栄への道を踏み出すきっかけとなった農業革命について、生物学、遺伝学、医学的な視点を交えて学んでいく。そして人類の繁栄の陰で次々と失われていく地球生物の多様性や環境破壊などの事実を見据えながら、今後とるべき課題解決を模索する。

授業の到達目標

 新型コロナウイルス感染症についての科学的事実の基づいた正しい知識を身に着け、それに基づき、感染拡大を防ぎ、健康や社会を守る行動を実践する。また、生命の誕生から、人類の繁栄の歴史を生命科学の視点から学習し理解する。さらに、現在人類が直面している課題の解決法について自分なりの見解を表現できる。
 本講義では知識の習得とともに、グループワークなどを通してコニュニケーション力の向上も目指す。また、課題に対する回答やレポート作成を通じて、論理的な思考と、自分の考えを相手に正確に伝える力を身に付ける。

成績評価の方法および基準

 授業中に行われる質疑応答やグループワークへの参加(15%)と各授業ごとに出される課題に対する回答・レポートの評価(85%)により成績を決定する。
課題は、授業時間内に担当教員より示され、回答・リポートはLMSを通じて1週間以内に提出する。受講者からの回答を基に授業内でのディスカッションを行う場合には、その準備のために、授業実施日の3日前を締め切りとするケースもある。
 レポートについては、授業で取り上げたテーマや考察した内容が論理的、かつ的確に表現されているかどうかで評価する。

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書購入テキストなし
参考文献

準備学修の内容

 授業を実りあるものにするためには、受講者が授業のテーマについて一定の理解をしておくことが必要で、そのための準備が求められる。受講者は各回の授業内容について「生物」の教科書、科学雑誌、新聞、インターネットなどの関連事項に目を通しておく。

その他履修上の注意事項

 この授業は、知識の習得を目標にしたものではなく、授業内で取り上げられた内容を理解し、考察することを通じて受講者がそれぞれの人生に役立てることを目標にしている。従って授業に集中することを特に求める。
 また、私が課題を出す目的は、講義で話したこと、他の講義などで学んだこと、書籍やネットを通じて集めた様々な情報を基に、自分で考え、それを相手にわかってもらえるように表現するという機会を提供することである。それを念頭に作成し、提出する前に、十分に読み返して、論理に矛盾がないか、自分の考えが伝わるように書かれているかを確認すること。

授業内容

授業内容
第1回オリエンテーション、授業の狙い
 生命科学とは何か
第2回特別企画 新型コロナウイルス感染症(1)
 新型コロナウイルスとはそもそも何者か?どのようにして病気を起こすのか?何が恐ろしいのか?
第3回特別企画 新型コロナウイルス感染症(2)
 どんな症状を示すのか?重症化とは?どのように治療されているのか?後遺症は?どのように防ぐのか?(防げるのか?)、ワクチン?
第4回本論 宇宙の始まり、地球誕生、そして生命の出現
 138億年前の大爆発、「ビッグバン」により生まれた広大な宇宙、そして「生命」という不思議を生んだストーリー
第5回生命の誕生と進化
 38億年前に起こったとされる生命誕生から、地球環境の変化に伴って起こった生物の多様な進化
第6回「世界の始まり」へのカウントダウン
 6550万年ほど前に起こった巨大隕石衝突による1億8000万年以上続いた恐竜時代の突然の終焉と哺乳類の台頭
第7回人類史(1)ヒトの誕生:我々はどこから来たのか 
 600万年前に大型捕食者におびえひっそりと生きる弱小哺乳類として現れた人類が地球の征服者に駆け上った奇跡の幕開け
第8回人類史(2)ヒト族の進化
 直立歩行と火の使用により生まれた始まった脳の巨大化:その時何が起こったか?
第9回人類史(3)文化―遺伝子共進化、
 生物から、超生物への道、累進的文化進化:文化がヒトを進化させた
第10回人類史(4)言語の発生から、認知革命
 5~10万年前の言葉の出現により、「意識」という内的世界が生まれ、「知性」「感情・感性」、「創造性」に彩られた世界」が生まれた。
第11回人類史(5)狩猟採集から農耕牧畜へのパラダイムシフト
 品種改良:自然の利用から、自然(生命・生物)の支配へ
第12回人類史(6)農業革命は文明への道を開く
 人類史から世界史へ
第13回人間とは何か
 総合討論のテーマ選び、担当割り当て
第14回オンライン授業 意見の共有と考察 
第15回総括
 人間とは何か