物権法
担当者内田  暁教員紹介
単位・開講先必修  2単位 [法律学科 2017年度以前]
科目ナンバリングCIL-201

授業の概要(ねらい)

 本講義では、民法典第二編第一章から第六章の内容について学びます。
 我が国の民法典は、私人の財産関係を大きく2つの観点から区別し、整理しています。すなわち、私人の物に対する関係と、私人の私人に対する関係です。一般に、前者を規律する法分野を物権法、後者を規律する法分野を債権法といいます。本講義は、この物権法について学ぶことになります。
 我々の日常生活は、様々な「物」に取り囲まれています。試しに皆さんの身の周りにあるであろう「物」を挙げれば、例えばスマホやパソコン、教科書やノート、ペンなど(「動産」といいます)があるでしょう。また、皆さんは家に住んで日常生活を営んでいるでしょうが、これも「物」です。さらに言えば、その家も空中に浮かんでいるわけではなく、ちゃんと土地の上に立っています。この土地もまた「物」です(「不動産」といいます)。このように、我々の日常生活は「物」とともにあり、「物」のない生活など考えられないのです。
 しかし、そうであるにもかかわらず、我々とこれらの「物」との間にいかなる法的関係があるのかという点については、我々は普段あまり意識しません。例えば皆さんも、「これは自分の物だ」という表現をよく使うことでしょう。しかし、そのことが法的にいかなる意味を持っているのかについては、自覚したことがないかもしれません。そこで本講義では、我々と「物」との間の関係(物権関係)について学んでゆきます。具体的には、そもそも物権とはどのような権利なのか、我々はどのようにして物権を取得するのか、どのようにすれば取得した物権を他人にも主張してゆけるのか、といった問題について学んでゆきます。

授業の到達目標

①物権の意義や性質、その変動や第三者への対抗といった物権法の基本的な知識を習得する。
②習得した知識を活かして、具体的な問題を分析できるようにする。

成績評価の方法および基準

・15回目の授業内で実施する試験の点数による評価(70~100%)
・小レポートを実施した場合には、それによる評価(0~30%)
・出席点は、原則として考慮しません

教科書・参考文献

種別書名著者・編者発行所
教科書『物権法』(第2版、2019年) 秋山靖浩・伊藤栄寿・大場浩之 日本評論社
参考文献『リーガルベイシス民法入門』(第3版、2019年)道垣内弘人 日本経済新聞社
参考文献『民法Ⅱ』(第4版補訂、2019年) 淡路剛久・鎌田薫・原田純孝・生熊長幸有斐閣
参考文献『民法判例百選Ⅰ総則・物権』(第8版、2018年)潮見佳男・道垣内弘人有斐閣

準備学修の内容

【予習課題について】
 各回の授業時に、次回の授業で取り上げる内容に関する予習課題を提示します。各回の授業は、事前に提示した予習課題を確認することから始めますので、受講者は、指定テキストや参考文献を手掛かりにして、課題に取り組んできてください。

【復習課題について】
 各回の授業時に、その回で学習した内容を確認するための復習課題を提示します。

【学習の進め方】
 学習に際しては、条文や学説、判例を暗記しようとするのではなく、「なぜこのようなルールがあるのか」「なぜこのような学説があるのか」などといった点を意識して、「理解」しようと努めるとよいでしょう。細かな学説や判例は数多くありますが、それらは樹に喩えれば枝葉のようなものです(これらの学説や判例が大事でないという意味では決してありません)。樹の枝葉は、幹から生えているのであって、それだけで宙に浮いているものではありません。法律学の修得にとっては、枝葉に集中するのではなく、まずはそれらの枝葉が生えている幹をしっかりと把握することが肝要です。本講義でも、幹を把握することを第一の目標としてゆきますが、受講者が自習する際にも、幹を意識して学習するとよいでしょう。また、分からない個所をそのままにしておくのではなく、積極的に教員に質問するなどの姿勢も大事です。質問は随時受け付けますので、お気軽にお尋ねください。

その他履修上の注意事項

・受講時には六法(『ポケット六法』や『デイリー六法』などの小型のもので結構です)を必ず持参してください。六法の引き方に慣れることも、法学部での学習の大事なポイントです。
・授業中の私語など、他の受講生の迷惑になるような行為は厳禁です。
・冒頭に書いたように、日本の民法典は、「物権」と「債権」とを峻別して体系を作っています。したがって、「債権」と対比しつつ「物権」を学習することによって、より理解が進みます。そこで、本講義の受講者は、本講義と並行して「債権総則」の講義も履修することが望ましいです(必須ではありません)。

授業内容

授業内容
第1回イントロダクション:物権法入門
第2回物権の効力:物権的請求権等について
第3回物権変動総論1:物権変動の基礎理論、とくに物権変動の公示について
第4回物権変動総論2:意思表示による物権変動について
第5回不動産物権変動1:不動産物権変動の基礎理論と登記制度について
第6回不動産物権変動2:民法177条における物権変動の範囲について
第7回不動産物権変動3:民法177条における第三者の範囲および無権限取引からの第三者保護について
第8回動産物権変動1:動産物権変動の基礎理論、とくに対抗要件制度について
第9回動産物権変動2:即時取得制度について
第10回占有権1:占有権とは何か?占有の訴えについて
第11回占有権2:果実収取権や本権にかかわる効力について
第12回所有権1:所有権の基礎理論、土地所有権の内容と制限について
第13回所有権2:共有関係や建物区分所有権について
第14回用益物権の概要について
第15回物権法の総まとめと授業内試験